第484話 天使族の使い
視線に気づいたドレイクさんは、大きく首を横に振った。
天使族の3人は、部屋の中をキョロキョロと見渡し、他に誰もいないことに気づいてから私に視線を向けた。
「…………あなたが私たちを呼んだ方なのですか?」
「は、はい。佐藤と言います。今回はわざわざ来ていただき、ありがとうございました」
お前のために来たわけではないと言いたげな表情をしているが、先頭にいる爽やかな好青年の方が静かに頭を下げてくれた。
「それで、倶利伽羅龍王とはどのようなご関係なのですか?」
「友人のお父さんって関係性ですかね? クリカラさんにはよくしてもらっています」
「うぬ。娘がよくしてもらっているから、今回は仕方なく我が動いたのだ!」
「倶利伽羅龍王のお子様のご友人……と。それでは佐藤様、私たち天使族にお話とは一体何なのですか?」
私とクリカラさんの関係性を聞いたことで、天使族の方々の表情が変わった。
一応、重要人物であるという認識になったのかな?
「その前に、一ついいですか? ナハスさん、お久しぶりです。覚えていますか?」
「――!? お、俺のことを知っているのか?」
用件を伝える前に、ナハスさんに挨拶をしたのだが、やはり私のことは覚えていないようで、酷く驚いた表情を見せた。
必死に記憶を辿っているのが伝わってくるが、いくら記憶を辿っても思い出せないことまで伝わってくる。
「覚えていませんか? 仮装パーティーのときに会ったんですが……。天使の格好をしていたと言えば思い出せますかね?」
「仮装パーティー……。天使の格好……あっ! ――ぷっ、くっくっく。……ふふ、あ、あの……くく、変な格好をしていた人間か」
ナハスさんは私の天使のコスプレを思い出したのか、ツボに入ってしまったようだ。
必死に笑い声を堪えているけど、声を殺して爆笑している。
「そうです。私はあの村の責任者のような立場にいる者です」
「……ぶっくっくっ。……せ、責任者が貧相なコスプレ。……ふっふっふ。――ん? あの村の責任者ということは!?」
私の“責任者”という言葉で、更に頭の中でストーリーが完成したのか、声を出していないものの腹を抱えて笑っていたナハスさん。
ただ、途中でヴェレスさんのことを思い出したようで、一瞬にして顔色を青ざめさせた。
「はい、そうです。今回お話ししたいことはヴェレスさんについてです」
私がヴェレスさんの名前を口にした瞬間、ナハスさん以外の天使の方の表情も一気に強張った。
特に真ん中にいた長身長髪の男性なんかは、腰に差していた剣に手を伸ばしている。
「おい、ヴァルステラ。剣を握るのはやめろ」
「すみません」
「……すみませんね。ヴェレスの件で呼び出されたのであれば、色々と納得しました。とはいえ、我々は何も知りません。一度、天使界にお話を持ち帰ってもよろしいでしょうか?」
先頭の爽やかな男性がそう告げ、この場から去ろうと動いてきた。
この緊迫感からも、ヴェレスさんとの件が天使の間で大事になっていることが伝わってくる。
「何も知らなくて構いませんので、話をさせてください。それに、ナハスさんは色々と知っていますもんね?」
「お、俺は……し、知らんぞ!」
「何を言い合っているのか知らんが落ち着け! もう深夜だし、帰るに帰れんだろう。少しぐらいは話をしていってもいいのではないか?」
「……倶利伽羅龍王がそう言うのであれば、そうさせていただきます」
クリカラさんのアシストもあり、すぐに帰ってしまうという事態にはならなさそう。
伝手がなくてクリカラさんを頼ったけど、この関係性を考えると、クリカラさんではない方に頼んでいたら大変だったかもしれない。
「それでは先にお伝えさせていただきたいのですが、ヴェレスさんに反逆の意思はありません。あの村に住んでいる私たちも同じ気持ちです」
「……ええ。重々承知していますよ」
「でも、何か動こうとしているんですよね?」
「さて? 何のことを言っているのか分かりませんね」
うーん……掴みどころのない人だ。
まだ話ができそうな金髪で長髪のヴァルステラさんやナハスさんは、この爽やかな天使の男性に話すのを止められている。
何とか建前ではなく、本音で話し合いたいんだけどなぁ。
一問一答形式になり、回答もはぐらかされるのは目に見えている。
「ナハスさんが遊びに来たのは、そういう理由じゃないんですか?」
「お、俺は――」
「ナハスさんは遊びに行っただけですよ? ですよね?」
「あ、ああ。面白そうだから、遊びに行っただけだ」
うーん……これは中々だ。
どうにかして、ナハスさんを会話に引っ張り出さないといけないな。





