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第十三話「牢」

小さな二人部屋。

俺は姿勢を正して気持ちを入れ替えた。

まっすぐ相手の目を見た。

「関羽殿」

「うむ。聞こう劉禅殿。」

関羽も俺の様子を感じ取り、

真っ直ぐに目を合わせてくる。


「出陣はいつですか?」

「3日後だ。」

「樊城の戦いは、

官渡、赤壁、定軍山よりも大事な戦。

天下分け目の戦いになるでしょう。」

「うむ」

「私は何度も同じ悪夢を見るのです。

孫呉が裏切り背後を突いてくる夢です。」

「阿蒙か、敵ではない。」

「呂蒙だけではありません。

危険なのは陸遜です。」

「陸遜?知らぬな。」

「呂蒙の後任になる男です。

陸遜の才は呂蒙より上です。

その知謀、孔明に匹敵する。

わざと油断させて、

隙をうかがってる猛獣は陸遜です。」

「ふむ。」

「決して侮ってはなりません。

危険人物です。

これが父の言葉です。

『呂蒙、陸遜を侮るな』

直接、雲長に伝えろと言われました。」


ここは方便。嘘八百だ。

劉備はこんな事、言ってない。

この頃の陸遜はまだ無名。

関羽を破り荊州を奪って名を上げたはず。

たぶん関羽が生き残りさえすれば、

後でどうとでもなる。

嘘も方便も許してくれるはずだ。

孫呉への警戒心を高めて欲しい。

「兄者のカンか。」

「そのようです。

孫呉は狡猾です。

魏に寄ったり蜀によったり。

合肥攻めかと見せかけて

荊州を攻めてきます。」

「大義の無い獣め。」

「同盟を組みながらも、

隙あらば噛みつく野獣。

何卒ご注意下さい。」

「ふむ」

「関羽殿は万夫不当。

これから敵をたくさん倒しますよね。

敵将を捕まえた時には

斬首しないで頂きたい。」

「何故だ。」

「蜀漢が人材不足だからです。

黄忠、魏延を昇格させたのもそうです。」

「うむ」

「たとえ、降伏を受け入れぬ場合でも、牢につないでください。

すぐに処刑しないでいただきたい。

私にも説得する時間をください。』

「誰を望んでおる?」

「張遼、龐徳、于禁、徐晃、曹仁、みんな欲しいです。」

「ハッハッハッ。

ソイツらが降るものか!

潔く斬首を望むぞ武人ならば。」

「たしかにそうでしょう。

一筋縄にはいきません。

でも、半年後に曹操も亡くなります。

その時にまた

今のように私が説得します。」

「ほう。」

「勝敗は兵家の常。

関羽殿も万が一捕まった場合は

必ず降って下さい。

絶対に助け出します。」

「我は負けぬ。」

「父は何度も負けました。

でも生き延びてくれました。

何度降伏しても、

必ず生きて

私を生んでくれました。」

「嗚呼。兄者は死なない。」

「義兄弟は1人でも欠けたら、

3人死んだも同義です。

どんな事があろうとも、

関羽殿に生きていて欲しいのです。

父と張飛を殺さないでください。」

「我が負ける前提か。」

「敵将においても同義です。

名将に死んで欲しくないのです。」

「逃げるやもしれん。」

「それでも構いません。

生きてさえいれば、

千里を越えて再会もできます。」

曹操の元から千里越えた関羽のように

「生意気言うではないか。」

「敵味方問いません。

名将こそが国の宝です。」


「宝………

ふっふっふっふっふっ。」

関羽の鼻息が凄いことになった。

髭をなぞっている。

笑っているのかこれは?

「ハーーッハッハッハッハッハッハッハッ」


「簡謙信。」

「はい!」

「この関雲長

降伏を拒否した敗残将も

牢に入れると誓おう。」

「ありがとうございます!」

「人材収集は曹操のようだ」

「奸雄になんて遠く及びませぬ。

私は暗君にしかなれません。

凡愚なのでみんなに助けて欲しいのです。」

「ふむ!

