#68 脱兎九族⑥[自己犠牲のこゝろ]
前回までのあらすじ
中二病は尊い
20:30(ロードレイジ流星群まであと3時間)
ヘルバラード・マウンテン 標高800m地点
マリア「・・・あら、あそこに誰か倒れていますわね」
ゼクス「あっ、フィーアお姉ちゃん!」
マリア「あぁ、あれが治療のできるあなたのお姉さんでしたのね」
マリア(・・・ということは、カズさんたちは彼女を倒してここより先に進んでいるんですのね。さすが、早いですわ)
ゼクス「フィーアお姉ちゃん、大丈夫!?」
フィーア「・・・ん、あれゼクスやんか。どうしてここに?」
ゼクス「あ、あのね・・・私の怪我を治してほしくて・・・」
フィーア「あら~右足を撃たれたんか、かわいそうに~。ほな、治したろ」
フィーア「『精密手術』」
[フィーアの回復呪文:『精密手術』!ゼクスの右足の怪我が癒やされていく!]
フィーア「どうや、まだ痛む?」
ゼクス「ううん、もう大丈夫!ありがとうフィーアお姉ちゃん!」
フィーア「それにしても、こんな怪我して1人でここまでよう来れたなぁ」
ゼクス「えっ、違うよ?途中までおぶってもらったの!こちらの我が盟友、マリアさんに・・・」
マリア<こつぜん>
フィーア「・・・誰もおらんけど?」
ゼクス「・・・え、あれっ?マリアさん・・・どこに・・・?」
フィーア「アンタをウチに任せて、先を急いだんやろなぁ」
ゼクス「そんな・・・まだお別れも言ってないのに・・・」
フィーア「それほど、伝説の聖杯を手に入れたいんやない?」
ゼクス「マリアさんも・・・!?あの人は、聖杯を手に入れてどうする気なんだろう?」
フィーア「さぁ?まぁ、ウチの可愛い妹をここまでおぶってきてくれた人やねんから、少なくとも悪いことに使おうとはしてないと思うよ?」
フィーア「ウチらのお父さんと違って・・・な?」
ゼクス「そう・・・だよね・・・」
フィーア「じゃ、ウチはちょっと寝るから」
ゼクス「えっ、追わないの?」
フィーア「どうせアイン兄ぃがおるから大丈夫やろ?それに、さっきの戦いでごっつ疲れたしなぁ」
ゼクス「そっか・・・ところでフィーアお姉ちゃんはどうやってやられたの?いつも通り相手の魔力を使えなくしてたんでしょ?」
フィーア「ん、ウチか?う~んたしかに魔力を使えなくしてたんやけどな・・・」
フィーア「それが効かんかってん。金髪の魔法使いの子が突然、背後から幽霊みたいなのを出してきてな・・・その幽霊みたいなのにそっと手套されて気絶してしまったんよ―――」
ゼクス「幽霊・・・みたいなの?」
フィーア「うん・・・名前みたいなの叫んでたなぁ。たしか・・・」
フィーア「『ハングリー・サーヴァント』・・・やったかな?」
20:30(ロードレイジ流星群まであと3時間)
ヘルバラード・マウンテン 標高920m地点
カズ「『ハングリー・サーヴァント』・・・?」
ネロ「うむ、私の中に眠る精霊の名だ。ジャスティス殿との修行の時に召喚できるようになってな!」
カズ「どんな修行したら精霊を召喚できるようになるんだよ・・・」
ネロ「どんなって・・・我慢を続けていただけだが?」
カズ「我慢を続ける・・・あぁそうか、お前の修行のコンセプトは『自分を抑える』ことだったな。で、我慢のしすぎで精霊を召喚できる境地に辿りつけたと・・・」
ネロ「そういうことだ。私の我慢が限界に達した時に、召喚できるのだ!」
カズ「なるほど。あのフィーアとかいう女に魔力を制限されたことにより生じた、魔法が使えない状況への我慢が動機だったのか」
ネロ「その通り、魔力を制限されていなければ召喚することはできなかった!」
カズ「・・・」
ジャスティス<ネロ君の場合、我慢できなくなったら覚醒するぞ!>
ジャスティス<覚醒したら、我慢の反動から来る驚異的な力が彼女から湧き出るぞ!>
カズ「・・・そういうことね」
カズ「我慢しなければ召喚できないというのは面倒だが、それはお前の魔力調整が前よりも上達したということ。今更だけど、強くなったな」
ネロ「ふっ、カズ殿のおかげだよ」
カズ「頼りにしてるぜ、ネロ」
ネロ「こちらこそだ、カズ殿・・・ん、後ろから足音が!」
カズ「っ、敵か!?」
マリア「・・・だ、誰が敵ですって、わたくしですわよ」
ネロ「おぉマリア殿!よくぞ無事で!」
