第464話 平和な解決
巨人族の村にやってきた私たちは、使われていない大きな倉庫のような場所へ、リザードマンたちに入ってもらうよう促した。
リーダーであるジャバルさん以外は戦々恐々としている様子で、殺されるのではないかと疑っているようだった。
「ここからは佐藤さんに一任するぜ! どんな判断を下しても、俺たちは何の異論も唱えねぇ! ただ、リザードマン側につくってのだけはやめてくれよ!」
「任せてくださり、ありがとうございます。そんなことはしないので安心してください」
「それなら安心だ! じゃあ、終わったら呼んでくれ!」
ゴさんと暫定指揮官のボさんが退出し、私と、いつの間にか人型の姿に戻っていたヤトさんだけが残された。
ヤトさんが不安そうにしているのを見て、私も若干不安になってくるけど、リザードマンたちに反逆の意思はなさそうだから大丈夫なはず。
「それでは改めまして、私は佐藤と言います。そして、こちらが龍族の王の娘であるヤトさんです。ジャバルさん、通訳をお願いしてもいいですか?」
「わらわがヤトなのじゃ!」
私たちの自己紹介を通訳してくれているようで、ジャバルさんは先ほどのモスキート音のような甲高い声を発してくれている。
自己紹介が伝わったところで、リザードマンたちから色々と聞き出させてもらおう。
「それでは色々と質問をさせて頂きます。まずは……リザードマンと巨人族が争っている理由を教えてもらえますか?」
「理由も知らずに止めたのか? よく巨人族が許してくれたな。……ティーブレイクの食料を取り合うためだ。年々漁獲量が減ってきていて、それに伴って巨人族との争いが激化していった」
争いの理由は知っていたけど、巨人族側との認識にズレがあったら大変なため、あえて尋ねさせてもらった。
戦いたいから戦っているとか、気に入らないからといった理由だったら困ったけど、巨人族側と同じく食料難が理由でひとまず一安心。
「やはり食料難が理由だったんですね。ちなみにリザードマンは、魚しか食べられなかったりしますか?」
「いや、肉も食べる。……が、長年ティーブレイクの魚しか食べていなかったこともあり、陸地の獲物を狩る技術がない」
「なるほど。果実や山菜などは食べないんですかね?」
「食べないこともないが、収穫量のわりに腹も膨れないから、よほどのことがない限りは採らないな」
ほとんど巨人族側と同じ理由で困っているということが分かった。
私はリザードマンとの確執はないし、これまで巨人族とどんな争いをしてきたのかも分からないけど……どちらも良い未来へ進めばいいと思っている。
「食べられないというわけではないんですね。もう一つ質問させて頂きますが、リザードマンの総人口はどれくらいなんでしょうか?」
「大雑把になってしまうが、100人から150人前後だ。昔はもっと多かったようだが、食料難の影響もあって、最近は子どもを作らないという意識が強くなり、減ってきた」
人口の総数も巨人族の方々と同じくらい。
ゴさんの話によれば、他の国にも巨人族はいるみたいだけどね。
数千に及ぶなら考えものだったけど、150人前後であれば農業で救えそうな感じがある。
なんなら、全員に移住してもらってもいいとすら思っている。
「ジャバルさん、質問に答えて頂きありがとうございました。ここから、今後のリザードマンの処遇についてお話ししたいと思います」
「ようやくか。どんな条件でも呑む心の準備はできている」
「価値観によってはどう受け取られるか分かりませんが、酷い提案をするつもりはありません。まず一つ。巨人族の皆さんに、私から農業を教えました。まだ始めたばかりですが、土地的な部分も考えれば、自給自足の手助けにはなると思っています。リザードマンの方々にも農業を行ってもらうこと。それが一つ目の提案ですね」
湖の魚の量が減っているのが原因とのことだったけど、巨人族もリザードマン族もお互いに農業を行えば、それを補うことができるはず。
更に漁獲量を減らせば、魚の数も自然と増えていくだろうし、将来的に見てこの付近で暮らしていくのであれば、この選択がベストだと思っている。
「サトーが教えてくれるというのか……? サトーに何のメリットがある?」
「メリットですか? リザードマンの皆さんと友好関係を築ける、ということですかね?」
「それはメリットなのか?」
「大きなメリットですよ。それで二つ目の提案ですが、リザードマンごと、私の暮らしている村に移住することです。150人前後が住む家を建てるために協力はしてもらいますが、仕事もご飯もお金も保証します」
「……ん? もしかしてサトーは国王なのか?」
「そんな大層なものではありません。小さな村を仕切っている……ような感じですかね」
仕切っているというほどではないけど、この説明が一番分かりやすいはず。
とりあえず、私が思いついた案としてはこの2つ。
言語が扱えないとなれば、農業を教えることもままならなかっただろうし、ジャバルさんの存在は非常に大きい。
それに、魚や肉以外も食べられると知れたことで、はっきりと何とかできるという光明が見えた瞬間だった。





