6話 課外授業デート
チャイムが鳴ると同時に、クラスメイトのため息や喜びの声が漏れる
今日で前期中間考査の全日程が終了した
テスト後は絶望している生徒が多いが、くるみはノートを借りてテスト対策をしていたので、いつも以上に出来が良い自信があった
テストからの解放感と達成感を得つつ、大江にノートを返す
「大江くん♡ノートのおかげで、良い点取れそう!ありがとね♡」
「それなら良かったです。」
まるで自分の事のように嬉しそうな表情で応えられ、ぐらりと心が揺れる
(危ない危ない...!これはあくまでゲームだから!)
ノート返却で終わってはそれだけの関係になってしまうので、本題に移った。
「来週の課外学習って4、5人の班で行動するでしょ?一緒に回らない?」
「そういえば課外授業ですね。うん。一緒に行きたいです。誘ってくれてありがとう。」
残りのメンバー紹介をするが、大江はお茶を飲みながら聞いている
あまり他のメンバーには興味がないようだ
「あっ!あと、課外授業のお弁当、私が作ってきてもいい?」
やっぱりお礼し足りないし、と続けようとしたが大江がむせてしまった
「えっ!大丈夫?!」
慌ててティッシュを差し出すと、むせながらお礼を言われた
「ありがとう。手間だったら無理しなくていいけど、お弁当作ってくれるの凄く嬉しいです。」
受け取ってもらえるのは嬉しいが、大江の体の方が心配だ
なんともモヤモヤした気持ちで席に戻った
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課外授業は毎年バスで少し行った所にある水族館に行くらしい
事前に授業内で班やバスの席順を決める訳ではなく、教室の後ろの黒板に貼られた紙に、班のメンバーや座席を期日までに記入するだけの、さらっと終わる行事だ
くるみの班は柚香と、柚香が引き入れた相良、そしてくるみが引き入れた大江の4人班
女子同士の繋がりはあるが、男子同士は初対面で気まずかったのか、班行動とは言いつつ結局2:2で別れて実質デートのようになっている
授業の一環でデートが出来る上に、水族館は薄暗くて雰囲気も最高なのでラッキーだな、とほくそ笑む
(少し攻めるか...)
「大江くん...はぐれないように手繋いでいい...?」
「ん?あはは!デートみたいだね。」
笑いながらスルッと手を繋いでくれた
しかも恋人繋ぎだ
(?!?!?!?!?!)
くるみの脳内はお祭り騒ぎになった
(急に何?!私面白い事言ってないよね?!)
(手、繋ぎ慣れてない???もしかしてこう見えて女たらし?!)
(なんかいつもよりテンション高いし!大江くんって付き合ったらこんな感じになるの???)
もう魚どころではなくなってしまった
地元では大きくて割と有名な水族館なので、何度か来たことがあるが、混乱し過ぎて自分が今どこにいるのか分からないまま歩き続けた
「水族館って初めて来たけど楽しいですね。...國塚さん?」
「....!」
声をかけられやっと我に返った
「少し早いけど、疲れてるみたいですしお昼ごはん食べますか?」
完全に気を遣われているが、疲れたのは事実なのでお言葉に甘える事にした
水族館に併設されている大きな芝生にレジャーシートを敷いてお弁当を渡す
他にもちらほら水族館に興味無い生徒が芝生に来て、早めのお昼ごはんにしたり、わざわざ持ってきたのかキャッチボールをしたりしていた
のどかな風景を眺めながら2人でお弁当を食べる
今回もまたお弁当の感想やテストの話など、何でもないような話をする
風と日の暖かさが気持ちいい
大江と話すのはなんだかんだ言って嫌いじゃない
「大江くんは、背の高い女の子って好き?」
少し気が抜けたのか、素の話し方になったがくるみは気付かなかった
「んー。身長で好き嫌いを決めた事はないですけど、國塚さんは背が高くてかっこいいと思ってます。」
「えー?かっこいいかぁー。初めて言われたかも」
ふふふ、と笑いながら寝転ぶ
入学してから2ヶ月近く、ずっと張り詰めていたが、久しぶりにリラックスできた
「國塚さんは、このお弁当みたいな栄養バランスが良い食事をしてるから身長が高くなったのかな...」
ぶつぶつと分析し始めたが、確かに栄養バランスを整えて早寝早起きしていたら身長もすくすく伸びるな、と納得する
「いつもお弁当は自分で作ってるんですか?」
「うん。弁当だけじゃなくて朝昼晩、中学の頃から全部自分で作ってるの」
凄いでしょーと自慢げに答える
「本当に凄いです。将来栄養士になるとかですか?」
軽口のつもりが真剣に返されて照れる
「そんなんじゃないの!ただ可愛くなりたくて自分の為にやってるだけだから!」
(あっ...)
自分の失言に気付いた時にはもう遅かった
大江は驚いた顔をしている
(可愛くなりたくて頑張ってるなんて馬鹿にされるだろうな...そんな事に時間使うならもっと勉強しろ!って感じよね...)
「だからそんなに可愛いんだ...」
「え?」
「ごめん。何もしないで可愛くなれる訳ないですよね。」
自分もそう思っていたが佐倉という例外がいる事は黙っておく
「勝手に可愛いなって思ってたけど、ずっと努力してたんですね。継続するのって簡単なことじゃないのに...本当にすごい。」
手放しで褒められると居た堪れない、この場から逃げたくなった
(あれ?でも、そっか。大江くんもずっと勉強頑張ってるのか)
なんでこんなに褒めてくれるのか理解した
大江も努力を続ける大変さを知っているのだ
そう思うと一気に近い存在のように感じた
くるみの事を可愛いと思っていたのは意外だったが、外見だけじゃなく中身を認めてもらったのは初めてだった
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本当はずっと思っていた事がある
自分にしか見せないふとした瞬間の笑顔とか
何でもない話をしていて心地いいとか
いつも敬語なのに時々タメ口になるとか
もう言い逃れも気付かないフリも出来ない
(あぁ私。大江くんのこと好きだ)




