第470話 最大級の祭り
他の方たちとも軽く会話をしたところで、いよいよ縁日のリハーサルが始まる。
リハーサルといっても本番通りに行う予定であり、今日駄目だと思った箇所の修正を明日行うだけだ。
「佐藤さん、見回る予定ですか? 私もついていきます」
私が一人で突っ立っていたところ、声をかけてくれたのはシーラさんだった。
確かに見回る予定ではあったけど、一人で見回ろうと思っていた。
「見回る予定ではありますが、シーラさんは縁日を楽しんでください。明日からは働いてもらうことになりますからね」
「いえ、佐藤さんと一緒に見回りたいです。見回りながらでも、縁日を楽しむことはできますからね」
シーラさんは太陽のような笑顔でそう言うと、私の横にぴったりと並ぶように立った。
口では縁日を楽しんでほしいと言っておきながら、こう言ってもらえるのは本当に嬉しい。
「……シーラさん、ありがとうございます。それでは見回りにいきましょうか」
「はい。行きましょう!」
まずは屋台から見ていこう。
縁日のリハーサルが開始されたと同時に、ほとんどの方が屋台へと向かっていったからね。
花火やお神輿を用意したけど、やはり縁日のメインは屋台だろう。
今年は更に屋台の数も種類も増やしたため、全て回るだけで一日が潰れると思う。
「凄い屋台の数ですね。種類も豊富ですし、屋台の内容も佐藤さんが考えたんですよね?」
「はい。私が提案したものがほとんどですが、私の暮らしていた世界のものを持ってきただけですからね。私自身が何かを考えたわけではないです」
「異世界には、これだけの屋台があるってことですか。本当に娯楽に特化していますね」
「娯楽で溢れすぎているくらいですからね。ただ、サムさんが雇ってくれた方たちが考えてくれた屋台も、去年に引き続き継続していますので、屋台の種類だけなら負けていないと思います」
去年、サムさんに雇われて手伝いに来てくれた全員が、今年も来てくれたからね。
更に、知り合いの方にもオススメをしてくれたみたいで、今年は規模を大きくしたのに、人材は去年よりも簡単に集まったとサムさんが言ってくれた。
更に、自主的に屋台の内容を考えてくれた方も多くいたし、去年の改良案も多く出してくれた。
去年、一切ケチらずにボーナスを出して、本当に良かったと心から思う。
「へぇー、屋台の種類はこのお祭りが一番なんですね。規模ではまだ負けているんですか?」
「そうですね……。このお祭りの百倍以上の規模感で行っているお祭りが、ゴロゴロあると思います」
「じゅ、百倍以上がゴロゴロですか!? 異世界はそんなにもお祭りが身近にあるんですね」
夏といえばお祭りが思い浮かぶほどの風物詩だし、一年かけて用意するお祭りも珍しくないからね。
来場者が百万人以上のお祭りがいくつもあるくらいだし、正直、規模で考えたら遠く及ばないのが現状。
「いつかは、さらに大きなお祭りも開催したいと思っています」
「規模を百倍にするのは流石に難しいと思いますが、今日遊びに来てくれた方々も巻き込んでのお祭りは面白そうですよね。幸いにも、多種多様な種族の方とお知り合いですし、それぞれの出し物を用意すれば、きっと大きなお祭りになると思います」
何気なく言ったであろう発言だけど、めちゃくちゃ面白そう。
龍種、龍人族、エルフ族、獣人族、巨人族、リザードマン族。
更にはクリスさんやシャノンさん、ガロさん等の変わった経歴を持つ人たちも知り合いにはいるからね。
ミラグロスさんたち魔族の方々や、ヴェレスさんの……お友達がいるのかは分からないけど、ちょっと裏の方々にも参加してもらえたら、きっと世界を巻き込むようなお祭りが開催できそうな気がする。
まだまだ下準備は必要だし、もっと多くの種族や人々を巻き込みたいため、日本三大祭りに匹敵するお祭りを開催する。
これは大農園、魔物牧場、異世界の施設運営という目標を超える、私の夢の一つにしてもいいかもしれない。
「……ふふ、佐藤さん。何だか楽しそうですね」
「すみません、またニヤついてましたか? シーラさんの大きなお祭りという言葉を聞いて、凄く面白そうだと思いまして……」
「一切謝ることじゃないですよ。楽しい将来の展望が見えたようなら何よりです」
「展望というほどのものじゃないんですけどね。ちょっと恥ずかしくなってきましたので、屋台を見て回りましょうか」
シーラさんがニヤニヤしながら見てくるため、私は恥ずかしさを誤魔化すように屋台へ向かうことにした。
適当に近づいた屋台は、去年も協力してくれた方の屋台であり、新しく考案したものを出している様子。
その内容がよほど面白いのか、既にロッゾさんとシッドさんが夢中になっており、熱の入りようからかなり面白い内容なのが分かる。
ただ、屋台で何をやっているのかは、もう少し近づいてみないと分からないため、ちょっと様子を見に行くとしよう。





