過去
朝、目が覚めるとそこにはニーナの姿が。またこのパターン!? とはいえ、前のような出来事ではなく、普通に添い寝していただけだったが。まあ、付き合っていて、行為も済ませた僕らとしてはこんなことをされても別に何の問題もないけど。この事が周りに知られると色々と面倒なことになるので、気をつけて欲しいですね、はい。
「マスター。ますたぁ……」
「寝てませんよね、貴方」
「バレましたか」
バレバレでしょ、そりゃ。ロボットですし。スリープ機能はあるにはあるけど、使ってないことはすぐにわかった。直感で。
あんな寝言みたいなことは言うはずがないし。ベタベタすぎるでしょ、展開が。くそっ……あんなので! 萌えましたよ。しょうがないでしょ。かわいいんだから。寝顔とのコンボが炸裂しましたよ、僕にね。
「では、マスター。お着替えの方を」
「いいよ、自分でやるから」
「いえ、私の着替えをお願いします」
「はい?」
どういうことなのでしょうか。ニーナさん。それは。
よく見ると、パンツ一枚のニーナさん。上はノーブラだった。何も着ていない。えぇと……よくわかってるなぁ、ニーナは。僕の趣味が。パンツだけ履いているところがポイントねって、違う。そうじゃない。
「ようするに、僕に着替えさせろと?」
「はい」
「従者のセリフじゃないよね……」
「マスターが好きそうなので」
「……僕を何だと思っているんだい、君は」
「失礼致しました。では……」
「いや、やろう」
「そう来ると思っておりました」
「……なんだろう、この敗北感は」
悔しい! でも興奮しちゃう。着せ替えプレイだと……。そもそも、人に服を着せたことなんてないからどうすればいいのかわからないんだけど。
まあ、その辺はニーナが詳しく教えてくれました。おかげでスムーズに着せることが出来たのだけど……それはそれでつまらない。ので、ニーナのお尻を触ってみる。
「あっ……!」
純白のパンティーの触り心地がまた……格別。ついでに胸も揉んでおこう。やりたい放題である。別にニーナも嫌そうじゃない。
「ま、マスター……朝からそんな」
「そんなこといって、待っていたんでしょ?」
「それは……」
先ほどのお返しである。ここはさらにいたずらを……。
「そう。じゃあ、やめようか?」
「あっ……そんな」
「どうして欲しいのか、言ってごらん?」
「うぅ……マスターはひどいです。その……触ってほしいです」
「どこを?」
「ふぇ? あ、あの……」
「んん~? 聞こえないなぁ?」
まさに鬼畜。鬼畜プレイである。いや、それほどじゃないけどさ。お互いにわかっていてやっているので滑稽なんだけど。それがいいというか。わからないかなぁ、この気持ち。
「……胸とか。お尻とか……です」
「声が小さいけど、まあ許そう。では」
というかもう我慢出来ないだけですけどね。さっさと触りたい。
「ふぁっ……! あっ……んっ……!」
もみもみぃ~。さわさわ。そしてニーナの胸に顔を押し付ける。
「ますたぁ……」
「うん……満足」
状況としては、中途半端に服を着た状態のニーナにそんなことをしていた感じ。下はパンツ全開のまま。上半身ははだけた服。そして黒タイツ。黒タイツがポイントですね。エロさが引き立ちます。忘れないように。誰に言っているんだ、僕は。
朝からそんな感じでニーナといちゃついた僕はギルドに向かうことに。
■ □ ■
ギルドにたどり着くと、何やら騒がしい様子。何かあったのだろうか?
そこにいたのは、ナーシャさん。
「あら、ユークさん」
「ナーシャさん。どうかしたんですか?」
「えぇ。最近、世間を騒がせている殺人事件は知っていますよね」
「はい。無差別殺人でしたっけ?」
「それなのですが……ギルド員が昨日の深夜に被害にあったそうなの」
「えっ……それって」
とうとう一般人だけじゃなく、ギルド員まで……。
「そこで警察と連携して犯人を捉えようって話をしたのだけど……断られちゃいまして」
ギルドと警察の摩擦は今日に始まったことじゃないしなぁ……お互いに癒着や天下りとか……知られたくないことは多いし、仕事を取られちゃっている部分もお互いにある。そういうところから軋轢が生まれたというか。
よって、仲はよくない。トップ同士は有事の際は協力し合うことを話し合っているのだけど、下はそうじゃない。よって、動かないし、動けない。
もちろん、国家レベルの問題が起きた時はそれどころじゃないので一丸となって動くだろうけどね。今回みたいなケースだと互いに協力しあうところまで行かないってわけ。権限の問題もあって、ギルドは動きにくいだろうねぇ。とはいえ、ナーシャさんが黙っているはずもないので独自で動くことは間違いないだろうけど。後でどうとでもする気だろう。
「それで、その犯人を捕まえればいいんですか?」
「そうですね。手伝ってくれますか?」
にっこりと。そりゃぁ、しますよ。他ならぬナーシャさんの頼みですから。……断れないだけですけど。まあ、同じ職場で働く仲間が殺されたとあらば、少しは同情の念もありますか。僕は基本的に他人のことなんてどうでもいいのだけれど。だからといって、まったく無感情ってわけじゃあない。可哀想だなぐらいは思うさ。当然。当たり前だろ?