マリア「はぁ・・・はぁ・・・やっと合流できましたわ・・・」
カズ「よかった・・・ところでマリア、ユイはどうした?」
マリア「それが、敵の襲撃を受けて2手に分断されてしまって・・・」
カズ「なんだと、それじゃあユイはまだ俺たちよりも後ろに?」
マリア「えぇ。相手は群れを異常なまでに嫌うくせ者・・・恐らく壮絶な戦いを繰り広げていると思われますわ―――」
20:30(ロードレイジ流星群まであと3時間)
ヘルバラード・マウンテン 標高590m地点
ユイ「―――支配者の聖杯」
ドライ「・・・異形の使徒」
ユイ「と・・・トイレットペーパー」
ドライ「あぁ、それ食えるだろ」
ユイ「本来食うものじゃねぇからいいんだよ」
ドライ「『食べられないものしりとり』だろうが、食べることができるものは条件を満たしていないから無効だ」
ユイ「食べられないものしりとり』は言い換えると『食べ物じゃないものしりとり』だ。食べられる食べられうるとかそういうことじゃねぇんだよ。『食べ物』じゃなかったらそれは有効なんだよ」
ドライ「はぁ、自分に有利になるローカルルールばっかり持ち出しやがってよぉ・・・じゃあトイレットペーパーを食べ物と定義することも許されねぇってのかぁ?」
ユイ「定義付けも何もトイレットペーパーは食べ物じゃないっていう定義のもとにこの世界は成り立ってんだよバカ!」
ドライ「どこにそんな証拠がある、それもお前の勝手な妄想なんじゃないのか?」
ユイ「んなこと言ったらさっきお前が言った『異形の使徒』ってなんだよ!食べ物か食べ物じゃないのかをさておき、『異形の使徒』ってそもそもなんだよ!そんな訳のわからねぇ単語のほうが無効だよ!!」
ドライ「異形の使徒とは、俺の妹ことだ・・・」
ユイ「ほう、ということは人間だな。じゃあ人間なら食えるよなぁ!?じゃあ無効だ!その単語は有効ではない!!!」
ドライ「・・・駄目だ、妹は食べ物ではない。もうちょっと常識というものを考えろお前」
ユイ「トイレットペーパーを食べ物とか言い出すヤツに常識を説かれたくねぇよこのサイコパスが!!!」
マリアの言う通り、崖下に落ちていったユイとリリーエンド・ドライは壮絶な戦いを繰り広げていた。壮絶な戦い・・・といっても、やっていることは「食べられないものしりとり」なのだが。
ユイとマリアが興じていた「食べられないものしりとり」にドライが介入してきたことから始まり、崖に落ちてからというものの「しりとりの決着をつけないままお前と戦うのは気持ちが悪い」という理由で、前哨戦の勝者を決めるためにしりとりを続けているのだ。
しかしユイにとっては、しりとりの勝敗などどうでもよかった。ユイの目的はただ1つ。ドライの足止めをし、マリアをカズたちと合流させるためだ。しりとりで時間稼ぎができるなら安いもんだと、ユイは内心笑っていた。
ユイ(はぁ、長い間しりとりをしているが、マリアは合流できただろうか・・・まぁ、まだだとしてももうじき合流するだろう)
ユイ(ていうか、なんで私はマリアをカズ合流させるために足止めなんてしてるんだろうなぁ。あいつは1人でも十分に強い、別にカズと合流しなくても苦戦するようなことはないはずなんだが・・・まぁ万が一ということもある。念のために複数で行動したほうがリスクは低い、それに・・・)
ユイ「強者を先に進めるための足止めは、パーティ最弱の私の役目だからな・・・」
[『脱兎九族』メンバー紹介]
④リリーエンド・フィーア
性別:女
職業:盗賊
年齢:21
髪型・髪色:ポニーテール・パープル
趣味:ブランコ
特殊能力「ゼロ魔力計画」
相手の魔力を使えなくすることができる。大抵の魔法使いを無力化する強い能力なのに、イレギュラーなネロのせいで活躍の場なくリタイア。
⑥リリーエンド・ゼクス
性別:女
職業:盗賊
年齢:17歳
髪型・髪色:ロング・シルバー
趣味:魔術書の解読
特殊能力「万翼の虚」
翼を自身の姿に模倣する、つまり分身を創り出すことができる。最大13体まで。それぞれ質量を持っており攻撃も可能。分身がいれば1人クリスマスも盛り上がること間違いなし!死にたい!!
③リリーエンド・ドライ
性別:男
職業:盗賊
年齢:22歳
髪型・髪色:ショート・青
趣味:嫌がらせ
特殊能力「???」
トイレットペーパー食べますよね




