第483話 大雑把
クリカラさんが戻ってきたのは、その日の夜だった。
あまりに帰りが早かったため、会えずに戻ってきたのかと思ったけど、どうやら会うことができたらしい。
「クリカラさん、ありがとうございました。それで、天使族のお知り合いの方とは会えましたか?」
「いや、我の知り合いは既に他界していた。だから、天使族の住んでいるところまで行き、話を通してきてやったぞ」
そう言って胸を張り、ドヤ顔をしているところは非常にヤトさんに酷似している。
クリカラさんは体格も大きいし厳ついため、可愛らしくはないんだけどね。
「本当ですか? そこまでしていただき、本当にありがとうございます」
「何度も言うが、別に佐藤のためにやったわけではないのだからな!」
「理由はどうあれ、ありがたいことには変わりありません。それで、天使族の方とはどこに行けば会えるのでしょうか?」
「もう向かってきておる。我に乗っていいと言ったんだが、頑なに断ってきたから置いてきた! 今頃、途中を進んでいると思うぞ」
話を通しにいったのに置いてきたとは……これまたとんでもない発言。
まぁ、クリカラさん自身は本当に用がないわけだし、天使族の足並みに揃えるのが大変なのも理解できるからね。
置いてきたことにとやかく言うつもりはないけど、天使族の方々はエデルギウス山までの道のりを知っているのだろうか?
「そうなんですね。ただ……天使族の方々はエデルギウス山の場所を知っているんですか?」
「………………むむ?」
先ほどまで胸を張っていたクリカラさんだが、私の一言を聞くと、長い沈黙の後に大きく首を傾げた。
まだ何も聞いていないけど、この様子だとエデルギウス山の場所を伝えずに置いてきてしまったみたいだ。
「場所を教えなかったのかの? きっと迷っておるのじゃ!」
「教えたような、教えなかったような……」
「教えていなかったら大変ですよ。置いてきた場所は覚えていますか?」
「覚えてはいる! ……くそぉ、我に二度手間をかけさせるとは!」
「何を言っているのじゃ! 全て父が悪いのじゃ!」
珍しく正論を言ったヤトさんに叱られ、シュンとしたクリカラさんは、すぐに飛び立っていった。
全てを大きくしたヤトさんという感じであり、ミスのスケールも非常に大きい。
「凄い大騒ぎでしたね」
「父は母がいないと何もできんからのう! ダメダメなのじゃ!」
ヤトさんに呆れられるという、かなり凄い光景。
私たちはもうしばらく雑談しながら待つことにし、そしてクリカラさんが戻ってきたのは日付が変わる少し前ぐらいだった。
もうそろそろ寝ようと思っていたタイミングであり、既にヤトさんとシーラさんは眠ってしまっているらしい。
応接室にやってきたのは、私とドレイクさん、それからクリカラさんだけ。
「クリカラさん、お疲れさまでした。天使族の方とは会えましたか?」
「ちゃんと会えたぞ。迷っていたようで、うろうろしておったわ!」
「無事に会えたようなら良かったです。今回は連れてきたんですか?」
「おう。無理やりにでも我に乗らせて、今は別室で身体検査を行わせているところだ!」
身体検査をされたことがなかったから知らなかったけど、初めて訪れる方にはちゃんと行うんだ。
この世界もドラゴンは最強って感じだし、てっきりその辺りは大雑把なのかと思っていた。
「そうなんですね。ちなみに何名で来ているんですか?」
「3人だ! これからやってくるし、見れば分かることをいちいち聞くな」
「色々と知っておきたいんですよ。天使って未知じゃないですか」
「我からしたら、佐藤の方がよっぽど未知だ!」
そんな感じでクリカラさんと話していると、部屋の扉がノックされた。
多分だけど、天使族の方たちがやってきたんだと思う。
「入っていいぞ!」
扉を開けて入ってきたのは、3名の天使。
仮装パーティーの時に見たナハスさんと同じ雰囲気……というより、最後尾にナハスさんがいた。
全員が美形だし、ナハスさんも他人の空似かと思ったけど、腰につけている葉巻ケースは見間違いようがない。
出会ったときは私もコスプレをしていたし、そもそも印象も薄いようで、私のことは覚えていないみたいだけど。
「倶利伽羅龍王。お招きいただきありがとうございます」
「構わん。我が呼んだわけだしな」
3人の天使たちは、クリカラさんに深々と頭を下げた。
ファンタジー的にも凄い絵面なのだが、お辞儀に合わせて天使の輪っかが移動しているのを見て、私はそちらばかりが気になってしまう。
「それで、天使族にお話があるというのは一体何でしょうか?」
「何度も言うが、我からの話はない。話したいという人物がいるから呼んだまでだ」
「倶利伽羅大王自ら動く相手……。ぜひ、ご紹介ください」
「紹介も何も、うぬらの横におるだろう」
クリカラさんがそう言うと同時に、3人の天使は驚愕の表情で私の方を凝視した。
ただ、人間のおじさんのわけがないと思ったのか、横にいたドレイクさんに視線が向く。
なんというか……名乗り出るのが非常に気まずい状況になってしまった。





