第466話 お祭りの季節
想定外の騒動に巻き込まれながらも、何とか無事に別荘へと帰ってくることができた。
ヤトさんは、私が場を収めたことがよほど凄く映ったようで、村の人々に自慢するように話していた。
話を大盛りに盛っていることもあり、私には恥ずかしいという感情しかなく、逃げ隠れるような日々を送っている。
RPGは大好きだったし、漠然と勇者や英雄に憧れは持っていたけど、キャーキャー言われる生活は私には絶対に無理だ。
圧倒的な承認欲求と高い自己肯定感を持ち合わせていないと、絶対に恥ずかしさで悶絶する日々を送ることになると思う。
そう考えると、勇者や英雄には戦いの強さ以外にも才能が必要なのだと、今回の件で変な学びを得た。
……と、くだらない私の話は置いておいて、巨人族とリザードマン族の抗争に巻き込まれるという大事件のせいで薄れかけていたけど、すでに夏を感じ始めている季節。
毎年恒例の縁日も差し迫っており、色々と留守にしていた分の農作業を取り返す間もなく、縁日の準備が始まる。
フォーマットはできつつあるものの、まだ停滞させたくはないという思いもあるため、私は一人で案出しを行うことにした。
ありがたいことに村の規模が大きくなっているため、できることは確実に増えているからね。
縁日を思い返しながら、今年重点的に行いたいことを挙げてみる。
まずは……お神輿かな。
神輿の製作が大変なことに加え、宗教文化が日本とは違うこともあり、これまで手を出さなかったものではあるけど、神輿上げは盛り上がる催しになる。
神輿ではなく、ゲーム要素を加えて別の競技にしてしまうのも面白そうだと思っている。
次は花火。
去年も行い、大盛況だった打ち上げ花火。
とはいえ、様々な日本のお祭りを見てきた私から言わせてもらうと、物足りない部分があった。
今年は去年の段階から花火製作を頼んでおり、更にシャノンさんに協力を仰ぎ、魔法を組み合わせた花火も計画している最中だ。
花火に関しては、既にやることが決まっているものだけど……凄く楽しみである。
そして最後は、やはり屋台だろう。
例年でも充分すぎるほどの屋台が並んでいたけど、今年は更に数を増やしたいと思っている。
異世界ならではの屋台はもちろん、日本の定番から少し外れた屋台も行うことを画策中。
どれくらいの人が来場してくれるかは分からないけど、最大規模の大きなお祭りを予定している。
「あっ、佐藤さん! 先ほど王都から手紙が届きました。この色合い的に、緊急の要件ではないでしょうか?」
リビングで黄金酒をチビチビと飲みながら縁日について考えていたところ、シーラさんが督促状のような色合いの手紙を持ってきてくれた。
差出人はレティシアさんであり、何でもありえるため、要件について一気に見当がつかなくなる。
「レティシアさんからの手紙ですね。一体どんな内容でしょうか」
「全く見当もつきません。佐藤さん、読んでみてください」
私はすぐに手紙の封を破り、読んでみることにした。
書かれていた内容は、お祭りの件についてだった。
今年も去年と同じように、王都で参加者の募集をかけてもらっている。
押しかけられてもパンクするのは目に見えているし、馬車の総数も決まっているからね。
そして手紙には、応募者の数が想定の五倍ほど集まっていることが記載されていた。
去年よりも増えるだろうと思い、去年の応募者の倍を想定して動いていたんだけど、まさかその更に五倍もの応募が来てしまったらしい。
嬉しい悲鳴ではあるんだけど、さすがに想定を超えすぎている。
督促状のような色合いの手紙を送ってきたのも納得だし、早めに動かないと収拾がつかなくなってしまう。
「佐藤さん、どんな内容だったんですか?」
「縁日の参加希望者が、想定の五倍ほど多いらしいです。受付もパンク寸前とのことで、どう対応するべきかを尋ねる手紙でした」
「想定の五倍ですか? 確か、余裕を持って想定していたんですよね?」
「はい。余裕を持って想定した数の五倍らしいです」
シーラさんも愕然としており、ここまでの規模になってしまうことは想像もできていなかった。
去年のお祭りも大好評だったし、口コミが広がった結果なのだと思う。
どうするかだけど……一番無難なのは抽選だ。
模擬戦大会の時は早い者勝ちにしたけど、数も数だし、今回は抽選が無難だと思う。
もう一つは、参加費用を徴収すること。
去年までは無料での開催だったけど、お金がかかるとなれば、ちょうどいい人数まで減るはず。
必然的に民度も上がる気もするし、悪くはない手だと思っている。
そしてもう一つは、開催場所を王都に変えること。
街の規模も非常に大きく、宿泊場所も充実していながら、交通面でも困らない。
一番無難な案ではあるんだけど、ここを盛り上げるためのお祭りを王都で開催するのは、本末転倒もいいところ。
そうなってくると、抽選にするか、有料にするかの二択だろうなぁ。
「どう対応するんですか? 作戦が思いついていないのであれば、私も一緒に考えます!」
「シーラさん、ありがとうございます。候補は二つ思い浮かんでいまして、完全にランダムな抽選で決めるか、お金を取って開催するかを考えていますね」
「あー、どちらもいいですね。私は有料にするのがいいのではないかと思います。選別する形にはなってしまいますが、お金を払ってでも来たいという方に来てもらう方がいいなと思いますね」
シーラさんの意見はごもっとも。
私も、お金を払ってでも来たい方を呼びたいけど、有料にするということは責任が発生する。
これまでは無料だったから、細かいミスが許されていたけど、お金を取る以上はしっかりしないといけないからね。
楽しませることも大前提になるし、その分プレッシャーも大きくなる。
うーん……これは本当に悩ましい決断だなぁ。





