第482話 この親にしてこの子あり
仕えているであろう龍人族の方に話を通し、ヤトさんの下へと案内してもらえることになった。
やはり、まだ帰ったばかりということもあって、ヤトさんはエデルギウス山にいるらしい。
「何度来ても、圧巻のお城ですね。王城も凄いですが、別種の凄さを感じます」
「生命力と言いますか、力強さがありますよね。龍の壁画も息を呑みます」
前回も似たような感想を述べたと思うんだけど、本当に城内の壁画が凄い。
柱も龍が昇っているような造形だし、美しさと力強さが両立している。
何度見ても飽きないエデルギウス山のお城を眺めながら、ヤトさんの自室へと案内された。
小さい頃の映像を見せてもらった時に一度入ったことがあるけど、意外にも片付けられたシンプルなお部屋。
ところどころヤトさんの趣味のものが散見されるけど、綺麗で過ごしやすさ重視なんだよね。
まぁ、お付きの方やアシュロスさんが掃除をしているんだと思うけど。
「失礼します。ヤトさん、遊びに来ました」
「おお! 本当に佐藤が来たのじゃ! つい先日お別れしたばかりなのに、わらわが恋しくなったのか?」
「まぁ、なくはないですが……急用があってやってきたんです。今、ヤトさんのお父さんってエデルギウス山にいますか?」
「父に用があるのかの? 昨日はいたから、今日もいると思うのじゃ!」
「なら、ぜひお会いさせてほしいです」
どうやらクリカラさんもいるみたい。
話をすぐに聞くことができそうでよかった。
「もちろん構わないのじゃ! でも、父に何の用があるのじゃ?」
「実は、天使族の方とコンタクトが取りたくてですね、天使のお知り合いがいないかを聞きに来たんです」
「天使……? わらわは見たことがないのう」
うーん、やはりヤトさんには知り合いがいないか。
クリカラさんも知らなければ無駄足になってしまうわけだけど、直接知らなくても、知っていそうな方は知っているはず。
「クリカラさんは顔が広そうですし、お知り合いにいるかと思ってきたんですよ」
「確かに父ならおるかもな! 分かったのじゃ! わらわが父の部屋まで案内するのじゃ!」
胸を張りながら、トンと叩いたヤトさん。
クリカラさんはヤトさんに甘々だし、ヤトさんも一緒ならば、きっと紹介してくれるはず。
上機嫌なヤトさんと共に、クリカラさんの部屋へとやってきた。
ノックをすると渋い声が返ってきたのだが、ヤトさんが声を出した瞬間、声が一気に甘くなった。
「父、入ってもいいかの?」
「おおー、ヤトだったか! もちろん入っていいぞ!」
声の感じから喜んでいるのは分かったが、部屋に入った瞬間に飛び込んできたのは、想像を超えるクリカラさんのだらしない笑顔。
私たちが一緒だということが分からなかったようで、だらしない笑顔のまま固まり、そして徐々に赤面していった。
「な、なんで佐藤がいる! 我は聞いていないぞ!」
「急に来て、すみません。ヤトさんが案内してくれると言ってくれたので、お言葉に甘えてしまいました」
「うぬ! わらわが案内すると言ったのじゃ! 忙しかったのかの?」
「む、むぅー。別に忙しくはないが、事前に言うなりしてくれないと……」
クリカラさんはヤトさんに強く出られないのか、ブツブツと文句を言っている。
そんな姿が面白くて笑ってしまい、クリカラさんにキッと睨まれてしまった。
「それで、わざわざ何をしに来たんだ! 用がないってことはないだろ?」
「はい。実は、天使の方と会いたいと思っていまして、クリカラさんのご友人に天使族の方はいませんか?」
「天使? また変わったものに会いたいと言ってきたな。……いないことはないが、長いこと連絡は取っていないから、連絡がつくかは分からん!」
おお! さすがは龍族の王様。
天使の方に知り合いがいるみたいだ。
「会えなかったとしても構いませんので、よければコンタクトを取ってもらえませんか?」
「……めんどうくさいな。天使族は変わっておるからな! できれば、連絡は取りたくない!」
「父、佐藤の頼みはわらわの頼みなのじゃ! 断るというなら、わらわはしばらく佐藤のところへ行くのじゃ!」
「……ガーン! そ、それは困る!」
交渉にすらなっていないと思ったし、単純にヤトさんが来たいだけだと思ったんだけど、クリカラさんには効果抜群だったみたい。
明らかに動揺を見せているし、大正解な方法だったようだ。
「なら、天使とやらに連絡を取るのじゃ!」
「分かった! ……くっ!」
元気よく返事をしてから、何故か私を見てまたもや睨んできたクリカラさん。
当初はオーラも凄いし、威厳のある方だと思っていたけど、今や面白パパだなぁ。
「天使族への連絡はどうやって取るんですか? 何か秘密の連絡手段みたいなのがあるのでしょうか?」
「そんなものあるわけないだろ! ワイバーンに手紙を運ばせていたが、時間もかかるし、我自ら行ってくる」
「えっ? そんなお手数をおかけしていいんでしょうか?」
「決して佐藤のためではないのだからな!」
本当に言葉通りなんだろうけど、ツンデレキャラみたいなセリフに思わず笑ってしまう。
三度睨まれたものの、クリカラさんはマントを脱ぐと、部屋から出ていこうとしている。
「――んんっ! クリカラさん、本当にありがとうございます」
「ヤトが世話になっているからな。構わん」
かっこいいセリフを残し、去っていったクリカラさんの背中に私は頭を下げる。
話によれば一日も経たずに戻ってくるとのことなので、エデルギウス山で待たせてもらうとしよう。





