#55 追跡の果て、私はアンドロイド・・・
追跡開始より5分経過
カズ「やいてめぇ!待ちやがれ!!!」
ノイン「へっ、待てと言われて待つのはドーベルマンくらいだよ!!」
カズ「ええいドーベルマンになれよお前ぇっ!」
ノイン「・・・なに言ってんだアンタ」
カズ「はぁ・・・はぁ・・・!」
カズ(この女、なんて速さだ。木の枝と枝の間を跳躍して移動するなんて・・・まるで「ニンジャ」だな。めんどくせぇ・・・)
追跡開始より15分経過
先進都市・インダストレージ
ノイン「ふぅ、この街中まで逃げればもう大丈夫だろう」
ノイン「さて、アイツの財布にはいくら入ってんのかねぇ~」
カズ「あぁっ・・・あぁ~っ!!!」
ノイン「はっ!?」
カズ「ぐはぅふぁ~っ・・・あれ、なんで俺はこんなに走ってんだっけぇ・・・俺はなんでぇ・・・」
ノイン「嘘でしょ、もう追いついてきた!?」
カズ「そうだぁ、ダイエットしてたんだっけ、俺・・・。いやもういいし・・・痩せなくていいし・・・糖質制限してるから、ダイエットなんてもうしなくていいし・・・」
ノイン「意識朦朧の中で走ってる・・・、本能でここまで追いついてきたというの!?」
ノイン(このアタシに追いつくなんて・・・相当デキる相手のようね・・・!)
カズ「ちょ、ちょっとそこの人ぉ~、悪いけど俺の腰についてるサウスポー取り外してくれませんかぁ~!?」
ノイン(・・・なんだろう、精神が崩壊しちゃったのかなアイツ)
カズ「いやぁぁぁっっっ右足から血が出てる!出ているよ血がぁ~~!!!死んでしまうパターンのやつやコレいやあぁぁぁ!!!」
子供「ママ-あの人血が出てないのに血が出てるって言ってるよ~?」
母親「コラッ、見ちゃいけません!虫けらが感染するわよ!」
ノイン(ダメだ、なんかかわいそうになってきた)
ノイン(3歳の時から盗賊はじめて早12年・・・盗んだ相手に同情するなという、盗賊としてのポリシーを、私は初めて破ろうとしている・・・!)
カズ「痛っ、いやぁぁ痛ぁぁぁ!!つった、つったつった右足つった痛いぁぁぁ!!!右足が死んでいくのが分かるぅぅぅ!!!」
ノイン「お、おいアンタ・・・足をつった時は無理に動かすんじゃなくて、足先を両手で掴んでだな・・・」
カズ「かかったなアホが!!!(ノインにアームロックをかける)」
ノイン「あんぎゃあぁぁぁ!!!!」
カズ「やっと捕まえたぞこの守銭奴がぁぁぁぁ!!!」
ノイン「ぐげげげげ・・・」
ノイン(な、なんてヤツだ!コイツ・・・最初からアタシを油断させて、近づいたところを捕らえるのが目的だったというの!?)
ノイン(それだけのためにこんな街中で騒ぎたててヤベー奴を演じるとは・・・なんという精神力の持ち主!)
