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努力は恋を裏切らない  作者: 杷木 うきは
第二部 高校2,3年生編

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3話 ずっと側にいる



青白い顔をしながら病院で横になっている

そんな大江の側で手を握りながら祈り続けた


(早く元気になりますように...)




ーーーーーーーーーーーーーーー




大江が学校で倒れた後、急いで先生を呼びに行った

どうやら意識がなかったらしく救急車で病院まで運ばれる


くるみは先生と共に付き添いで救急車に乗り合わせた

しかしそこで、思いがけない事を聞いてしまった


「大江さんには家族が居なくて...連絡する先が無いんです...」


(え...?おばあちゃんが居たはずだよね...?)



ここ最近様子がおかしかった理由を察してしまい、大江を見る


久しぶりに見る彼は、頬が痩せこけて、目は落ち窪んでいて隈があった


明らかに普通じゃないと一目で分かる



何も知らずに大江の浮気を疑っていた自分が恥ずかしい




病院に着いてしばらくすると医師から話が聞けた


診断結果は過労と栄養失調

まだ若く、元々健康的な生活をしていたため数日の入院で済むそうだ



命に別状はないと分かりホッとした


心配で無意識のうちに呼吸が浅くなっていたようで、ようやく深く息をつけた





次の日、学校帰りにお見舞いに向かう


病室を覗くと、大江はまだ眠っているようだった


白雪姫のように真実の愛のキスで目覚めるかな、などと馬鹿馬鹿しい考えが浮かぶ



しばらく大江を眺めていたが、起きる気配が無い

他にする事も無いので寝ている大江にキスをしてみることにした



(流石に起きないか...)


