第465話 一件落着
微妙な感じの答えになってしまったけど、ジャバルさんには理解してもらえたみたい。
ただ、この二つの提案を拒否されてしまうとなると、流石にリザードマンの村から出ていってもらうことしかできなくなってしまう。
「いいのか? さっきも言ったが、俺たちばかりが得をして、サトーは一切得をしていない提案ばかりだ」
「先ほども答えましたが、リザードマンの皆さんと友好関係を築けることが、私にとってのメリットです。それで、お返事はいかがでしょうか? 拒否されるとなると、今いる場所から去ってもらうという提案しかできないのですが」
「もちろん受けさせてもらう。……というか、こちらからお願いしたいくらいだ。命があるだけでもありがたいのに、最後の提案までしてもらえるんだからな」
頭を下げてそう言ってきたジャバルさんを見て、私も一安心した。
「受けてくださってよかったです。それでは、村に残って農業を進めるのか、村ごと移住するのかを決めて頂けたら幸いです」
「それについては、一度帰ってから決めても大丈夫か? 駄目だというなら、この場で決めさせてもらう」
「もちろん大丈夫です。ゆっくり決めてください」
あっさりとはしていたけど、これで巨人族とリザードマンの抗争はなくなる……はず。
リザードマンの村の人々が提案を拒否する可能性は残されているけど、そうなった場合は仕方がないと思う。
「やっぱり佐藤は凄いのじゃ! わらわは何を言っているのか分からなかったのじゃが、佐藤が丸く収めたことだけは分かったからのう!」
「これも全部ヤトさんのお陰ですよ。ありがとうございます」
「うーん? わらわは何もしておらんが、佐藤の助けになったのなら良かったのじゃ!」
本当に何も分かっていなさそうだけど、満面の笑みを浮かべて喜んでくれているヤトさん。
事が上手く進んだのは、ドラゴンの姿を見て完全に萎縮してくれたためであり、本当にヤトさんのお陰なんだけどね。
それからジャバルさんたちを倉庫に残したまま、私たちは外で待たせているゴさんたちにも成り行きを説明した。
ついさっきまで敵だったリザードマンと仲良くしろとは言わないけど、無駄に争う必要がなくなったことは、ゴさんたちにとっても良いことのはず。
「なるほど! リザードマンたちにも、俺たちと同じく農業を教えることにしたのか! 佐藤さんは本物の聖人だな!」
「そんな大層なものじゃありません。打算で動いていますし、仲良く過ごせた方がいいという考えの下でやっているだけですから」
「とりあえず、巨人族の長として異論はねぇぞ! 捕らえたリザードマンたちも、帰すなら帰してやってくれ!」
「大丈夫ですかね? 他の皆さんから反発はありませんか?」
「これまでリザードマンに怪我を負わされた奴らは、良い気はしないだろうが、戦死者は出していないからな! 文句を言ってきた奴がいたら、俺が直々にぶっ飛ばす!」
「それは可哀そうなのでやめてあげてください!」
「がっはっは、冗談だ! 被害でいえば、リザードマンの方が明らかに大きいから、こっちの心配はねぇよ! 本当に収まりがつくのかは心配ではあるけどな!」
ゴさんの話を聞く限りでは、巨人族の皆さんについては大丈夫そう。
リザードマンの村の人々が納得するかについては、私も心配している部分ではあるけど……ジャバルさんが上手くやってくれるはずだ。
「そこは、私の提案に乗ってくれたジャバルさんを信じたいと思います。それでは、拘束を解いてしまいますね」
「おう! 佐藤さん、襲われないようにだけは気をつけろよ!」
「ん、んー……し、信じます」
怯みそうになったくらいにはビビったものの、私が信じないと始まらないからね。
許可をもらえたことだし、私は再び倉庫の中へと戻り、ジャバルさんたちの拘束を解いてあげることにした。
「許可をもらえましたので、拘束を解きますね。ここからリザードマンの村への帰り道は分かりますか?」
「ああ、それは大丈夫だが……俺たちをここで解放していいのか?」
「はい。ジャバルさんを信頼していますので」
そう言いながら、私はジャバルさんの縄を解いてあげた。
それからリザードマン全員の拘束を解き、倉庫から出ていくのを見守る。
「サトーさん、この恩は忘れない。方針が決まり次第、すぐに報告したいのだが、どうしたらいい?」
「ゴさんに伝えてもらうことはできますか? ゴさんなら、私と連絡を取る方法を知っていると思いますので」
「ん? 俺か!? まぁいいけどよ! リザードマンとの仲介役を担うってのは変な感じだぜ!」
「巨人族の皆も解放を許可してくれてありがとう。裏切らないことを誓う」
「そうしてくれるとありがてぇ! 人となりを知っちまったからにゃ、戦うのは気が引けるからな!」
ジャバルさんはゴさんと握手を交わしてから、ティーブレイク方面へと去っていった。
これにて一件落着ではあるんだけど、ジャバルさん次第では状況が変化するため、私は信じることしかできない。
願わくば、巨人族とリザードマン族が手を取り合えることを祈りつつ、私もヤトさんと一緒に村へ帰るとしようかな。





