第471話 ハムスターレース
ロッゾさんとシッドさんは、何かを応援している様子だった。
何かを応援する屋台なんて、流石に想像がつかなすぎる。
「ロッゾさん、シッドさん、何をしているんですか?」
「おう、佐藤さんじゃねぇか! 今、賭けているんだわ!」
「か、賭けですか? ギャンブルの屋台ってことでしょうか?」
ギャンブルと聞いて、二人が熱中していた理由は分かったけど、子どもも来るお祭りでギャンブルは如何なものかと思ってしまう。
この世界は日本のように、ギャンブルに規制が敷かれているわけではないから、ルール上は問題ないんだろうけど。
私が少し不快感を抱きつつ屋台を覗いてみると……屋台の上にいたのはハムスター。
計六匹のハムスターが特製のコースを走っており、それをレースにしていたみたい。
「うわっ、何ですかこの可愛いのは! ……うへへ、癒やされますねぇ」
私の横から覗き込んだシーラさんは、早くもハムちゃんたちにメロメロになっている。
かく言う私も、先ほどまでの不快感はどこへやら、可愛いとしか思えなくなっていた。
「これはハムスターレースですか?」
「その通りや! そこにいるロッゾはんとシッドはんに協力してもらって、このレース会場を作ったんや!」
「ハムスターは走るのが好きみてぇだからな! 極力ストレスがかからないように、レース設計をしたんだぜ!」
「まぁ、コースを実際に作ったのは俺だがな。ハムスターも計十八匹用意しているみたいだし、遊ばせているだけでレースになるって仕組みなんだわ」
縁日でのギャンブルにはあまり賛同できなかったものの、このハムスターレースはアリだと思う。
一着を当てたら豪華景品、二着か三着ならそれなりの景品、四着以下は残念賞と、ギャンブル性も低い。
そして何より……走っているハムスターが可愛すぎる。
可愛いは正義であり、屋台としても完璧な内容。
「これは中々考えられた屋台ですね。ハムスターが可愛いです」
「そう言ってくれると思っとったわ!」
「佐藤さんとシーラも賭けてみたらどうだ? 思っているより熱くなれるぜ!」
「せっかくなのでやってみましょうか。私は……三番の子にします」
「佐藤さんは三番の子ですね。なら、私は一番の子にします」
私とシーラさんの予想が出揃ったところで、ハムスターレースが開催された。
まず先手を取ったのは、私の選んだ三番の子。
グレーの毛をモフらせながら、一生懸命走っている。
このまま順当にゴールかと思いきや……ゴール手前に置かれていた果実に食いついてしまい、完全に足が止まってしまった。
次々と果実トラップに引っかかっていく中、最後方をゆっくりと走っていた一番の子が、果実に目もくれずゴールイン。
シーラさんが見事、予想を的中させてみせた。
「すっげぇ差しが決まったなー! シーラは見る目があるぜ!」
「根拠があって一番の子を選んだんですか?」
「一番体がしっかりしていると思って選んだのですが、どうやらご飯をいっぱい食べていたことでまん丸だったみたいです。結果的に果実のトラップにはかかりませんでしたが、完全に運での勝利でした」
恥ずかしそうに語るシーラさんの説明に、全員で笑ってしまう。
いやぁ、これは面白い試み。
疑念を持っていたけど、よくよく考えればサムさんが承認しているんだもんね。
明日も頑張ってくださいと声を掛けてから、私たちはハムスターレースの屋台から離れた。
「佐藤さん、一個目の屋台から大当たりでしたね。ハムスターレースは流石の案だと思いました」
「ですね。ロッゾさんとシッドさんが協力していたみたいですし、色々なクオリティが高かったです。当日も盛り上がりそうですね」
ハムスターレースにテンションが上がった私たちは、屋台を練り歩きながらチェックしていった。
オリジナルの屋台は盛り上がる工夫が施されており、日本の屋台を流用したものはクオリティ高く再現してくれていた。
ヤトさんは特に楽しんでくれたようで、どこにいても声が聞こえるくらい大騒ぎしていたのが分かった。
もちろん他の参加者の方々も楽しんでくれたみたいだし、屋台は文句のつけようがないくらい完璧。
ここまではまぁ既定路線であり、気持ちを楽にして見回れていた。
本題は、ここから見に行く新しい試みであるお神輿。
再三チェックはしてきたものの、盛り上がるかどうかは別問題だからね。
ちょうど準備しているだろうし、屋台から離れて様子を見に行くとしよう。
「あれがお神輿ですね。実際に見てはいましたが……こうして外で見ると、凄く可愛いです!」
一番最初に目に飛び込んできたのは、ライムのお神輿。
絶妙な球体が再現されており、スライムではなくライムだと一発で分かる造形だ。
そして、シーラさんの言う通り、日に照らされているのを見るとより可愛く見える。
お神輿は神様を落とさないために頑張るものだけど、このライムの造形も、可愛さゆえに落とせないという気持ちを働かせてくれるはず。
「ビジュアルが可愛い三名を選んで正解でしたね。これは落とせないですよ」
「ですね。みんなに担がれる、この大きなライムを早く見たいです!」
ライム神輿を見ながら、二人で興奮しまくったのだった。





