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ゆるクエ  作者: おでん信用金庫
Season1 勇者、再始動の章(プロローグ)
12/114

#11 旅の初夜 風穴散らす 枕投げ

前回までのあらすじ


カズは強かった

~エレクア村 宿屋~



マリア「あ~やっとベッドに辿り着けましたわ~!」


ネロ「うむ、長い旅だった」


ユイ「あ~疲れた」


カズ「宿泊代の4Gすら持ってないから、追放した俺に金を借りるためにあとを追ってきたって情けない話だよな。なぁお前ら、そう思うだろ?」


マリア「いいえ、そうとも言えませんわ」


ネロ「そうそう、得るものも大きかったぞ。なんてったって、勇者カズの隠された強さを知ることができたのだからな!!」


カズ「俺からしたら大きな損失です」


ユイ「ったく、そんな力あるのにちまちま隠して弱いアピールしやがって。手を抜こうとするなよ殺すぞ」


カズ「お前どの目線からそんな強気なわけ」


マリア「まぁカズさんが怠惰(たいだ)なのは最初っから知っていましたけれど、まさか実力をひた隠すほど怠惰だとは思ってもいませんでしたわ」


ネロ「勇者たるもの、実力は常に発揮せねばならんぞ」


カズ「はぁ、やれやれ・・・。お前ら、俺が敵と戦うのがめんどうくさいって理由で力を隠してたと思ってんのか」


3人「うん」


カズ「即答かよ。・・・仕方ねぇ。少し、昔話をするか」


3人「zzz」


カズ「おい急に寝るな。昔話をするんだよ、聞くべくして聞くんだよ」


カズ「あれは1年前、魔王軍を倒す旅をしていた頃のことだ・・・」



―――――


―――




 俺は当時、今と同じ4人のパーティで旅をしていた。俺と、僧侶と武闘家と魔法使い、今の俺たちと同じ組み合わせだな。まぁ1つ違うことがあるとしたら、僧侶と魔法使いが男だったってことだな。



 それはそうとして、俺たちは国の精鋭として作られた最強パーティの1つとして魔王討伐に向けて前進していた。




 旅の終盤、俺たちは少々厄介な敵に遭遇した。その名も魔神官(ましんかん)「モラバス」。大抵の敵は数秒で片付けられるのだが、モラバスは違った。俺たちがどんな攻撃を与えても奴にダメージを負わせている手応えがなかったんだ。

 


 時間をかけても体力を消耗するだけだと考えて、俺は本気を出して一気に終わらせようと思ったんだ。すぐさま俺は全力を振り絞って剣を振りかざしモラバスに連撃を与えた。すると、モラバスは紙のようにバラバラとなり、俺たちは勝利した、ように思われたのだが。




 その斬撃の力は思った以上に強力で、モラバス以外の方向にもれた力の余波(よは)が仲間の3人をもバラバラに切り刻んでしまったんだ。


 俺は蘇生魔法(リザレクション)など使えない。蘇生魔法は死んでから12時間以内に行わなければ意味が無いことは知ってるよな。魔神官と戦ったのは人里離れた山奥。教会に行こうにも12時間以内に3人の残骸(ざんがい)を抱えて教会に辿り着くなんてことはどう考えても無理だと悟った。



 俺は自分の力を恨んだ。そして恐怖に思った。仲間すら(あや)めてしまうほどの力を制御できない己に。




 その後、俺は魔王を倒した。だが魔王を倒しても、俺の周りに仲間はいなかった。俺に残されたのは、世界に平和をもたらしたことに対する(わず)かばかりの達成感と、残酷なまでの静寂だけだった。



 俺は国から賞賛された。そしてこれからも、国と民を守るために戦ってほしいと言われた。俺は断った。もし、強い敵に遭遇した時、再び力が暴走してまた仲間を巻き込んでしまうかもしれないと思ったからだ。



 もうこの力を使いたくない。もう誰も失いたくない。その思いで、俺は自分の驚異的な力に(ふた)をした。かつて世界を救ったと賞賛された勇者はもういない。あの勇者カズは死んだ。俺は自分にそう言い聞かせながら過ごしてきたんだ。




