16_【第十六話】迎撃? それはよくないな!!
*バルバラム市庁舎・謁見の間
「ふん? ネムレムの書簡だと? この私と、あの女の関係を知っているのかな? 水の第二分隊長、トーフォルト君? ははははは!!」
まったく! この!! 国内でも指折りの、ノーブルオブノーブルスとの呼び名高きこの男!! 凄まじく邪悪な空気を優雅に纏っているではないか!!
バルバラム市長、光魔導師団第一分隊長である、リーン=フォニア侯爵。迸る知性、すさまじく砥がれた魔力圧。瀟洒な身の所作。ただものでないことは一目でわかる。
「さて、そうだな。シェル、戻っているか? シェル=シェルハよ!!」
ん? リーン候は手を打って。何者かを呼び出したが……。
出てきたのは、ほんの十六歳ほどの。綺麗な金髪のおかっぱ頭の少年。魔導防御術のかかったマジックパーカーに、ブルーのジーンズパンツ。それに洒落たサンダルをはいた軽装の者だった。
「シェルよ、こちらは水魔導師団第二分隊長のトーフォルト=ククルカン男爵だ。お見知りおきを願っておいたほうがいいぞ」
リーンはそんなことを言って。少年の背を叩いた。すると、その少年は私の前に進み出てくるのだった。
「トーフォルトさま、よろしく。僕はシェルといって、リーン様の下で情報官を務めさせていただいているものです。父はトートと言って、リーン様の配下の上位の者で。膨大な魔力圧を誇りますが、僕には残念ながら、その魔力は遺伝いたしませんでした。母が水の眷属で、光と水の混血として。僕が産まれてしまったせいなんです」
「……混血の辛さ、それは音に聞くが。あまり落胆するな、少年」
「ご心配なく。トーフォルトさま。僕の価値は、リーン様がいることで証明されています。こんな至らない僕を、リーン様は使える可愛い奴と言ってくださいます。僕はそれだけで……。満たされるのです」
……危険な香りを感じる。この少年は、完全にリーン候に依存をしているようにしか見えないからな……。しかし、この手の事をこんな子供直言しても詮無きことだ。
「リーン候。バルバラム市内での対象の元水魔導師団員の捜索の許可は。降ろして下さるかな?」
私はそう問うて、この不穏な空気の市庁舎から早く退きたかったので結論を急いだ。
「構わぬさ。私の知らぬ者の話であるし、水の眷属の者の支配権は水公リューディオさまの物でもある。さらに、昔の情婦のネムレムの頼みとあれば。汝らを阻んでなんになる? そういうことさ。勝手に励み給え」
ふむ、この男は非常にドライ。やり易くて助かるという物だ。
*デートルト魔道具店・販売スペース
「これなんだ? アギッツ?」
「ああ。ダイナマイトっていうんだぞ。その筒の先についているヒモ。導火線っていうんだけどな。そこに火をつけると、火薬を含んだそのヒモが燃えて行って、筒の中に満載されている火薬に火がついてな? 爆発する仕組み。まあ、炎魔導だとエクスプロージョンの弱魔力版といった感じの大爆発が起こる」
「この、……イオシスのモノではないな? この妙な道具の出自は」
「ご名答。そいつは大陸西方の大陸人口最大国家。ツェンの道具だ」
「ふん……。つかえそうだ。おいロッツ! 五本ほど懐にねじ込んでおけ!!」
「一本3000S$だぜ?」
「かまわん、もらう」
「へえ? まいどあり」
……おい、何だおいシン。俺は懐にエクスプロージョンの種を五発も持って動かにゃならんのか? 俺がそう聞くと。
「暴発が怖いのか? 私の持っている魔導弾丸は全てが暴発したらこのバルバラムが半分は吹っ飛ぶんだがな」
おぞぞぞぞぞぞあああああ!!!
こわいこわいこわい、シンおまえ怖いぞ!! そんなヤベエ状態で、タバコやったり酒飲んだり、事によっては馬鹿笑いしてやがんのかよお!!
*デートルト魔道具店・応接室
「さて、状況は揃ったぜ」
「うむ」
「ロッツ、どういう状況だよ?
さて、おれが情報を伝えようとすると、ソファーに深く腰掛けたシンは腕を組んでうなずき、アギッツの旦那は少し浮足立っている感じ。
「水魔導師団第二分隊1000人は、ロールーラ通りの奥。市民公民館10棟に駐留して、件の生娘、まあ、アギッツの旦那の妄想じゃなければだが。マーメルク嬢の捜索に市内に散ってる。で、本陣には分隊長の7段水魔導剣士のトーフォルトとその副官、五段水魔導師のファナシー=シュアイナンが水魔導師100を擁して待機中。でな?」
「うむ、そこに突っ込むか」
「そういうこと。こんだけの数の不利があると、頭潰すしか勝つ手がねえよ」
「わかる、ぞ」
さってと、あぶねえっちゃあぶねえが、目的を果たすという条件を飲んだ際の一番の安全策を。シンは採用するつもりのようだ。
16話 END




