9話 迷惑じゃない
今日から正式にお弁当を渡せるので、ウキウキしながら登校する
教室に入ってすぐに大江にお弁当の許可が降りたことを伝えようとしたが先客がいた
「大江と國塚さん付き合ってるってガチ?!」
くるみが心の中でおバカ三人衆と呼んでる内の一人、本田だった
スッと気配を消して声がギリギリ聞こえる位置に移動する
「いや。付き合ってないです。」
「そうなん?いやーなんか、2人で歩いてるとこ見たとか、課外授業で手繋いでたとか色々噂されてるからさ!」
「........」
「付き合ってないなら良かったわ!國塚さんのこと狙ってるやつ多いし!」
どれも事実なので大江は何も言い返せていないが、本田は満足したようで去っていく
(課外授業のも見られてたか...実際付き合ってないけど、大江くんの口から言われると現実突きつけられて辛いなぁ...)
結局周りの目が気になって話しかけるタイミングが見つからず、お昼休みになってしまった
せめて弁当だけでも渡したいな、と思っていると珍しく大江が席を立って廊下に向かった
どこに行くのか目で追っていると、教室を出る直前、大江がこっちを見て「来て」と唇を動かした
ガタンッ
思い切り立ち上がったので椅子が倒れてしまい、一瞬教室が静まり返ったが、すぐに元の喧騒に戻った
「ごめん。柚香!これからお昼は別のとこで食べるね♡」
「えっ?!急だなー。いってらっしゃい」
特に気にした様子もなく見送ってくれる
随分と良い友達を持ったな、と噛み締める
ーーーーーーーーーーーーーーー
以前一緒にお昼ごはんを食べた場所に行くと、大江が座って待っていた
「ごめん。呼び出しちゃって...気付いてくれて良かったです。」
「ううん。私もお弁当渡したかったから」
許可が降りたよと伝えつつ弁当を渡す
「本当?ありがとう。申し訳ないけど凄く嬉しい。」
ニコニコと年相応の笑顔を見せる
朝、本田から聞かれていた事について話したかったが、何と切り出せばいいのか分からず、他愛無い話でお茶を濁した
だが、意外にも大江の方から切り出された
「朝の話、國塚さん聞こえてましたよね?」
「......うん」
大江が何かを言おうとしたが、言い淀む
深呼吸をして真剣な顔をこちらに向けて言った
「付き合ってるって言ったら迷惑ですか?」
「あ。えっと。それは...」
本当に付き合うということなのか、それとも今後も勉強会や弁当の事で一緒に居る機会が多いので、そういう設定にしてしまおうということなのか
あまりに急な提案で深く考え過ぎてしまった
「ごめん。忘れてください。お弁当ご馳走様でした。洗わない方がいいんでしたっけ?」
「あっ...うん...」
話を切り上げて解散する流れを作られてしまい、仕方なく弁当箱を受け取る
「勉強会は今日の放課後からでも大丈夫ですよ。國塚さんの準備が出来たら声かけてください。」
「うん。分かった...」
それじゃあ、と言って大江は教室に戻ってしまった
(あぁ〜〜!やっちゃった....!!!)
今のは大チャンスだったのに、本気の恋愛をしてこなかったツケが回ってきたのか、みすみす逃してしまった
ーーーーーーーーーーーーーーー
放課後
「あの...ずっと前から好きでした!付き合ってください!!」
くるみはついに告白された
全く知らない男子生徒に
確かに中学の頃は恋愛ゲームのターゲットじゃない人からも告白されることは多々あった
だが高校生になってから3ヶ月、告白どころかアプローチも無かったことに気付いた
「えっと。告白してくれてありがとう...でも、ごめんなさい」
いつもの振り文句の“誰とも付き合う気がない”という言葉は言えなかった
「大江って人とは付き合ってないって聞いたんだけど、本当は付き合ってた?」
探りを入れられて納得した
(本田〜!私を狙ってる男子に触れ回ってるって訳ね!)
「ううん!付き合ってないよっ!」
「じゃあお試しでいいから!ね!」
一体何を試すんだよ、と思いながら、付き合ってると言えた方が楽だったと後悔する
(本当に付き合うのか、フリなのかとか、どっちでも良かったな...)
ため息が出そうになるのを堪えて、笑顔を取り繕う
「今は勉強に集中したいのっ」
嘘じゃない範囲で丁寧にお断りする
まだ粘ろうとしていたが、気付かないフリをしてその場から逃げた
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ごめん!待った?」
「勉強してたので大丈夫ですよ。」
せっかく今日から放課後に勉強を見てもらう約束だったのに、名も知らない男の告白によって時間が削られてしまった
「....はい。ほとんど合ってましたよ。でもここだけ違って...間違えやすいところだから...」
勉強会、という名目なので当たり前だが勉強しかしていない
出来ればもっと雑談したかったが、自分から誘った手前サボれない
幸いくるみも努力家なので何とかついて行けている
ふぅ...とキリがいい所でため息が漏れた
「疲れました?今日はもう終わりますか。」
「ううん。まだもう少し...次のページまでお願いしていい?」
気を遣ってくれているのは嬉しいが、ここで辞めたくない
もっと一緒に居たいという可愛い理由ではなく、ここまで来たらやってやる!と言った風だ
くるみは集中していて気付かなかったが、大江はくるみを見つめて嬉しそうに微笑んだ