「それで、被害者に特徴とかは?」
「うーん。あるにはありますね。全員が女性なのと、『死姦』されているってことかしら」
「……死姦」
むごいことをする。殺人的快楽と性的快楽を同時に得たいという人間はマトモな奴ではなさそうだ。性的行為を行っているということは、犯人は男か。……僕にはある一つのことを思い出していた。
それは、自身にも経験のある……それはいい。考えるな。
「一つ、聞いていいですか?」
「どうぞ」
「その被害にあった人たちですが……全員、『魔力』が高かったってことはありますか?」
「魔力? さあ……そこまではちょっとわからないわね。でも、今回被害にあったギルド員はそうよ。それなりの魔力を持っていて、職業は魔術師だったけど」
「やっぱり……」
「何か心当たりでもあるのかしら?」
「いえ。まだそうと決まったわけではありませんし」
出来れば話したくはない。自分の口から。
「そう……まあ、こちらでも人を送るつもりだから。無理はしなくてもいいのよ?」
「わかりました」
最後の言葉は僕の様子に気づいたからだろうか。勘の鋭い人だからなぁ。僕の周りはみんな鋭い人ばかりなのかね……。違う意味で鋭いだけか、カレンとかは。
カレン。駄目だ。意識してしまう。思い出してしまう……あの頃のことを。
■ □ ■
そう、僕があの家にいた頃のことだ。僕がまだ子供の頃……突然、父が彼女を連れてきた。カレンを。
そしてたった一言。『今日からここで暮らすことになった』それだけ。
僕は最初、家族が出来たみたいで嬉しかった。だから、妹として彼女と接したのだった。彼女もそれを受け入れてくれた。妹として彼女は僕に接してくれたのだった。
楽しい時間だった。しかし、そんな時間は長くは続かなかった。
ある日のことだった。突然、父がこういったのだ。
『その女を使って、お前の魔力を高める。言われた通りにしろ』
僕は当然、言われた通りにした。この家では父が絶対だった為だ。
そもそもその『行為』自体がなんなのか。その時の僕にはまったくわからなかったのだから。
それは、セックスだった。性的行為を彼女にすることによって、僕の魔力を彼女から吸い取って高めるというもの。あの家に代々伝わる魔力を高める儀式の一つだった。
彼女は売られて来たのだ。魔力が高かった為に。高額で。別に珍しいことじゃない。奴隷だって普通にいる世界だ。立場的にはそれより遥かにマシだろう。それでも。僕にとっては家族も同然だったのだ。
しかし、その行為に僕は溺れてしまう。当然だろう。年端もいかない子供があんな快楽を覚えてしまっては。夢中だった。毎日のように行為に及んだ。そして、彼女はどんどん汚れていったのだ。魔力を吸い取られて。
そして、僕は途中で気がついたのだ。今までやって来たことの意味に。
僕は逃げ出そうとした。あの家から。二人で。しかし、途中で捕まってしまった。けど、僕はあの儀式を二度と行うつもりはなかった。
僕の魔力は元々の素質があったのか、すでに相当の領域まで来ており、父もそれ以上は必要ないと判断したのか、強要することはなかった。
そしてお払い箱になった彼女の扱いはぞんざいなものだった。飯が食えるだけ有り難いと思え。そんなところだろうか。それを僕は一人で守っていた。
でも、僕はあの家を許せずに出て行った。彼女を……カレンを置いて。理由は二人で外を出ることが許されていなかった。だから僕一人で抜け出すしかなかったのだ。その後、カレンがあの家でどんな目にあったのか。僕は知らない。そういう、最悪の人間なのだ。僕は。
そんな僕を救ってくれたのが、ジェシーで。ニーナで、カミラだ。
僕にとってはみんな大切だ。昔とは違う。カレンは……もちろん、大切なのだけど、そういった昔の事情があって余所余所しいというか。引け目を感じるというか。そんなところだろうか。だから、カレンの好意的な気持ちに答えられないというか。あの時のことを思い出して。カレンは恨んでいないのだろうか。僕のことを。
しかし……僕に吸い取られたというのに、カレンにあれだけの魔力があることに驚いた。まさか……カレンも同じ行為で誰かから魔力を奪ったんじゃないだろうな……ない、と思いたい。が、わからない。カレン自身にそんな気がなくても、あの家ならさらなる実験の為にやりかねない。
それを聞く勇気は僕にはなかった。
「マスター?」
「えっ……あ、いや。なんでもない」
いけない。つい、昔のことを思い出して考えこんでしまった。終わったことだ。無理に思い出す必要はないし、問いただす必要もないだろう。実際、カレンもそこには触れて来なかったじゃないか。それとも、僕が口を開くのを待っているのか? だから。考えるなって。
「ところで、ニーナ。どうすればいいかな」
「そうですね。殺害された女性に付着した体液を採取出来れば、そこからDNAを割り出して判別することが可能ですが」
「それって、相手のDNAがわからないとダメなんじゃ?」
「いえ。全身スキャンである程度の配列はわかります。この町の人間全てをスキャンしていけばいずれ見つかるでしょう」
「……ニーナのいるところじゃ、何も出来ませんね」
「ふふ……」
そうして、犯人探しが始まったのだった。




