#103 アリスの悲劇⑥[さようなら、アリス]
前回までのあらすじ
ガーベラとの再会
ミリーア診療所
アリス「よかった・・・本当によかった、ガーベラさん・・・!」
ガーベラ「あぁ、君のおかげだ。ありがとうアリス」
アリス「ガーベラさんが無事ってことは、教団がこの街からいなくなったってことですよね!?」
ガーベラ「・・・っ!」
アリス「街のみんなも、元に戻ったんですよね?」
ガーベラ「・・・」
アリス「リーリカさんも、お父さんもお母さんも洗脳から解放されたんですよね!?」
ガーベラ「・・・」
アリス「あの、どうしたんですか。なんで黙っているんですか?」
ガーベラ(・・・)
ガーベラ「アリス、落ち着いて聞いてくれ」
アリス「はい?」
ガーベラ「・・・」
ガーベラ「君のお母さんが、死んだ」
アリス「」
ガーベラ「・・・」
アリス「あっ、ごめんなさい。ぼ~っとして聞いていませんでした。もう1回言ってもらっていいですか?」
ガーベラ「・・・君のお母さんが」
アリス「違う」
ガーベラ「・・・」
アリス「私は最初に、教団がいなくなったのかを聞いたんです。まずはそこから答えてくださいよ」
ガーベラ「・・・奴らは、いなくなった」
アリス「街のみんなは?」
ガーベラ「洗脳が解け、元に戻った」
アリス「リーリカさんは?」
ガーベラ「無事だ」
アリス「お父さんは?」
ガーベラ「無事だ」
アリス「お母さんは?」
ガーベラ「・・・死んだ」
アリス「おい・・・!!!(ガーベラの胸ぐらを掴む)」
ガーベラ「うぐっっ!?」
アリス「そのクソほどつまらねぇ冗談は、教団にやられた負傷が完治していなくて誤って口が滑ったってことにしてやる。本当のことを言えよ・・・!」
ガーベラ「ア、リス・・・!?」
アリス「黙ってねぇでさっさと答えろ!!!」
ガーベラ(どうしたんだアリス・・・急に人が変わったかのように凶暴になった。誰なんだ、君は?)
ガーベラ「・・・」
アリス「ちぃっ・・・!(病室から走り去る)」
ガーベラ「っ、待てアリス!どこへ行くんだ!?」
アリスの家・玄関
アリス「おい、親父!!!」
アリス「・・・いねぇのか、おい!?」
寝室
ジーク「・・・」
アリス「おい、いるんじゃねぇかよ!!いるんならボケっと黙り込んでねぇで返事くらいしろよ!!!」
ジーク「・・・」
アリス「無視かよ。娘が帰ってきたってのに『おかえり』もねぇのかよ」
ジーク「・・・」
アリス「なぁ、母さんはどこにいるんだよ」
ジーク「・・・ここだ」
アリス「ここだって・・・いねぇじゃねぇか。ていうか誰だよ、母さんのベッドの上で寝てるのは。顔の上に紙なんて敷いて、これじゃあ息できねぇじゃねぇかよ」
ジーク「・・・」
アリス「おい誰だか知らねぇけど、そこは母さんのベッドだ。他の誰かが寝ていい所じゃねぇんだぞ!!?」
ジーク「アリス・・・」
アリス「どけって言ってんだよ!!!(紙を剥がす)」
ジーク「・・・」
アリス「・・・あ?」
ジーク「それが、母さんなんだ・・・」
ミレイユ「」
アリス「なんで母さんの顔に紙なんて敷いてんだよ。ったく、ただいま母さん。いま帰ってきたよ」
ミレイユ「」
アリス「おい、起きろよ。いつまで寝てんだよ」
ミレイユ「」
ジーク「・・・やめてくれ」
アリス「腹減ったんだけど、夜飯はまだかよ母さん。なぁ?」
ジーク「やめるんだアリス!!!」
アリス「なんでだよ、お前はもう夜飯を食ったのかもしれねぇけどな、私はずっと寝てて何も食べてねぇんだよ。空腹なめんじゃねぇよ」
ジーク「違う・・・母さんはもう死んだんだ。もう目覚めることはない・・・」
アリス「・・・お前もくだらないことを言うのか」
ジーク「・・・」
アリス「死んでねぇよな、母さん。そう言ってくれよ。どいつもこいつも笑えねぇ冗談しか言ってくれないんだ。もううんざりなんだよ・・・なぁ!!?」
ミレイユ「」
アリス「・・・ふ~ん、そうかい。死んだのか、母さんは。じゃあなんだ、みんな正しいことを言ってたってことか。間違ってたのは、私1人だけだったってことか・・・フフフ」
ジーク「・・・アリス?」
アリス「フフフフハハハ、ハーッハッハッハ・・・!!!」
ジーク「・・・」
アリス「ッハッッハッハ・・・あぁ、あぁ・・・ああぁぁぁぁぁ!!!!」
アリス「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
ようやく耐えきれぬ現実を受け入れたアリスは、間違っていた自分を笑い、そして母親の死に喉が枯れるまで泣き叫んだ。
マーシャ率いる教団は、ミースギナから去った。彼らの洗脳行為の証拠である教会を燃やし、そして罪のないアリスの母親の命を奪って。街の人々は洗脳が解け元に戻ったが、心に深い傷を残すことになった。
その傷が深すぎたアリスは、凶暴な性格を抑えられなくなってしまった。もはや彼女に理性などなく、怒りのままに暴走を続けていた。
周りの人々は、アリスの暴走をマーシャが残した『呪い』だと思い、退魔士の力を借り彼女の心を封じ込めた。呪いでもなんでもない、アリス自身の感情であったとも知らずに。
アリスの心は書き換え続けられた。娘に穏やかになってほしいという、父・ジークの願いのために。もう二度と、人を憎まないように。もう二度と、人を傷つけないように。
アリスは生まれ変わった。惨劇の記憶を片隅に封じ込め、凶暴さは失われたとはいえ、元のアリスには戻らなかった。やがて彼女はアリスという名を捨て、新たに『ネロ・ミカエラ・フェザーライト』という名を背負い生きていくことになった。
アリスは過去を捨て、全ては収束したはずだった。彼女が再び、マーシャと出会うまでは―――
回想、終了




