#12 悪者サイドとの"緊張感"の乖離
ユイ・マリア・ネロの3人と出会うより以前のヤーサンバイヤー暦7年、勇者クロエ・カズの手によって世界征服を企てる魔王は討伐された。
・・・はずだったのだが、それから1年経ったある時、魔王軍の残党の影が浮上した。そこから一部の界隈にて、魔王が復活したのではないかという噂が立ち始めた。魔王の名は「チョベリバ」
~ミーグマヤチグ群島 研究施設跡~
チョベリバ「・・・。ハッ、ここは!?」
???「やっと目覚めたか。待ちわびたぞ。おはようチョベリバ」
チョベリバ「お、おはスタ。誰だアンタ」
???「おいおい、実の兄のことすら忘れてしまったのか、弟よ」
チョベリバ(以下:リバ)「兄?ま、まさかアンタは、チョベリグ兄さんなのかい!?」
チョベリグ(以下:リグ)「そうだ、私は混沌より生まれし災厄の魔であり、お前の兄チョベリグだ」
リバ「うわあすごいリグ兄さんだ!いつぶりだろう、560年ぶりくらいかな!?」
リグ「そうだな、魔界で勃発した『第3次暗黒融合炉産ナンキン略奪戦争』でお前と生き別れて以来だな」
リバ「うん。・・・ていうか俺は確か勇者に殺されたはずなんだけど。ま、まさかここは天国!?」
リグ「フッ、俺たちはせいぜい死んでも地獄行きだ。たしかにお前は1度人間界の勇者の手により肉体も精神も滅び朽ちた。だが、私が生き返らせたのだ」
リバ「な、なんだって!?兄さんが生き返らせてくれたのかい!?ありがとう、でも一体どうやって」
リグ「魔界に散らばった『煩悩ボール』を108つ集めて、何でも1つだけ願いを叶えてくれる『煩龍』を召喚し、お前を生き返らせるように願ったのだ」
リバ「煩悩によって生き返ったんか俺」
リグ「まぁ別にいいだろ、生き返ったんだから」
リバ「そうだね、まぁ無事生き返ったところで魔界に帰ろうか」
リグ「この愚弟が!!(殴る)」
リバ「ふべらば!!!な、なにするんだよ!」
リグ「見損なったぞ!お前は人間界を征服するという1度決めた誓いを破るのか!?」
リバ「だってぇ、あの勇者強いんだもん。ほぼ一撃だったんだもん!」
リグ「そんなワンパンで殺されっぱなしで終わるのか?それでいいのか?お前それでも魔王か?悔しくないのか!?」
リバ「・・・悔しいです!」
リグ「悔しいのは誰だってそうだ、だがどうしたいんだ!?」
リバ「・・・勝ちたいです!」
リグ「よく言った、俺が必ず勝たせてやる!そのために、俺はこれからお前を殴る!歯を食いしばれッ!」
リバ「はいっ!!」
それはチョベリグにとって、弟チョベリバとの絆をより深めたいとの願いをから発した行為であった。これは暴力ではない。もし暴力だと呼ぶ者があれば出るところへ出てもいい!チョベリグはそう思っていた。
リグ(なーんてな、勝たせるわけねぇだろ。バカめ。貴様は魔王の座に相応しくない。所詮貴様は捨て駒にすぎんのだよ。1度人間に敗れた貴様は、せいぜい俺の糧になるのが関の山だ。
利用させてもらうぞ、元魔王の愚弟チョベリバよ。我が偉大なる世界征服成就という栄光のために・・・)
闇に潜むとある群島にて、魔王チョベリバと、その兄・チョベリグが暗躍を始めようとしていた。いや、兄は既に動き始めていたのかもしれない。その野望の果てに世界が迎える結末とは何か。
新たな凶魔の予感が、平和な世界を静かに包んでゆく。そんな中、かつて魔王チョベリバを倒した勇者カズとその仲間達は・・・
カズ「はいローーーン!!!四暗刻大三元!!!さらにドラ3!」
ユイ「ちっ、運のいい奴め。私ももうちょっとで純正九蓮宝燈だったのに」
マリア「カズさんのくせに、ダブル役満だなんて生意気ですわ」
ネロ「くそう、私もあと『中』さえ来れば『東西南北中』が揃ったのになぁ」
カズ「いや、そんな役ねーから」
エレクア村の宿屋の雀荘にて、早朝から仲良く麻雀をしていた。
ネロ「なるほど、同じ模様のやつを同時に消せば点がたくさんもらえるのだな」
カズ「なるほどじゃない。お前はまず麻雀のルールを覚えろ」
ユイ「くっ、もう一戦だ勇者!倍プッシュだ!!!」
マリア「わたくしも負けたままでは悔しいですわ!プッシュプッシュですわ!」
カズ「お前らもう持ち点無いじゃん。プッシュするものがねーじゃねぇか。はい、俺の勝ちで終わり終わり」
ユイ「・・・仕方が無い、次負けた場合、何でも1つだけ言うことを聞こう」
マリア「わたくしも、負けたらわたくしの身体を好きにするといいですわ・・・」
カズ「なっ・・・!」
ネロ「おお、2人とも覚悟が違うな!じゃあ私も身体を賭けようではないか!」
カズ「こら、お、お前らそういうことを公の場で大声で言うもんじゃ・・・」
客A「あの男、そういう目的で・・・」
客B「まぁ、こんな朝から不潔な・・・」
客C「ルールも知らない女性に麻雀で勝って言うことを聞かせようだなんて・・・」
客D「最低な男だな。この恥知らずが!」
客H「・・・制裁っ!」
客E「死―ね、死―ね!ハイ!」
客ども「死―ね、死―ね!!」
カズ「うわぁ濡れ衣を着せられた上、シンプルな罵倒の応酬に思わず泣きそうだ。くそう、行くぞお前ら!さっさと魔王の残党を駆逐しに行くぞ!!!」
ユイ「なんだ、逃げるのか!」
マリア「卑怯ですわよ!!お待ちなさい!」
カズ「お前らが変なこと言うからだろうが!!」
ネロ「朝早く
麻雀やって
逃げるカズ」
カズ「お前はどんなタイミングで一句詠んでんだ!しかもとびっきりゴミみてぇな句!!」
勇者カズ一行は逃げるように村を飛び出し、そして再び壮大な世界へと足を踏み入れた。
その旅路に世界の命運が握られていることを、彼らはまだ知る由もなかった。