謙信義侠の心をもって

用才高祖劉邦の資質あり」

関羽はニヤッと頭を撫でてくれた。


「謙信、安心しなぁ

降伏は大将の十八番だぜぃ!」

おっちゃんと紹先が入ってきた。

「聞いてやがったな」

「降伏すれば、みな幸福ってか!

ヒャッヒャッヒャッヒャッ。」

駄洒落で誤魔化しやがった。

「おっちゃん達にはまだまだ働いてもらうからな!

洛陽と幽州取るまで。」

「えええええ!!

幽州って坊ちゃん!

ロウ、、

楼桑村まで連れ回す気かぁ!?

大将みてぇに人遣いが荒ぇや」

「桃園の誓いの場所ですね。

私も見てみたいです。」

紹先が盃を配りながら声を弾ませる。

「益徳んちの裏庭かぁ??

狭い場所だぜ。

とっくに無くなってんだろ。」

「益徳の母君も健在だろうか。」

「あの怖い母ちゃんか!

ありゃ死なねぇな。生きてんだろ。」

「ハッハッハッハッ懐かしいな」

「楼桑村に着く頃にゃアッシらとっくに黄忠やんけ」

「ワーハッハッハッハッ!!」

関羽は一段と豪快に笑った。


関羽は酒瓶を持って

「こんなに愉快な夜は

久方ぶりだ。

謙信。

その謙虚さ、

その夢、

気に入ったぞ!

娘をやる。

嫁にしろ」

「えええ!結婚〜!?

け、結婚なんて

ぼ、僕にはまだ早いです。

髭も伸びてないのに」

「ハッハッハッ!!」

ドンドンと肩を叩かれる。

おっちゃんも悪ノリしながら酒を注ぐ。

「こいつはめでてぇ!

益徳も娘をくっつけたがってたぜ

子供をたくさん産むのが

太子の仕事でっせ坊ちゃん」

ええええ〜。


「謙信。

曹操と孫権にあって

兄者に無いモノがわかるか?」

「え?曹操と孫権は共通してるのに?

最初からの身分でしょうか?」

「近い。紹先はどうだ?」

関羽は紹先にも聞いた。

「近い親族でしょうか?」

「その通りだ。

だからこそ我ら義兄弟がいた。

劉姓は世に多いが、

兄者の直接的な親族は母上だけだった。

本来旗揚げの際には

当主の元に

親族が集まり支えるのが常道。

曹操ならば親族の夏侯惇、淵

曹仁、洪、真、休など多数いる。

孫家は、父、兄、弟、妹

その他に親戚も多い」

「言われてみたら、

曹〜とか孫〜って多いですね。」

「劉表殿や劉璋殿の縁者は多い。」

「たしかに。」

「劉封殿のような義によって、

親子となる場合もある。

国家となれば尚更。

多数の血縁者が必要だ。

兄者は沢山子供を作らねばならぬ。

そしてそれは

謙信にも当てはまる。」

「なるほど」

「国を大きくするためにも、

一門衆は必要となる。

漢中王とは、そういう段階なのだ。」

たしかに。

信長の野望でもそうだ。

大名にはだいたい一門衆がいる。

強い親族がいた大名が強い。

北条、真田三代、島津兄弟、豊臣兄弟

「父には親族以上に、

力強い義兄弟がいたんですね。」

「ふん。とにかくたくさん子供を作れ。女は嫁に。男は武人に。嫁は多いに越した事はない。曹操より作れ。」

お!太子はハーレムOKなんだ。

それはそれで楽しみである。

「わかりました。まずはおじ様のような立派な髭が生え揃ったらお願いします。」

「我が3番目の娘をやろう!」

「お、お友達から、お願いします。」

こう言うのが精一杯だった。

「ワーッハッハハッハッハッ」


関羽は杯をかかげた。

「関雲長

ここに誓おう。

春までに新野を奪還し

兄者、益徳と3人

再び、

桃園の誓いをかかげようぞ」


「「「「カンパーイ」」」」



その後も深夜まで飲み会は続いた。


第十四話 呉の使者  つづく。

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