8話 ドキドキのお宅訪問
「お邪魔します...」
「親はまだ帰って来てないから気にしないで!」
ソワソワしながら大江がリビングに入ってくる
一緒にごはんと言っても外食は基本栄養バランスが偏るから避けたいのと、作り置きがいくつかあって食べ切りたいので、自宅に連れ込んでしまった
当たり前だが大江に食事はくるみの家で良いか聞いたら狼狽えていた
「ごめんねー作り置きなんだけど良い?」
タッパーをいくつも取り出して皿に盛っていく
「えっと...手伝います。」
なんだかいつも以上に大江が大人しくて面白い
「大丈夫だよ!座っててダーリン♡」
自分より緊張している人を見ると、冗談も言えるくらい余裕が出てくる
「ダ...!...いや、うん。」
大人しく席に座ってくれた
温めた料理を机に並べて一緒に食べ始める
「焼き肉って栄養とカロリーが気になるから、先にごはん食べちゃおうかなって思って誘ったの」
「確かにそうですね。俺はお金がないから打ち上げ断っちゃいました。」
「えっ!そうだったの?!」
大江に家の用事が無くて安心したが、家庭事情が気になる
(でも私との食事は、どこに行くか分からなくてもOKしてくれたんだ。嬉しいな...)
「そういえば、親御さんはいつ帰ってくるんですか?」
「今日は2人とも遅いから、会社で軽く夜ごはん済ましちゃうんだってさ」
自宅に居るからか、込み入った話題が出てくる
くるみは両親が共働きなので、中学生の頃から料理を作り始め、元々可愛くなりたい願望があったため凝りに凝りまくり今に至ることを話をした
「俺は全然料理したことないので國塚さんを見習わないとですね。...これも凄く美味しいです」
「でしょ?おかわりもあるよ♡」
そろそろ食べ終わりそうな食事を見つめて熟考している
「いや、さすがに申し訳ないです...」
大江が苦渋の決断といった表情をするので、思わず笑ってしまった
「パパもママも食べないから残っちゃうな「いただきます。」
またも食い気味に答えられる
(もしかして本当は食いしん坊なのかな...?)
お昼ごはんがおにぎりだけだったので、少食かと思っていた時期もあったが、お金がないから普段食べていないのか、と腑に落ちた
お腹いっぱい食べさせてみたくなり、山盛りおかわりを差し出すと、目を輝かせていた
「ねぇねぇ、今度のテスト前、ノートだけじゃなくて大江くんに勉強教えてほしいの」
「もちろん良いですよ。」
いつも通りの二つ返事だ
「じゃあ、お礼にこれからもお弁当作っていい?」
「いや、それは國塚さんに体力的にも金銭的にも負担がかかるので...」
「弁当作るのは1個も2個もそんなに変わらないよー、金銭面は私の親にも相談するけどね、秘策があるの」
ふふふ、と邪悪な笑みを見せる
大江は悩んでいるようだが、親の許可を得られるなら、と了承してくれた
その後はしばらく体育祭の話をダラダラとしていたが、聞きたいことがあったのを思い出した
「そういえば!大江くんって何であんなに足速かったの??」
「ん?あぁ、勉強ばっかしてるから足遅そうに見えますよね。」
思っていた事がバレてギクリとする
「中学2年の最初の頃まで、そんなに勉強してなかったし、サッカー部入ってたからかな?」
衝撃の事実に質問したい事が一気に頭の中に溢れる
だが、咄嗟に出た質問は言う気の無いものだった
「だから女慣れしてたの?!」
完全にくるみの偏見だが、サッカー部はチャラくて女たらしのイメージだった
大江も予想外の質問に固まっている
「......女慣れどころか、彼女も居たこと無いよ...」
遠い目をしている
色々やらかしてしまい気まずい沈黙が流れる
(じゃあ私と付き合おっか。とか言ったら引かれるかな...?)
言うか言わないかで悩む
心臓がバクバクと音を立て、変な汗が出てきた
「ご馳走様でした。お皿洗いますね。」
沈黙を破るように大江が立ち上がる
「あっお皿は私が洗うよ!こだわりがあるの」
そう言うと残念そうに引き下がる
「あの...俺に出来る事ありますか?」
流石に何もさせなさすぎて居心地が悪そうだ
うーん、と悩むが特に頼みたい事が思いつかない
すると、くるみのケータイが鳴った
「もしもし?」
「もしもし、くるみー?もうみんな集まってるよ?」
「あ。」
打ち上げの事をすっかり忘れていた
大江もくるみも慌てて家を出て解散した
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翌日
朝起きると、ちょうどいい所に親が居たので、さっそく弁当の件を打診する
「パパーママー。これから毎日友達の分までお弁当作っていい?」
「えぇ?なんでよ」
「テスト前にノート貸してもらって、次から勉強も教えて貰うから、お礼したいの」
弁当まで作る必要があるのか?と渋っている
だがくるみには秘策があった
「これ見て!前期の中間テスト結果」
ふふん、とドヤ顔で見せると両親の表情が変わる
「食材の費用はかかるけど、塾に行くより安いでしょ?」
ここぞとばかりに畳み掛ける
「くるみ!弁当でも何でも作って、その友達捕まえときなさい!」
快く許可が降りた
それもそのはず、くるみは可愛くなるために他全てを捨ててきたので、新入生テストは240人中236位だったのが、今回のテストは149位の大躍進だったのだ
無事に許可を貰ったので、さっそく今日の分の弁当を作り始めた




