第09話「レベル」
自分の能力『ラプラス』を知ってから数週間が経った。
俺はあれから変わった、、、わけではなかった。
ラプラスの能力はこの世界ではあまり使えないことが分かった。
というのもラプラスの能力は表計算ソフトの下位互換であるからだ。
もちろんラプラスにも表計算ソフトと比較していい面もある。
・デバイスが不要であるところ
持ち運び不要である。
なぜなら俺の能力だから。
しかし、今ではスマホでも使えるためそこまで差はないかと感じるが。
・入力が楽である
入力に関してもデバイスで打ち込むよりも楽は楽である。
しかし、自分の認識できる範囲でしかできず、そこに集中するとほかのことはおろそかになってしまう。これは本家と同じである、っていうかもう本家って読んじゃっているけど。
他にはって?
もうないよ!
逆に教えてほしいぐらいだわ。
こんなのExc〇lを使った方が絶対にいいじゃん。
誰でも使えるし、共有できるし、っていうか俺はまだ使えこなせないけど。
おれは誰に対する怒りでもないものをぶつけていた。
英雄「せっかくある能力だからこの能力を使いこなしたいな」
やはりそう思うがいい方法がなかなか思いつかない。
だってそうでしょ。
名前を書いたら死ぬノートがあれば使うでしょ。
指をならしただけで火がでるならもうライターとか持たないでしょ。
俺のラプラスだって使いたい、使いこなしたい!
なんて考えた時代もありました。
人は権力を持つと行使したくなる生き物なんですね。
何とかしてラプラスの能力を使おうと過った方法で使っていたあの頃の俺を殴りたい。
ラプラスの能力で俺はギャンブルにのめり込んでいた、しらずしらずの間に。
というか、元鈴木英雄はギャンブル体質であったようだ。
パチンコにも素養があるらしい。
パチンコに行くのもお手の物、朝から並んで整理券をもらっていた。
そして俺はパチンコ店でラプラスを発動していた。
そう、俺はプロパチになろうとしていた!
英雄「今日から、能力を使ってプロパチになったるで!!」
そういきこんで俺は台を打ち始めた。
最初は勝っていた。
ビギナーズラックというやつだ。
しかしその時の俺はそんなこと微塵も思っていなかった。
天才だと思った、天職だと思った。
ラプラスで何を計算していたかは謎だ。
目の前のことに集中していて何を入力していたかよくわからない。
1玉4円でフィーバーする確率は、、、 などよくわからないことを考えていた。
ラプラスを使っていたかどうかも怪しい。
何時間か経つと当然のごとく負けだした。
しかし、惜しい場面は何度もあった。
俺はそれに興奮した、
キラキラと光る音楽、重低音の音楽、心躍る演出。
どれも俺を魅了した。
そして取りつかれた。
休日を一日使って約2万のマイナス。
英雄「まずまずの成績だな、最初からこの程度の負けで済むなんて才能あるじゃん」
なぜか俺は納得していた。
そして明日も来ようと決心していた。
次の日は勝った、プラス1万。
英雄「やっぱり俺って天才!?プロパチで大金持ちになってやる!」
そんなことを言いながら次の週末の計画を練った。
平日夜は研究に勤しんだ。
どうやらパチンコはほかのギャンブルと比較すると還元率が高いらしい。
そんなパチンコを最初から選ぶなんてなんて運がいいんだ。
また、どうやら台ごとに当たる確率が違うとのこと。
いろいろなサイトやアプリがあり、プロパチも使っていると。
そういった情報と俺の能力を使っていろいろな計算をして次の週末を迎えた。
そしてまた勝った。
2万と5万である。
これははまる。
簡単にお金なんて稼げるじゃん。
俺の気分は最高潮に達していた。
その次の週からは仕事終わりにもパチンコによるようになった。
もう、依存しているとも言ってもいい。
時間が経ち、気が付くと負けていた。
借金をしていた。
30万ほど。
英雄「なんでこんなことに」
始めたばかりのころは調子が良かったのだ。
ラプラスの能力を使うまでもなく、勝てていた。
今更だが、そんなのは完全に運であるが勝っているときには才能だと思った。
その後は勝ちと負けを繰り返すようになり徐々に負けが続き始めた。
もうその時には完全にギャンブル依存症だと思う。
後々これがギャンブルのやり方であることを知った。
ランダムに報酬が配れる、これこそ依存の原因である。
こんな悪魔なゲームを開発したやつを呪いたい。
ギャンブル依存症の俺は完全にパチンコに夢中になっていた。
勝った時にアドレナリンが完全に脳内に充満していたと思う。
ギラギラ光るパチンコ台にくぎ付けになっていた。
次第に平日夜にもいくようになり、週末では朝に開店前に並んでさえいた。
パチ友もできた。
いつも同じ店で打っている常連だ。
最初は顔見知りぐらいから会釈する関係であった。
たまたま隣に座って時に話しかけられ、仲良くなった。
常連「よっ、あんちゃんは勝ってる?」
英雄「今日はまずまずですね」