離れようとしたら手を掴まれた



「くるみ。もう一回して。」

久しぶりに大江に見つめられてドキッとする



さっきより何倍も緊張しながら、ゆっくりキスをした



「くるみは...絶対どこにも行かないでね。」

泣きそうな顔で言われる


大江の気持ちが痛いほど分かって、何度も頷く


「絶対どこにも行かないよ!ずっと側に居る」

そう言うと、安心したようにまた眠りについた



それから数日間、毎日お見舞いに行った




ーーーーーーーーーーーーーーー




今日は大江が退院する日


大江の所に行く前に、くるみの親に話しておく事がある


「ねぇ、私しばらく和くんの家に泊まる」

「えっ?!1日お泊まり会とかじゃなくて?しばらくって何で急に...」

当たり前だが明らかに動揺している



「和くん、小さい頃から親が居なくて、おばあちゃんと住んでたんだけど、最近亡くなったみたいで元気がないから...」

勝手に人の家の事情を言うのは憚られるが、説得するには正直に話すしかない


「うちにしばらく泊まるのじゃダメなの?」

「疲れてるだろうから、うちだと気を遣うかなって思って」

理由をきちんと説明したら両親は納得してくれた


大江とくるみの両親は何度か会っており、大江の真面目さは両親の知るところだ

万が一にも間違いは犯さないだろうと信頼されている


大江の家の住所を伝え、困ったことがあったらすぐに連絡すると約束をして家を出た



「和!迎えに来たよ!」

病室で帰り支度をしている大江は、顔色は良くなっているものの、まだ以前より痩せている


荷物を代わりに持って退院の手続きをしてあげた



荷物持ちをしたまま大江の家まで歩き出す


「ごめん。何もかもやってもらって。」

申し訳無さそうな顔をしているので、とびきりのサプライズで驚かせてあげる事にした


「全然いいよ!今日から和くんの家に泊まらせてもらうし!」

「えっ...!!!」


案の定、物凄く驚いていて面白い

きっと申し訳無い気持ちも吹っ飛んだ事だろう




ーーーーーーーーーーーーーーー




大江との共同生活は驚くほど順調だ


最初の内だけソワソワした様子だったが、すぐに慣れたようで、気の抜けたお家モードの大江になった



元々買い物は行かずに食材の配達サービスを使っていたらしく、学校帰りに買い物しないといけないのが1番の不安だったが杞憂に終わった


ごはんはくるみが作って、大江が皿洗いと洗濯

夜は居間に布団を敷いて2人で寝た


寝る前にポツポツと夏休み中の出来事や、おばあちゃんとの思い出などを話してくれるようになり、話しているうちに寝落ちする生活が続いた



時々、急にくるみに抱きついてきて声を殺して泣く事があったので、黙って背中をさすっている




その甲斐あってか、泣く頻度が段々減ってきて、食べる量は段々増えてきた


夜も安心して眠れているようで、1ヶ月後にはすっかり元気になっていた




「くるみ。側に居てくれてありがとう。」

「い〜え。どういたしまして!役得ってやつよ♡」

大江がくるみを後ろから抱きしめてくる



「そういえば、付き合って1年以上経ったね。」

色々あったのですっかり忘れていた



体勢的に耳元で話しかけられる形になって余計にドキドキする



「えっと...その...!」


(もしかして最後までするって話...?!)

一気に緊張して体がガチガチに固まった



「まだそんな気になれないから、もう少しだけ待っててくれる?」

くるみの様子を見て、ふふっと笑いながら囁かれる


邪な考えばかり浮かんでしまって、恥ずかしさのあまり穴があったら入りたい気分だ


顔を真っ赤にしながら黙ってコクコクと頷いた






「あっ!そういえば明日委員会あるんだった...」

寝る支度をしていたら、大江が嫌そうな顔をしながら呟いた


「行きたくないの?」


「うん。新見さんに告白されて、割と酷めに振っちゃったんだよね。」

申し訳ない事したから気まずい、と言っているが、くるみはそれどころじゃない



「あ!それって新見さんとちゅーしてた時でしょ!」

忘れていた怒りが蘇ってくる

大江が自ら浮気をしたとは思っていない

だが、向こうから無理矢理迫られたとしても、ちゃんと未然に防いで欲しい


「いや。くるみ以外とキスなんかしないけど...いつの話?」

明らかに不満げな顔だ



いつの事か詳しく話すと、勘違いだと懇切丁寧に説明された

大江としても疑われたままでいるのは不本意なのだろう



心のモヤモヤは晴れたが問題は解決していない


「私から新見さんに “委員会来なくていいよ” って伝えようか?」

「あー。そうしてもらえると助かる。」

どうせ毎回くるみも居るので手伝えるし、たいして利用者が居ないので、くるみが帰った後は1人でも問題ないだろう




ーーーーーーーーーーーーーーー



次の日


休み時間に新見に声をかけようと思ったが、そもそもクラスを知らないことに気付いた


空き時間に色々聞いて回ったが、結局分からず委員会の時間になってしまった


こうなったら図書室の前で待ち伏せして追い返す作成しかない



だが、くるみの前に来たのは別の人だった



「あれ?國塚さんって図書委員だっけ?」

そこには1-A時代のクラスメイト三峰(みつみね)が立っていた


三峰はアホな友達とアホな会話をしているイメージで、最初の頃に佐倉とくるみ、どちらが可愛いか議論していた内の1人だ



「ううん。でも図書委員の人を待ってたの」

「あっマジで?ごめん今開けるわー」

三峰は持っていた鍵で図書室を開ける


「あれっ?新見さんは?」

三峰と本のイメージがかけ離れていて、まさか図書委員とは思っていなかった


「あーなんか担当の曜日変わってくれってさ」

俺は隔週木曜日だったんだけどー、と聞いてもないのに話し続ける


どうやら新見の方が先手を打っていたらしい


(和くん...酷めに振ったとは言ってたけど、相当な言い方したんじゃ...)

ライバルだったはずの新見に同情した



三峰はおしゃべりだと思っていたが、図書室に入ると静かになった



後から来た大江が、黙って座っているくるみと三峰を交互に見て、頭にクエスチョンマークを浮かべていた


1人だと思っていたら他の図書委員が居る上に、くるみと三峰の接点も分からないので不思議なのだろう



大江の様子が面白かったので、しばらく説明はしないでおいた












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