―――


―――――



カズ「・・・それなのに、俺は再びお前達という仲間とともに旅をしている。なんとも不思議な話だよ」


ユイ「・・・そうだったのか」


マリア「そうとも知らずに、わたくしたちは勝手なことを・・・」


カズ「いいんだよ、気にしなくて。これは俺の問題だからな。悪かったな、変な空気にしちまって」


カズ「でも、俺は誓う。俺は絶対にお前達を殺したりしない。どれだけ力が制御できなくなったとしても、俺はこの力からお前達を守る」


マリア「・・・カズさん(感涙)」


ユイ「・・・カズ」


カズ「だからみんな、これから敵と戦うときは3人で協力して・・・」



ネロ「嘘だ」



3人「え?」



ネロ「今の勇者カズの話、全部嘘だぞ。私の解析魔法『トゥルー・ス・リーパ-』で見たところ、魔神官モラバスなんてモンスターは存在しないし、勇者カズのパーティの仲間はいずれも健在だ。そして勇者カズの心拍数から、勇者カズの発言は偽りだという解析結果が出たのだ。つまり今の話は全て嘘だぞ」



3人「・・・。」


カズ「あー今日は疲れたなぁ。よし3人とも、今日は早く寝て明日から残党を倒しに・・・」


マリア「カーーーーズーーーーーさーーーーーんーーーーー!?」


カズ「ま、待てマリア!話せば分かる!」


マリア「ちょっと同情して泣きそうになった私の感情を弄んだということですの!?自分が楽をしたいがために!!(発砲)」


カズ「やめろ!こんな狭い部屋で最高機密(グロック)を撃つな!あぶなっあぶない!ぎゃああああちょっとかすった!かすりました!」


ユイ「・・・カズ」


カズ「ぎゃあ少しかすった右足から血が!あああ俺の(ニーニー)がぁぁあぁ!!!!」


ユイ「・・・死んであの世で詫びろッ!!!(カラシニコフを撃つ)」


カズ「ぎゃああああユイてめぇ!ダーノー王国のカラシニコフこっそり持ち帰って来やがったな!あぶねぇあぶねぇ!室内でアサルトライフルはダメだって!!」


ネロ「はっはっは、みんな楽しそうだな!私も混ぜてくれ!!!(発砲)」


カズ「ネロまでグロックを撃つな!ていうかお前、解析魔法を使ったとか言ったけど、もう今日は魔法使えないんじゃなかったのかよ!!」


ネロ「あぁ、いまちょっと休んだからちょっと回復した」


カズ「なんだその都合の良い魔力事情!って分かった、お前ら分かったから!認める、さっきの話は認めた上で謝るから!もう撃つのはやめてくれぇぇぇぇ!!!!」




 ここはエレクア村。つい先ほど経済的制裁措置を解除されたことにより、かつての活気を取り戻した村だ。


 その村の宿屋の一室で阿鼻叫喚の悲鳴と無慈悲な銃声が響き渡る。しばらくして俺は銃弾を避けるのに疲れて、3人は銃弾を避けられるのに疲れて、死んだように眠った。


 明日から俺たちはまた魔王残党軍を殲滅するために旅に出る。それは面倒で倦怠(けんたい)で、でも少し楽しそうだ。この3人と一緒なら。そんな心的根拠もままならないまま、俺は歩き出す。



 俺の名はクロエ・カズ。かつて魔王の手から世界を救った伝説の勇者だ。



Season1 ~勇者、再始動の章~




―――――



???「・・・まったく手間をかけさせる。人間界ごときちっぽけな世界を征服するのに、1度殺されてしまうなんて。まったく愚かな弟だ。だが、もう大丈夫。この兄が来たからには、人間界(ここ)はもう俺たちのものだ。そうだろう、()()()よ」



Season2 ~凶魔襲来の章~



つづく


ここまで読んでくれてありがとう。これからもよろしくね

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