#54 痴漢が招く冤罪ノベルス
アンダーワールドでの戦いを終え、勇者カズ一行は人口凶魔・シャドウから聞き出した情報をもとに「ミーグマヤチグ群島」へと向かっていた。
ミーグマヤチグ群島、それは魔王の潜む呪われた地。一度足を踏み入れたら最後、生きては帰ってくることは出来ない(諸説あり)
かつて魔王を倒した勇者カズでさえ、島への接近に対し一抹の不安を抱えていた。
カズ(ミーグマヤチグ群島。とある研究の実験中に事故を起こし、足を踏み入れることを禁忌とされた呪いの島・・・)
カズ(話で聞いたことがあるだけで、俺も行ったことはない。事前情報が少ないから、今までのように地の利が生かせない。この3人も強くなったとはいえ、今すぐに乗り込むのはリスクが高いか・・・?)
カズ「なぁお前ら・・・」
ネロ「サーロインステーキ」
ユイ「生地」
マリア「生地て・・・ユイさん、あなた生地をそのまま食べますの?」
ユイ「理論上は食えるからいいんだよ」
マリア「・・・では、ジャンバラヤ」
ネロ「やかん水」
マリア「は、なんですのそれ?」
ネロ「やかんに入った水だが?」
マリア「いや、それただの水ですわよね。やかんをつけただけで乗り切れるとお思いで?」
ネロ「愚か者!たかがやかん水、されどやかん水!貴殿はスポーツマンたちが運動終わりに回し飲みするあの偉大なるやかん水を、そんじょそこらの水と同じ扱いにするのか!?」
マリア「だって、水は水ですし・・・」
ユイ「うんうんわかるぞネロ、あれは普通の水とは別物だ」
マリア「ちょ、ユイさんまで!?」
ネロ「決まりだな!マリア殿、次はやかん水の『ず』だぞ、『ず』!!!」
マリア「そんなぁ~、納得いきませんわ~!!!」
ユイ「んだよ、そんなこと言ったらさっきお前が言った『ジャンバラヤ』とかいうのもグレーだろ。本当にあんのか、そんなもん」
ネロ「たしかに、そんな食べ物聞いたことないな」
マリア「はぁ~っ、これだからワンパターンな料理しか知らない庶民は嫌いですわぁ~!!」
ユイ「んだとコラァ!?(マリアの頬をつねる)」
マリア「いはっ、はひふふんへふほ~!(ユイの頬をつねる)」
ネロ「おお、お2人のほっぺがお餅みたいだぞ!!あ、じゃあ次はお餅の『も』!!」
カズ「・・・」
カズの心配をよそに、緊張感が一切ない少女3人は「食べられるもの縛りしりとり」に興じていた。ちなみにジャンバラヤはパエリアが起源とされる米料理である。やかん水はただの水である。
真剣な勝負に介入するのは無粋と空気を読み、無言のままカズは森林地帯を歩き続ける。すると突然、カズの視界に何かが映る。
カズ「ん、おい、あそこに誰か倒れてるぞ」
ユイ「ビーフストロガノフ」
ネロ「ふ・・・ファントムペイン!」
マリア「なんですのそれ、それこそ聞いたことありませんわよ!」
ユイ「幻肢痛だな。四肢を失えどもその幻想の痛みを噛みしめていくということか・・・、深いな!」
マリア「もはやなんでもありじゃないですの~!」
カズ(うん、ほっとこう)
カズの呼びかけに聞く耳もたず、「食べられるもの縛りしりとり」に拍車をかける少女たち。そんな彼女らを放置して、カズは1人で倒れている人のもとに向かう。
カズ「お~い、大丈夫ですか~?」
安否を問うても返事がない。近づいていくと、そこに倒れているのは小柄な少女であることをカズは確認した。
カズさえ気付かなければ出会うことのなかったこの少女。彼女との出会いが、カズたちを悲劇へと誘うことになるなんて、誰が予想できただろうか・・・
Season5 ~星杯争奪の章~
カズ(息はある、苦しそうな表情でもないから具合が悪いわけではなさそうだ。眠っているだけか?でも、こんな森の中でひとりで・・・危険だなぁ)
カズ「お嬢さん、こんなところで寝てたら危ないですよ~」
少女「・・・」
カズ(仕方無い、声が届かないなら物理でいくしか・・・)
カズ「お~い起きろって(少女の身体を揺さぶる)」
ネロ「な、なにをしているんだカズ殿!?」
カズ「えっ、あぁ来たのかお前ら。いやこんなところで寝てたら危ないから起こそうと・・・」
マリア「きゃ~~痴漢がっ・・・、森の中に痴漢がいますわ~~!!」
ネロ「なんて破廉恥な・・・見損なったぞ!」
カズ「ち、違うぞオイ!俺はただこの子を起こそうとしていただけで・・・」
