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第二十一話「船上会議」

「お待たせしました」


振り返ると2人組の浮浪者がいた。

え??

2人は大きな袋を抱えてる。

顔は汚れまくってて不潔な感じだ。

ゴミ集めしてる人かな?

俺は白い商人の格好をしていて

港で徐庶先生を待っていた。

銀ネェと紹先がすかさず

俺の前に出た。

「何者だ。

名乗らずに

それ以上近づくならば

容赦はせぬぞ」

銀ネェはやる気満々だ。


「関小娘、2日ぶりですね」

「ええええ?先生…なの?」


銀ネェが口を空いたままだ。

俺も慌てて前に出る。


「信玄か!?

待っていたぞ!

どうぞどうぞ」


信玄と名乗った徐庶は

浮浪者に変装して現われた。

大きな袋を紹先に渡して

運び人の1人は街に戻っていった。

浮浪者の格好した信玄1人と

大きな2つの荷物だけが舟に乗った。


暫く経ってから

船室に皆を集めた。

俺、銀ネェ、紹先

簡雍のおっちゃん、

そして信玄だ。

船室には全員で5名。

信玄は先程とはうって変わって

綺麗な身なりに変えていた。

昨日まで着てた服ともまた違う。

どちらかと言えば

孔明の羽織ってるものに近い。

見るからに軍師って格好だ。

その変貌ぶりに俺たちは

完全に飲まれていた。

これも信玄の策なのか!?


「ヒャッヒャッヒャッ

見違えたぜ徐庶〜」

「簡雍、

暫くは私の事を信玄と呼んでください。

私の出奔は隠しておいた方が

有利に運ぶ」

「あいよー。

相変わらず

色々企んでやがんな〜。

歓迎するぜ」


ガッチリ握手している。

良かった!


「謙信殿

一つお願いがあります」

「何でも言ってくれ」

「船をここから

南東の港街に寄ってください。

私の家族を合流させたい。

2日前に港街に向かわせておきました」

「わかった!すぐに向かおう」

「ヒャッヒャッヒャッ

信玄。

2日前からもう

降る気満々だったのかよぉ〜?」


おっちゃんはニヤニヤしながら

信玄を小突く。

本当に馴れ馴れしいけど

その距離感が今は助かる。


「そうではない。

引き抜きに応じる場合を想定して

安全のために家族を

先に移動させておいたのだ。

引き抜きに応じない場合も

いくつかの対策していた。

私は家族が大切だし、

臆病者なだけです」


さすが徐庶だ。いや信玄だ。

目前の対策案

戦術的思考はズヴァ抜けている。


引き抜きに応じない場合って何だ?

想像すると寒気がするが………。

もしかしたら、

今回の人材登用は

結構危ない橋を渡ってたのかもしれない。

危ねぇ。

正直に話しておいて良かったぁ。


「あの浮浪者みたいな変装も

対策の一つだっていうの?」


銀ネェが聞いた。


「そうです。

私の職場には

魏王のお見舞いに

長安へ向かった事になってます。

家族と共に。

しかし十日後に山賊に襲われて

死ぬことを手配してきました」

「え?死んじゃうの??」


銀ネェが驚いて聞く。


「私が仕事で来ていた服や

魏王に面会するときの服などを

一式馬車に乗せて今朝

西へ出発しました。

途中で買収しておいた山賊役の者と

衣服を交換して馬車をおりました。

彼らは十日後に山道で

顔が無い死体に私の服を着せるだけの

簡単な仕事を依頼しました」


「なんでそんな面倒なことを?」


銀ネェがすかさず聞く。


「私が劉備軍に寝返ったとがバレてしまっては

徐州の人員や軍備が警戒され、

配置転換になるでしょう。

そうではなく、

魏王へのお見舞いの道中で

山賊に襲われて不運にも死んだ事にします。

事故死ならば今の徐州太守と

私の彭城相の副官だった者の性格からして

3ヶ月は現状維持が保たれます。

今は荊州争乱の対応で

魏国も色々と大変ですからね。

私は事故死にしておけば

徐州、豫州攻めが有利に働きます」


「すごい!そんなことまで…」


紹先も驚いている。


「まぁ、私の死んだふりは

半年くらい誤魔化せれば充分です。

その頃にはもう

戦況がだいぶ変わってるはずです」


信玄は袋の中から地図を出す。

三国が見渡せる地図だ。


「私の持ってる情報を最大限に活かす為です。

謙信殿。

前もって確認したい事があります」


「何だ?」


「荊州の関羽殿を救いたい。

それが第一目標で構いませんね?」


「うむ。それが一番だ」


「ええ?? 

父上が危ないの??」


銀ネェが動揺する。

ヤヴァイ

なんて言おう?

すると信玄が助け舟を出してくれた。


「謙信殿は天啓を得られて

少し先の未来の夢を見ました」


「そうなの?謙信」


「嗚呼」


「孫呉が裏切り、

関羽殿の背後から挟み撃ちにあう未来です」


「そんな……。父上が……」


「大丈夫だ銀ネェ。

絶対にそんな事はさせネェ。

その為に荊州にきた。

徐州で信玄を仲間にした。

そしてこれから建業へ行く」


「謙信……」


銀ネェは泣きそうな顔して

小さく呟いた。


「生意気なんだから……」


徐庶は地図を指差しながら続けた。


「孫呉に対しては

関羽殿を裏切って荊州を得る利点

よりも大きな利益をもたらす

必要があります」


「俺もそう思ってる」


「徐州と豫州は

本当に、

孫呉が手に入れても

宜しいですのかな?」


念を押してくる。


「嗚呼、関羽が救えるなら全く問題ない。

それに距離的に

孫呉が涼州を奪えないように

蜀漢から徐州は遠すぎる」


「具体的には

合肥、下邳、小沛。あるいは汝南までが

孫権の支配地域になります」


「それでいい。

関羽が最優先だ。

その為に知恵を貸してくれ

信玄」


「お任せください」


信玄は嬉しそうに

胸の前で手を合わせて頭を下げた。


「紹先!

諜報部隊を半分に分けて

信玄の配下とする。

特に魏と呉方面につけた人員は

信玄の元につけてくれ」


「わかった!」


紹先が気持ち良い返事を返す。


「有り難い。さすが謙信殿。

情報の重大さを熟知されている」


「信玄、

諜報部隊を好きに使ってくれ。

絶対に関羽を挟み撃ちにさせたくない」


「若君

まずは3つの策があります」


「聞かせてくれ!信玄」


「まず1つ目

これから始まる樊城の戦いに関して

城を落とすのは簡単です」


「「「ええええ!!」」」



第二十二話「一の策」つづく


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