カズ「クソが手間取らせやがって!!女だからって容赦しねぇからな!!痛い目見る前にさっさと財布を出しやがれ!!!」
ノイン「ぐぐぇ・・・わ、わかった!返すからっ、返すから放せ!ギブだギブギブ!!」
カズ「い~やダメだ、放した途端逃げるに決まってる!!この状態でさっさと財布を出せ、コソ泥のお前なら出来るだろお前ならたぶんきっと絶対!!」
ノイン「わ、わかったから・・・せめてもうちょっと力を弱めてくれ・・・」
カズ「弱めたら逃げやすくなるだろうが!!!この強さのままでさっさと財布を・・・」
???「あの~(カズの肩をたたく)」
カズ「あぁ誰だァ!?こちとらいま絶賛取り込み中なんで邪魔しないでもらえ・・・」
警察「警察なんだけども~」
カズ「あっ、警察の人でしたか!ちょうどいい!コイツ俺の財布盗んだ窃盗犯なんですけど、捕まえてもらっていいですか!!?」
警察「窃盗犯ね。はいじゃあ午後2時28分・・・容疑者確保!(カズに手錠をかける)」
カズ「い、いや違っ・・・捕まえるのは俺じゃなくて、こっちの窃盗女だよ!!」
警察「えっそうなの、さっき『痛い目見る前にさっさと財布を出しやがれ』って叫んでたよね。完全にこの女の子から財布をまきあげようとしてたよね?」
カズ「何を言っているんだ警察の人!財布を出せってのはこいつが盗んだ俺の財布のことであってだね・・・!!」
警察「はいはい、話は署で聞くから」
カズ「うぉぉいっ!!!俺は被害者なんだぞ!!被害者を罰してなにが警察だ!!!いいからこの手錠を外せ警察の人!!!」
警察「お嬢さん大丈夫、アームロックかけられてたけど怪我してない?」
ノイン「あ、はぁ・・・大丈夫です」
カズ「おい警察の人!!人の話を聞け!!今は俺とお話しているはずだ!!窃盗犯の心配なんかするな!この正義の味方風情が!!!!クソゴミカス偽善者が!!てめぇ訴えてやるからな!!覚悟しと・・・」
警察「やかましい!!(カズの顔面を殴る)」
カズ「ぐふぇぁあっっ!!!」
ノイン「・・・」
警察「オラッ、黙って歩け!!!」
カズ「うっ、うぅぅ~~~訴えてやるぅ~~!!裁判じゃあ・・・いきなり最高裁で決着つけたるからなぁ~~~このクソボケがぁぁぁ~~~~~!!!!」
ノイン(ダメだ、この人不憫すぎて泣けてきた・・・)
カズ(アカン、疲れた・・・身体的疲労により意識が朦朧としてきた・・・)
???「・・・ちょっと、いいかな」
警察「あ、すみません、いま凶悪な窃盗犯を連行してるところなので用件があるならまた後で・・・」
???「その窃盗犯のことなんだが・・・」
???「私の造ったアンドロイドなので、放してもらっていいかな」
警察「ア、アンドロイド・・・?」
カズ「・・・」
???「うむ、これは男性型奉仕用アンドロイドの試作品なのだが、実験中に暴走してしまってな。まさか人様の財布を盗もうとするなんて・・・どうやら失敗作のようだ。研究所に連れ帰って分解するから、連れていくのはやめていただきたい」
警察「い、いや、肌の質感といい、どう見ても本物の人間じゃないですか・・・。こんなリアルなアンドロイド造れるわけ・・・」
???「おいおい、私を誰だと思っているんだ・・・?」
警察「誰って・・・、ハッ、あ、あんたは!!」
警察「世紀の研究者、『フリージア・ミズキ先生』ではありませんか!」
ミズキ「やっと気付いたのか、世知辛いんじゃないのか君。・・・で、君はこの私にこんなリアルなアンドロイドは造れないと言いたいのか」
警察「いっ、いいえ!とんでもございません!!ミズキ先生は偉大な研究者です!我々の装備している、高い攻撃力を誇る軽量ながら扱いやすいこの革新的な警備用のロッドも、ミズキ先生が提供してくださったものですから!!」
ミズキ「そうだろう、だから放してくれないか。私の造った試作0号機、通称・・・」
ミズキ「クロエ・カズを・・・!」
カズ「・・・!」
警察「はっ、はい!ではこちらのアンドロイドお返しいたします!あ、あのくれぐれも、街中に混乱をもたらすのだけは・・・」
ミズキ「わかっている、今後気をつけるさ。それでは、失礼する」
ミズキ「大丈夫か、カズ」
カズ「・・・はい、大丈夫です」
ミズキ「まったく、数年ぶりに再会したというのに、相変わらず元気のない奴だ。そんなんじゃ女の子に嫌われるぞ、我が弟よ・・・」
俺は完全に忘れていた。先進都市・インダストレージには、会いたくない人ランキング杯ある第1位の実姉、ミズキ姉さんがいることを・・・
窃盗は立派な犯罪です。しかし、冤罪もまた、犯罪なのではないでしょうか