ユイ「はいはい、痴漢した人はみんなそう言うんだよね。とりあえず事務所まで来てもらおうか」
カズ「おい待て、勝手に話を進めるな!くそっ、いつもそうだ!そうやってお前たちは痴漢容疑の男を差し置いて勝手に話を進めていくんだ!『話を聞くだけだから』って言われて署まで行ったら最後、自白を強要されるこんな世の中で、俺はどう弁明すればいいんだ!!」
マリア「カツ丼、食べます?(カツ丼を差し出す)」
カズ「なぜこの状況を見越したかのようにカツ丼を持ってるんだ?」
マリア「道端に落ちてたので拾ってきたんですわ、ネロさんが」
ネロ「いや~美味しそうだったもんで、つい」
カズ「けっ刑事部長ぉ~!!こ、ここに窃盗犯がいます!!捕まえて・・・とっとと捕まえてください!!」
ユイ「断る。疑わしきは罰せずだからな」
カズ「いやこいつ自分で認めてるから!!美味しそうだったって理由で窃盗したこと認めてるから疑わしきじゃねぇんだよ!疑わしいのはむしろ俺なんだよ!・・・いや、疑わしいことはしてないんだけどさぁ!?」
ネロ「母さんが~土鍋を敷いて~♪」
カズ「取り調べの定番ソングを夕飯準備の歌に改変すんな!」
ネロ「手袋あんでくれた~♪」
カズ「なにっ、改変じゃなかった・・・だと!?とすると、もしかしてお母さん鍋食いながら手袋あんだんけぇワレぇ、えぇ!!?」
少女「あの・・・」
カズ「はっ、やっと起きたか!君、こんなところで寝てると危な・・・」
少女「この男の人にお尻触られました・・・」
カズ「おぎゃ」
3人「・・・」
カズ「や、やい君っ、なんてこと言うんだい!!お、俺は森の中で1人で寝てる君を、危険だから起こそうとして身体を揺さぶっただけなんだよ!!それを何・・・おっ、お尻を触っただなんて、そんなデタラメ・・・や、やめてください!」
マリア「動揺していますわ、決まりですわね・・・」
ネロ「うむ、残念だ・・・」
カズ「おいネロ!お前の解析魔法『トゥルー・ス・リーパ-』で俺のことを見てみろ!俺がそんなことをしてないって分かるはずだから!!」
ネロ「そんな魔法はない」
カズ「嘘だ~!だって結構前スッゲー使ってたじゃん!ブイブイ言わせてたじゃん!」
ネロ「・・・次の質問どうぞ」
カズ「おいコラ誤魔化すな!大臣かお前は!まず俺の質問に答えろ!!」
ユイ「というわけで罪状は『強制わいせつ』・『虚偽申告』・『公務執行妨害』・『四面楚歌』・・・、役満だ」
カズ「ふざけんな、『公務執行妨害』なんてしてねぇだろ!!てか『四面楚歌』は罪状じゃねぇよ、四字熟語だよ!!役満にしたいからって新たな罪状を生み出すな!」
カズ「・・・いや、そもそも『強制わいせつ』もしてねぇし!!!」
カズ「てかアンタ、デタラメなこと言ってねぇでさっさと前言撤回してく・・・」
少女<こつぜん>
カズ「あれ、いなくなってる・・・」
マリア「あら、本当ですわね。どこへ行ったのでしょう?」
ネロ「さぞ、痴漢魔が怖かったのだろう。すごいスピードで走って逃げていったんじゃないのか?」
カズ「あぁそう。まぁ、それならよかったんだけ・・・ん?」
ユイ「どうした、なにかいい遺言でも思いついたか?」
カズ「んな物騒なモン突然思いつかねぇよ。って、あれっ!やっぱりない!!!」
マリア「なにがないんですの?」
カズ「俺の財布・・・」
ネロ「落としたんじゃないのか?」
カズ「いや、チェーンに引っかけてるから落とすわけねぇし・・・」
???「ふんっ、盗まれたことにすら気付いてないなんて・・・アンタ頭弱いんじゃないかい?」
カズ「さ、さっきの女の子の声だ・・・どこにいる!?」
???「アンタのしょっぼい財布は、このリリーエンド・ノイン様がいただいてあげるよ!」
カズ「なにぃ、てめぇいつの間に俺の財布をっ!ていうか、どこにいやがる!」
ネロ「カズ殿、あそこ!例の女の子が木にぶら下がってるぞ!」
カズ「ほんとだ!おいてめぇ返せ俺の財布!!」
ノイン「返してほしかったら捕まえてごらん!!」
カズ「ちくしょうめ!!オイ追うぞお前らァ!!!」
3人「いってらっしゃ~い」
カズ「こんの薄情者どもがぁぁぁぁ!!!!」
謎の少女に財布を取られ、ひとり必死に追いかける勇者カズ。先ほども述べたように、ここからカズの悲劇が始まっていく・・・
痴漢はアカン




