第ニ話「おっちゃん」
「坊ちゃん、大丈夫かよ。」
ポンポンと肩を叩かれる。
「漢中王即位の大舞台で、
身体を張った笑いを取るなんて、やるじゃねぇか。
親父さんよりも目立ってたぜ。
ヒャッヒャッヒャッ♪」
誰だこのおっさん。
「式が長くて退屈だったから、
アッシは爆笑もんだったぜぇ」
やたらと馴れ馴れしいな。
劉禅の知り合いか?
他の人は劉禅様と呼ぶのに、
この人だけ違う呼び方をしている。
記憶喪失のフリしてやりすごしてみよう。
よくわからないのでなるべく丁寧な口調にする。
「えっと、失礼ですがどなた様でしょうか?
頭が痛くて、なんだか思い出せなくて、、、」
「アイヤーッ。
しこたま頭ぶつけたなこりゃ。
アッシの事まで忘れちまったかい?
簡雍のおっちゃんだよ。
なんだその 『でしてー』ってよぉ。
どの辺ぶつけたんだ、ちょい見せてみ、、、?」
カンヨウ? 簡雍? この馴れ馴れしい感じの人が簡雍。
たしか劉備関羽張飛三兄弟が旗揚げした頃からいた仲間。
ず〜っと一緒だったが、あんまり目立たなくて全然強くない。
知力も80無いから軍師にも任命できず内政要員だったような。
怪しい関西弁もどきの中年オヤジ。
だが、しかしだ。
これはちょうど良いかもしれない。うむ。
劉備に近い存在なら話が早い。
劉禅なんて元々、阿呆の子なんだ。
このおっちゃんならば俺が何聞いても笑い飛ばしてくれそうだ。
「こりゃでけえタンコブできとるわぁ。
いッたそ~だなこりゃ。
ま、唾つけときゃ治んべ」
「簡雍さん、あの、」
「ありゃま。こりゃホンマにあきまへんわ。
カンヨーサンなんてお前から呼ばれ日にゃーサブイボ立ってまうわ。
痒い痒い。いつも通り おっちゃん でええねん。」
「じゃ おっちゃん、 お父さんと話したいんだけど、どうしたらいい?」
おっちゃん呼びすると、ついついタメ口になってしまう。
今までもそんな関係性だったのかな。
めっちゃ話しやすいおっちゃんや。
俺までナゼか怪しい関西弁になっとるがな。
「そうやなぁ、式典に宴に
色々とあいつも偉くなっちまって忙しいからなぁ。
ん〜。まぁ、なんとかなんべ。
アッシが後で迎えに行ってやっから、部屋で休んでな。
でっけぇタンコブ頭冷やしてもろて、屁こいて寝ぇや。」
ポンポンと肩を叩くとおっちゃんは笑いながら幕僚の中に戻っていった。
あの人に任せておけば、本当になんとかなりそうな気がしてきた。
面白いおっちゃんだ。
俺は言われた通りに部屋へ戻り、
劉備と会う時のために色々と頭の中で整理してみた。
いつの間にか屁して寝てしまった。
次回 第三話 水稚魚の交わり つづく
三国志人物紹介②
簡雍カンヨウ 字は憲和ケンカ
54歳 幽州涿郡出身 生年没年不詳
劉備の幕僚。同郷の劉備とは旧知の仲。
演義では、劉備と呂布が徐州を巡って争った時、糜竺と共に徐州に残る。徐州が曹操に落とされると、劉備と共に袁紹を頼り、劉備が袁紹の下を脱する時は策を巡らせた。その後も転戦する劉備に従軍。劉備が劉璋に降伏を勧告する際の使者となる。わざと傲慢な態度を取って秦宓に一喝され、笑って無礼をわびると、秦宓と共に劉璋を説いた。降伏を決めた劉璋を車に乗せ、劉備に面会させた。
正史によると劉備が禁酒令を出した時、酒造の道具を持つだけで罰するという行き過ぎを、冗談めかしていさめた。
統率22.武力33.知力70.政治71.魅力74
一人称はアッシ。笑い方はヒャッヒャッヒャッヒャッ
あちこちの方言で適当に話す。口癖は、なんとかなんべ。




