#69 ハッピーエンドはありえない
前回までのあらすじ
悪魔のしりとり、開幕・・・!
あの修行を経て、マリアもネロも明らかに強くなっている。マリアは敵の気配を読み、近接遠距離どちらの攻撃にも対応できるようになった。ネロも魔力調整を少しずつできるようになり、カズの話によれば見えない力を隠し持っているとか・・・
それに比べて私は、物や人を癒やすことと怒りに身を任せて暴走することしかできないどうしようもないヤツだ。回復役としてしか、あいつらの役に立つことができない。現に私は、誰1人敵を倒していない。ズィーヴェンとアハトもマリアが1人で倒した・・・私はほとんど何もしていない。
認めるしかないんだ。私は、あの4人の中で圧倒的に弱い。だからせいぜいあいつらの足を引っ張らないように、マリアがカズと合流できるように、振る舞うしかない。プライドなんて知ったことか、弱いくせに強ぶる自意識過剰なヤツよりは遙かにマシだ。
そうだろ、カーミル師匠?
ユイ「・・・はぁ。もういいかな、時間稼ぎ」
ドライ「おい、次はお前だぞ。『精神病棟』の『う』だ・・・」
ユイ「なぁ、お前の名前なんだっけ、ドライって言ったっけ?」
ドライ「あぁ、そうだけど?」
ユイ「ドライさぁ、これって今なにしてるんだっけ」
ドライ「何って・・・しりとりだろうが。正確には『食べられないものしりとり』だろうが」
ユイ「そうだな、そうだよな。ところでドライ、お前の嫌いなもの・・・嫌いなことかな、なんだっけ?」
ドライ「俺の嫌いなこと・・・簡単だ、群れること」
ユイ「ほー。じゃあ私とお前は2人でしりとりをしているわけだが、それって少なからずお前も群れてるってことにならないか?」
ドライ「・・・あ?」
ユイ「群れるの嫌い、とか言っときながらしりとりをして、挙句の果てに『それは食べられるものだ』だの『食べられないものの定義』だの、色々と私と言い合ってたよな?」
ドライ「群れている・・・俺が・・・?」
ユイ「群れるのが嫌いなくせに、お前の群れているヤツの1人なんだよ」
ドライ「・・・お、俺は群れるのが嫌い・・・、群れているヤツらを見るのも嫌い・・・」
ドライ「でも・・・俺も群れている・・・?群れるのが嫌いなのに群れている・・・?」
ユイ「そうだ、お前は群れるのが嫌いなくせに群れている・・・口だけ達者なただの半端者だ」
ドライ「群れるのが嫌いなのに群れている群れるのが嫌いなのに群れている群れるのが嫌いなのに群れている群れるのが嫌いなのに群れている群れるのが嫌いなのに群れている・・・」
ドライ「あああああああああああああああ!!!!!!(頭を抱える)」
ユイ「・・・今だ。『浄化の雷撃』!(ドライに電撃を放つ)」
ドライ「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
ドライ「しま・・・った・・・(気絶)」
ユイ「はぁ、勝ったか」
ユイ「結局私は、こうやって人の弱みを握ることしかできないんだな。得意なのは不意打ちと悪口。まったく、情けなさすぎて泣けてくる」
ユイ「・・・とりあえず反省は後だ。今はあいつらと合流することが最優先だしな。ま、回復役なんていなくても、こんなしょーもねぇ盗賊相手なら怪我することもねぇし大丈夫だろうけど―――」
22:00(ロードレイジ流星群まであと1時間30分)
ヘルバラード・マウンテン 標高1250m地点
マリア「そろそろ山頂ですわね・・・」
ネロ「残る敵はあと2人か。最初に挨拶しにきたアインとかいう男と・・・」
カズ「痴漢冤罪を演出した挙句に俺の財布を盗んだノインとかいう憎きクソ女だな」
マリア「・・・根に持ってますのね」
カズ「そら持つよ当たり前だろ」
ネロ「器が小さいぞカズ殿。もっと大きな器を持つのだ、ミラノ風ドリアの器くらいの」
カズ「器が大きいのハードル低すぎひん?」
マリア「そうですわ、大きい器というのはエスカルゴのオーブン焼きの器くらいのことを指すのですわ」
カズ「あちゃあ、もっと小さくなっちゃったよ」
ネロ「じゃあ、オカザキ冬のパン祭りでもらえる皿くらいの大きさで」
カズ「・・・あぁじゃあもうそれでいいや(投げやり)」
