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13_【第十三話】トーフォルト=ククルカン



 水の都市ブラウガルド。水魔導師団総勢10000人も魔導師が駐留する水の眷属の本拠地です。

 そこに駐留する水魔導師団第二分隊の長、信水の魔導剣士と呼ばれる男がおりました。


 その男の名は、トーフォルト。ククルカン男爵のトーフォルトというのです。


「えーっと、分隊長?」

「ファナシー。俺は今世を儚んでいる。愚痴を聞いてくれるかな?」

「うーん。構いませんけどねー。そーいうのがわたくしのお仕事でもありますしねぇ」

「たすかる。実はな……。というわけなんだ」

「……ガチ?」

「トゥルーのガチなんだよ、ファナシー」

「おわってる!!! 水魔導師団終わりじゃないのよそんな命令が下るようじゃ!!」

「だろう? ファナシー」

「まったくです!! 狂ってますね、われらがアクアデュークさまは!!」

「何が悲しゅうて、というものだよ」

「まさかあの変態グルグルのリューディオ公の理性が納豆の糸で出来ているとは……」

「そのイカレタ寓話のままさ。生娘を無傷でひっ捕らえてこいとさ。しかも、それがほかならぬ自分の恋煩いの解消の為であるとのことだ!! あのボケ、私を用いるなあ!!」

「しかしですよ? トーフォルト分隊長?」

「なんだあ!!」

「リューディオ公が恋患いででっけえベッドで寝込んでいたら? どうなります?」

「わかっている!! 公の決裁を待っている、国内の医療部門が半身不随になるというのだろう!!」

「いえ。なる、ではなく。もうなっております」

「うぐうううううううううぬ!!」

「っていうわけで。れっつごー生娘ひったて!!」

「うぐうううううううううん!!」

「分隊長? 唸ってどうなるんです? フツーにフツーに考えて。あの、マーメルクちゃん一人に我慢してもらえば! この都市が治療している幾多の病い人が生きられるのですよ?」

「そーゆー!! 個人倫理の破壊は私は好かんのだ!!」

「じゃあ?」

「うるさいなぁ!! 分かっているんだ私も! ベストは出ない! ベターを刻んでゆけということはあ!!」


 さて、第二分隊長のトーフォルトは、とても歯切れの悪いながらも。命令を順守するつもりのようですね。


*枯れ木森の砦亭


「あはは。やっべえ」


 ロッツ=デボルドは。イオシス王国の副都であるバルバラム市にて。とある情報を掴んだようで。彼の行きつけである場末の安酒場、【枯れ木森の砦亭】でとある女性を待ちつつも、安酒をひっかけていた。


「このクソ天然パーマ野郎、何ニヤニヤしてやがる?」


 この店のオーナーである、マスターとバーテンを兼任している銀髪の男、ドゥットが。ロッツを気色わるいものでも見るように。イヤーな顔をして竹輪のチーズ炒めのお皿を乱暴にロッツの前のテーブルに置いて言いました。


「はい、1000シードル!!」

「ちょい待てドゥット!! 竹輪三本にメルトチーズかけて炒めただけの食いモンが一皿1000シードルだと?!」

「当り前だ!!」

「まてよ!! 竹輪の市場価格だ!! 一本50シードルしねえし!! メルトチーズだってこの量じゃ100シードルもしねえ!! つまり、ドゥット! お前は原価200シードルかそこらの食いモンを! 堂々と1000シードルで売っているボッタクラーだ!!」

「当り前だあ!!」

「もういいよ!! お前はもういいよドゥット!! 値段交渉するだけむなしい! どうせ貧乏人の財布から金取る鬼の趣味持っているんだろ? んな事より、シンは?」

「ああ、二階でビーフシチュー食ってんぞ」

「なんで一階で食わねえんだよ?」

「おまえとかがいるからじゃねえか? ロッツ? ぶははははははは!!」

「……そりゃいいけどよ。ドゥット、お前の店のビーフシチューっていくらだよ?」

「2800シードル」

「たけええええええええ!!」

「おう、高いぜ?!」

「シンも狂ってんのかよ? 町のいい店の値段だぞそれ!!」

「わかんねえけどな、シンが何考えてるかは」


 と、ロッツと店主のドゥットが話していると!! 後ろに180cmはありそうな高身長の銀髪ロングの女性が無言で立っていて。口元に性質の悪いニヤニヤ笑いを浮かべて。二人の話を聞いている。気配を消すのが非常に巧みなようで、唾を飛ばして話しているロッツとドゥットは気が付いていない様子ですね。


「レッドブラックパンチへアードモンキー?」


 銀髪の女性は、だしぬけに。可哀想なくらいもじゃもじゃの赤黒い天然パーマのロッツの頭を突然右手でガシリを握りました。


「おまえ、楽しそうだな? さっき、ドゥットがお前が来て、お前が私に話があると言っていたと聞いたが? なんだ? 聴こうかな?」

「おぐううう!! やめろシン!! ガクガク左右に揺するな!! 脳震盪おこすぞ!!」

「嘘を吐くな! 天然パーマと赤毛とモンキーとチビマッスラーの兼任者のお前がそんなにヤワなわけがあるまいに!!」

「おまえいつも酷いよな!!」

「おまえはそれに値する価値がある」

「泣くぞ!!」

「で、だ。持ってきた情報の方が問題だ、お前より!」

「ひでえ!!」

「いいから話せ」

「ったく!! あのよう、アクアデュークのリューディオ。リューディオ=アートドラゴン。こいつ知ってるか? シン」

「ん? 国内医療の総帥だな」

「ああ。なんかよ、そいつの握ってる水魔導師団。その事実上の実動部隊ナンバーワンのよ。第二分隊がこのバルバラムに向かってるってよ。ブラウガルドから1000人の分隊員で行軍してな」

「ほお? 何の行軍目的かな?」

「まあ。まだわかんねえけどよ。もーちっと探るか?」

「ああ。そうだな」


 さて。何が起こっているのか。

外ならぬ、トーフォルトたち意外には知る術もないことだったのです。


               13話 END


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