14_【第十四話】おまえちょっと里帰りして来いよ!!
*デートルト魔道具店
「はっ!! スクレイパーで汚水お掃除ゃーーーーーーーーーる!!」
はい! マーメルクです!! さいきんアギッツ店長にマーメルちゃんとか呼ばれてなんだかなぁなマーメルクです!!
昨日の大雨で、お店は浸水!! しなかったものの! お店の前のタイル地の広場がびっちゃびっちゃなので!! 労働人種たるこの私はスクレイパー!!
「あふぁ……。おう、マーメルちゃん。早いねえ? まだ六時前だぞ?」
「マーメルちゃん呼ばんでくださいけんぬ!! マーメルクですけん!!」
「……どこの方言だそれ?」
「私ディスティニー帝国」
「どこにあるんだそのインペリアル?」
「謎」
中年おっさんオーナー店長、アギッツ=デートルトおっさん大欠伸! おっさんは二回言うのがマーメルク流です。おっさーん!! これで計三回!!
「んでまあ、んでよ。マーメルちゃん、ベクシオンの孤児院って言ってたよな? 出身孤児院は」
「はやいす!! 聖ミランダ伯爵夫人記念孤児院でわす!!」
「おまえさん、そこ何年帰ってない?」
「16の時に。水魔導師団に入ってからは一回も帰ってませんね~」
「寂しくないの?」
「お仕事ビジーヴェリービジーソーでそれどころじゃなかったんですよ、水魔導師団では」
「戻って来たい?」
「おおう?! いいんですかあ? そりゃ里帰りしたいですよう!! 孤児院のちっちゃな子たちも大きくなっているだろうし!! マーメルクちゃん謹製のデリシオアスプティングプリーンカスタードを喰らわせたい!!」
「ふーん。有給休暇一週間やろっか? ここ半年頑張ってくれたし」
「きさまぁ!! なんという優しい事を云うのか!? マメ子びっくりじゃい!!」
「あはははは。いいから帰ってきなよ。ベクシオンまでだったら。んー、魔導鉄道なら、そりゃ片道二日だが……。馬車だったら片道一週間だな。片道で有給休暇吹っ飛ぶなぁ……」
「うん。物理的に不可能ですわすよねそれ」
「ってわけで!! 往復魔導鉄道チケットどーん!! と経費で出しましょーかねえ」
「うげ!! 何の下心あっての事かあ!?」
「あはははははは!! そういう反応スゲエ好き。なんもねーよ。あるとしたらもっとよく働いて欲しいってだけかね?」
「ソーワイズネス!! てんちょーわかってるんー♬」
「ほいほい。モーニング作ってくれよ」
「おとくいまかせろまかされるですお!!!」
*枯れ木森の砦亭
「おいシン」
「なんだ赤い鳥の巣」
「俺の情報。あの魔道具店の旦那に伝えたか?」
「ああ」
「どうなった?」
「ああ」
「ああじゃねえだろ? リューディオ公がなんかどっかの生娘に恋慕して。あろうことか自らの幕下の最強実動部隊の第二分隊をこのバルバラムに向かわせてきているんだぞ?」
「ああ、そうだな」
「んがあああああ!! ムカつくなその反応が!! 銭湯の暖簾かお前の会話術は!!」
「似たようなものじゃないのかな?」
「ああ、ああ、ああああ!! イラつくう!!」
「それでだが。まあ、なあ。お前覚えているか? アギッツの店のあの店員」
「ん? ああ。マーメイド? とかいう青髪お嬢さんだろ? 何あの可愛い子?」
「マーメルクだ。欲情するなる類人猿」
「ひでえ! ただ可愛いって言っただけじゃねえか!!」
「おまえは自分の顔を鏡で一日30分にらんどけ」
「鏡が割れて何枚あっても足りねえよ!!」
「まあ、だ。あの娘、里帰りしたぞ。お里は首都ベクシオンらしい」
「ハイシティガールじゃねえか?」
「まあ。そうだな。いいのではないか? 文化薫る娘だからな」
「んで? あのモノクルのアギッツの旦那。寂しくないんか?」
「寂しんじゃないか? まあ知ったことではないがな」
「あの店で出てくる、茶請けの梅干しやたらうめえんだよな。応接室でタバコも吸わせてくれるし」
「アギッツは怠惰でまめな奴だからな」
「なんだよそのアンビバレンツダブスタは?」
「人間は複雑だということかもしれんが。よくわからんと言えばそうともいえる」
「つまり?」
「どうでもいいことだ」
「おまえ悪魔のジャーマン投げ会話やめろよ!!」
「ああ」
「ああ、はもうやめろよ!!」
「じゃあ、行くぞ」
「ん? どこにだよ」
「その喫煙所だ」
はて、シンはそういうと。砦亭から出て、あのモノクル店長、アギッツの旦那の店のある。ティアーム通りの方に歩き始めた。
14話 END