マリア「パンのお祭りで・・・皿がもらえるんですの?」
カズ「あぁお前は金持ちのお嬢様だからパンについてくるシールを集めて応募してもらえる庶民御用達の皿なんて知ってるわけねぇよなぁ!!(突然の激怒)」
マリア「・・・何をそんなにムキになってますの?」
ネロ「そういうとこやで、カズ殿(達観)」
カズ「・・・もういいや」
ヘルバラード・マウンテン 山頂
ネロ「あっ、見ろあそこの立て看板!山頂って書いてあるぞ!到着だ!!」
マリア「はぁ~~やっと着きましたわ~!」
ネロ「おお、あそこにあるのはミズキ殿が言っていた聖杯ではないのか!?(発見と報告)」
マリア「恐らくそうですわね。そしてその聖杯の前に立っているあの男・・・」
カズ「あぁ、ラスボスがお待ちのようだ」
アイン「・・・まったく、お前たちがここに辿り着くだなんて思ってもいなかった。お前たちの力を見くびっていたようだ。謝罪しよう」
マリア「悪者に謝罪されても何も嬉しくないですわ。さぁ、あなたも痛い目を前にさっさと降伏なさい?」
アイン「ふっ、笑止。この私を我が弟たちと一緒にしてもらっては困るな。なんたって私には、強力な切り札があるのだからな」
カズ「・・・その強力な切り札ってのはもしかして、俺たちの背後の死角に潜んでる女のことか?」
アイン「・・・っ!」
ノイン「あちゃ~、やっぱバレてたか~(姿を現わす)」
ネロ「あぁっ、君は昨日カズ殿に痴漢された子だな!」
カズ「しつけぇな冤罪だっつってんだろうが!!」
アイン「我が妹、ノインの潜伏に気がつくとは・・・お前、ただ者ではないな」
カズ「バーカ、この程度の潜伏だったらマリアとネロでも気付くっての。そうだろ?」
マリア「当然でして」
ネロ「わからん!!!(威風堂々)」
カズ「あっ、そう・・・ごめん」
ノイン「やあ、久しぶりだね。痴漢魔くん」
アイン「なんだノイン、この男を知っているのか?」
カズ「あぁ、昨日ぶりだな窃盗女・・・俺の財布捨てたりしてねぇだろうなぁ?」
ノイン「まさか、アタシがそんなことするわけないだろう?アンタのしょーもない財布は、ちゃんとゴミ箱に保管してあるよ!」
カズ「それ保管じゃなくて廃棄だよね。ゴミの日には消失してしまうやつだよね」
アイン「ノイン、戯れ言はその辺にしておけ」
ノイン「は~い」
カズ「にしても、この窃盗女がお前の切り札とは・・・さしずめ、お前の右腕といったところか?」
アイン「そうだ。ノインは我が兄弟の9番目・・・つまり末っ子だが、私と同じくらいの身体能力および強力な能力を持っている。お前たちがこれまで戦ってきた相手とは訳が違うぞ」
ノイン「そーゆーこと!どんだけアンタたちが強くてもアタシたちには敵わないってワケよ!」
マリア「あらあら、随分と余裕がおありなんですのね」
ノイン「そうよ、余裕しかないわ!」
ネロ「強気なのは大いに結構。しかしその慢心が身を滅ぼすことになるのだぞ」
カズ「おぉ、ネロにしちゃあ珍しく正論を言うじゃねぇか。その通り、お前らは今から己の慢心に倒れるんだ」
アイン「ふっ、せいぜい失望させてくれるなよ。準備はいいか、ノイン」
ノイン「OK、誰から倒す?」
アイン「とりあえず、あの男からだ。もっとも厄介だろうからな」
ノイン「だと思った!」
カズ「・・・!?」
カズ「・・・っ、おいお前ら」
アイン「ん、なんだ?」
カズ「その・・・ノインの後ろにいるそいつも・・・お前らの仲間か?」
アイン「!?」
ノイン「なに言ってんの?あ、さてはデタラメ言ってアタシを騙そうとしてるね!?残念だけど、アタシにそんな手は通じな・・・」
アイン「ノインっ・・・避けろっっ!!!!」
ノイン「えっ・・・」
カズ「・・・っ馬鹿野郎!!!(ノインを押し飛ばす)」
俺がノインの身体を押し飛ばした時にはもう遅かった。ノインの背後にいる黒い影に気付いた時点で、俺はすぐに動けばよかった。そうすれば、俺は刃で心臓を貫かれることにはならなかったのに・・・
俺は悟った、もう助からないと。そんな中、最期に俺はマリアとネロが俺の名前を叫ぶのを聞いた。その声が、未だに俺の耳から離れない―――
ちょっちシリアス




