#101 アリスの悲劇④[マキャベリスト]
前回までのあらすじ
アリスの復讐
商店街・ミリーア診療所
職員「ミリーア所長!」
ミリーア「ん、おかえりなさい。ガーベラは始末できた?」
職員「それが、その・・・ガーベラの家に行ったのですが、誰もいなくて・・・」
ミリーア「いない?じゃあマーシャ様がとっくに回収したんじゃないの。死にかけているようだったから、自分でどこかへ逃げることもできないでしょうし・・・」
???「いいや生きてるよ。うっすらだが、呼吸をしている」
ミリーア「っっ!!?」
職員「誰だ!?」
アリス「・・・どうでもいいだろ、そんなこと」
ミリーア(アリス!?)
職員「た、たしか君は・・・ジークさんとこの娘さんか?」
アリス「・・・」
ミリーア(・・・なぜ再びここに来た。それも、負傷したガーベラを背負って?)
職員「というか、どうして君がガーベラを背負っているんだ!?」
アリス「決まってんだろ、治してもらいにきたんだよ・・・ミリーアさんに」
職員「・・・なに言ってんだクソガキ。所長がわざわざ、マーシャ様に反逆する愚か者を治すとでも思ってんのか!いいからガーベラを俺たちに渡してもらお・・・」
アリス「うるさい(ナイフで職員の腹を刺す)」
職員「ぐぁぁぁぁぁっっっっっ!!!?」
ミリーア「なっ・・・!?」
アリス「さぁミリーアさん、治してもらいますよ。ガーベラさんのこと」
ミリーア(刺した・・・男性の腹を、躊躇することなく刺した・・・!?)
アリス「時間がないんです、急いで治してください」
ミリーア「・・・あなた、誰?」
アリス「誰って、さっきも会ったじゃないですか。アリスですよ、アリス。そんな初対面みたいな反応やめてください、笑えませんから」
ミリーア「えぇ。たしかにさっき、私はアリスちゃんに会った。でも、あなたとは初対面。あなたはアリスちゃんじゃない・・・!」
アリス「なにをわけのわからないことを・・・そういうくださらない御託いいんで、さっさと治してくださいって。何度も言わせないでくれません?」
ミリーア「・・・」
ミリーア(たしかに、見た目も声もアリスちゃんそのもの。でも違う、この子はアリスちゃんじゃない。アリスちゃんに、ガーベラを背負ってここまでくる力も、ナイフで人を刺すこともできるはずがないもの・・・なにこの奇妙な感じ。まるで心が誰かと入れ替わったかのような―――)
アリス「あと10秒にしましょう」
ミリーア「・・・えっ?」
アリス「10秒以内に、ガーベラさんをあなたの治癒魔法で治す。単純でしょう?」
ミリーア「・・・断る、って言ったら?」
アリス「あなたを殺します。ついでに、このまだ生きている職員も」
ミリーア「私を脅そうっていうの!?」
アリス「脅してなんていません。これは『命令』です。命令に背けば殺す、単純なことじゃないですか?」
ミリーア(ほんと誰よ・・・こいつ!!)
アリス「じゃあカウント始めます。10・・・」
ミリーア「ちょ、ちょっと待って!」
アリス「待ちません。9・・・」
ミリーア「ぐっ・・・!」
ミリーア(な、なにを怯えているの私は・・・相手はたかが10歳のガキ、それも女。ナイフを取り上げてさっさと屈服させれば、それで解決するはずなのに。なのに・・・)
アリス「8・・・」
ミリーア(どうして彼女からナイフを奪える気がしないの?どうして私は、こんなにも死の恐怖を感じているの・・・!?)
アリス「7・・・」
ミリーア(・・・わかった。ひとまず彼女の言う通り、ガーベラを治す。その後油断した一瞬の隙を見計らって、彼女からナイフを奪う。それしかない・・・!)
アリス「6・・・」
ミリーア「・・・わかった、治すわ。治すから、ガーベラをベッドに寝かせてもらえる?」
アリス「ありがとうございます(ガーベラをベッドに横たえる)」
ミリーア(今だ・・・!!)
アリス「言っておきますが」
ミリーア「っっ!!?」
アリス「妙なこと、しようなんて思わないでくださいね?たとえば、隙を見計らって私からナイフを取り上げようとか・・・」
ミリーア(よ、読まれている・・・)
アリス「くれぐれも余計なことはしないでください。あなたはただガーベラさんを治せばそれでいい」
ミリーア「・・・」
アリス「そうすれば、誰も死なずに済む。素晴らしいことだとは思いませんか、ミリーアさん?」
ミリーア「・・・はい」
戦意を喪失したミリーアは、アリスの指示に従い己が治癒魔法でガーベラを治した。重体からの治癒ということもあって、目が覚めるまでは多少の時間を要するとの説明を受けたアリスは、ガーベラを診療所で保護してもらうようミリーアに命令した。
ミリーアは静かに頷いた。もし『ガーベラに危害を加えれば殺す』というアリスの無言の圧力を感じたからだ。だから抵抗することもなく、アリスの命令を全うすることにしたのだ。
ガーベラを安全な場所に隠したアリスは、診療所をあとにした。そして、ガーベラからもらった小さなナイフだけを持って教会へと向かった。目覚めぬガーベラの代わりに、マーシャ率いる教団を追い出すために。しかしアリスはこう思っていた。『追い出すだけではぬるい』と。
教団はガーベラを殺そうとしたのだ。そしてあろうことか、死にかけのガーベラを『反逆者』だ『穢らわしい』と、侮辱したのだ。許せるはずがない。教団には、それ相応の報復をしなければ。ガーベラが味わった以上の苦しみを受けさせなければならない。すなわち『死』だ。
アリスは今、教団の人間を1人残らず殺そうとしてるのだ。
ミースギナ教会前
アリス「・・・」
アリス(中から多くの人たちの気配がする。父さんも母さんも、この中にいるんだろうか)
アリス「よくも、ガーベラさんを・・・覚悟しろよ外道共・・・!」
ガーベラへの想いを胸に、アリスは勢いよく教会の扉を開いた。教団の人間を、見つけ次第に殺す。しかしアリスの目は忌まわしき教団の人間よりも、もっと他の光景を捉えた。
教会の中で、ミースギナの人々が大きな輪を作り、手を輪の中心に差し出して下を向いていた。その輪の中心、人々が手を差し出す方向には白い服を着た女性が十字架のようなものに貼り付けられ、手足を拘束されていた。なんとも異様な光景だった。
そしてアリスは、しばらくして気付く。輪の中心で拘束されているのが、自分の母・ミレイユであったことに・・・
不穏な予感