そんな何気ない会話しかしない。
年はおそらく同じぐらいの男でいつもキャップにジャージ姿であった。
決してパチンコどっぷりってわけではなさそうで、何の仕事をしているかは不明であった。
お互いに個人情報などは聞かずに、どこのパチンコ台が出やすとかそういった話ばかりをしていた。
そしてその常連はほとんど勝っている印象であった。
それを横目に打っていることが多かったため負けん気でさらにお金を吸い取られてしまった。
気づいたらもう遅かった。
これじゃ転生してプロパチで成り上がり物語じゃねーかよ。
しかもかなり成り下がっているし。
借金。
前の世界ではそんな概念は魔族の中では存在しなかった。
身の毛のよだつ思いである。
いままでは漠然とした不安であったが、借金ができたとたんに首に手をかけられている気分になった。
そもそも鈴木英雄に貯金はほとんどなかった、というよりも他に借金もあったみたいだ。
もう働き出して3年だぞ。
社会人3年目で貯金が0円って。
どういうことだよ。
英雄「借金を作った俺がそんなこと言う資格はないか」
俺はその後何を思ったか、ほかのギャンブルにも手を出していた。
競馬、競艇、競輪、宝くじまで買いだしていた。
そしてどれも負けた。
借金は50万まで増えていた。
英雄「俺は、俺はどうしようもないな」
俺は競輪の帰り道でそう呟いていた。
その日の競輪も負けていた。
英雄「俺は、何のために転生してきたのか」
またこの問いである。
反芻思考で自暴自棄になりそうだ。
うつ病はこうやって生まれたのか。
もういっそのこと生活保護でも受けようか。
っていうかまだ仕事している身ではたしか受けられないのか。
本当にどうしようもない。
家に着きおれは日課となっていることをした。
テレビをつけてスーパーで買ってきた半額の惣菜を机に広げた。
英雄「明日も似たような日々が続くのか、これじゃゆっくり死んでいくのと変わらない」
ご飯を食べながら、テレビをみながら、ゲームをしていた。
なんてマルチタスクなんだ。
英雄「ゲームはどうしてやめられないんだろ」
この世界の娯楽は本当にすごい。
特にゲームにはギャンブル並みの中毒性があると感じる。
ギャンブルほど経済的負担が大きいわけではないが、時間は一気にとられる。
ふと感じた。
この世界に来てからというものなにかずっと違和感が残っていたがその正体がわかった。
時間だ。
時間に関しては無頓着な人が多い。
前世では時間はとても大切にされたいた。
時間というか命は魔力で延長することができたからだ。
もちろん永遠というわけではないが、長い者だと1000年は存在したという伝承もあるぐらいだ。
邪神クラスになればそのぐらいはいくのではないか。
魔力と時間の関係はこの世界の言葉では表現しづらい。
鈴木英雄の体になってから全く時間の大切を忘れていた。
その代わりお金に対する執着が多くなった気がする。
ただ前世のことを思い出すとまだモヤモヤはある、時間以外にも忘れていることがあった気がする。
英雄「なにか忘れている、しかし時間が大切なことはこの世界でも変わらないだろう」
人の一生は80年がこの国での一般的な平均年齢。
俺の人生はあと50年程度か。
英雄「この50年をどう過ごすかが重要だな。せっかく転生したのに重大な使命とかはどうもないみたいだし」
どうしようもない憤りを感じた。
ただギャンブルをして借金をして、ゲームをしながら呟いて。
俺はこんなことをするためにいままで頑張ってきたのか。
ゲーム自体はたしかに楽しいが、俺が目指していたのはこんなものではない気がする。
英雄「ゲームみたいにレベルアップできたら楽しいだろうな」
何気なく言った一言。
何気なく言った言葉。
それがなぜか頭の中かで反芻した。
そして不意にストンと体のなかに落ちた。
英雄「レベル、経験値?これだ!」
魔族会にはこの世界にない独特の制度があった。
それは「ポイント」である。
昇格や昇給はポイントによって変わる、とても客観的な指標である。
仕事でうまくいけばポイントが自動でつくし、逆に失敗すると減ることがある。
減るといっても仕事の失敗で減るポイントは少ない、微々たるものだ。
それよりも、なにもしていない方が減っていく。
時間経過で減っていくのである。
この制度は大戦後に作られ、魔族会の人事部で管理されてる。
管理されているといってもすでに自動化されているため、やることはない。
不正などを取り締まるといった方がよいか。
もちろん人事部にはポイントに関してある程度の権限があるため、それなりの責任がある。
英雄「そうポイントだ。俺は邪神になるためにポイントをセコセコと集めていたのだ。魔王時代にとても大事にしていたのにどうして忘れていたのだろうか」
そして俺はひらめいた。
英雄「こっちの世界でもポイント制度を導入すればいいんだ!」
こうして俺のポイント生活が始まったのだった。




