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努力は恋を裏切らない  作者: 杷木 うきは
第二部 高校2,3年生編

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2.5話 大江の限界



---大江(おおえ) 和(やまと)の話---




高校1年の終わり頃から、くるみは理系を選択するんだと意気込んでいたので、大江の方は来年からクラスが離れることを知っていた


しかし、くるみは勘違いしていたようで、進級早々に泣き付かれた



それだけならまだ良いのだが、付き合ってから日に日に距離が近くなっていき、最近は公衆の面前でも抱きついてくるようになってきたので凄く恥ずかしい



くるみが自分のクラスに帰ってからは、熱烈な光景を見せつけられたクラスメイトから、質問攻めにあった


休み時間の度に、くるみとの事を聞こうと入れ替わり立ち替わりやって来て、半日授業なのに丸一日授業の日より疲れた



極め付けに、一緒に下校をしようと迎えに来たくるみが後ろから抱きしめてくる


大江は座っていて、くるみは立っているので、胸が頭の上に乗っている



大江を囲む人だかりには男子生徒もおり、くるみの胸に視線が釘付けになっている


これはまずいと、急いで帰り支度をした






帰り道で何故抱きついてくるのか聞いてみる


「う〜ん...私のだぞ!ってアピールしてるの」

想像以上に可愛らしい返事が来た


大江も割と独占欲が強いと自覚してきていたので、自分だけじゃなくて正直嬉しい




くるみからお昼ご飯をご馳走してくれると言われ、お言葉に甘えて家にお邪魔した


平日の昼間なので当然2人きりだ




まったりと食休みをしていると、不意にくるみが大江に跨ってキスをしてきた



(くるみからしてくるの珍しい...)



何度も触れ合わせるが、もどかしい



深く舌を入れられるように首の後ろを支える



息を忘れるくらい深く長く貪る




くるみの腰がゆるゆると動いて刺激してくる



スカートで跨っているので隔てるものが少なく、生々しい感触が欲を掻き立てる



(もう我慢出来ない。)



ベッドに押し倒してスカートを捲る



もっと近付きたくてスボンを脱いだ





2人を隔てるものは薄い布が2枚分


ぐりぐりと押し付けると音を立てながら沈み込んでいく


自分がくるみの中へはいっていく様子から目が離せない


視覚も聴覚も、全てに興奮する




(足りない。もっと...)


下着が邪魔で奥まで入らない


薄い布でさえ取り除きたくて上体を起こす



中から抜くと、くるみの下着が押し込まれていて、大江を受け入れるように口を開けているのが見えた




理性が焼き切れる音がした



もう何も考えられない




本能の赴くまま、くるみの下着に手をかけた









バタン、という大きな音で現実に引き戻される

くるみの親が帰って来たようだ


くるみは息も絶え絶えといった様子で返事ができない

2人して返事をしないのも怪しく思われそうなので挨拶しに行った



くるみの部屋に戻ると、くるみはベッドに横になったまま目を閉じている


(今回のは完全にアウトだった...もうあんなの未遂どころじゃないだろ...)


付き合って1年経つまでは我慢したいので、くるみにも煽らないようやんわり伝える



「和くんのヘタレ。」


ジト目でそう言われて、ぐうの音も出ない



1年と言い出したのも、頑なに守ってるのも大江であって、くるみにとっては関係ない事なのだろう


分かってはいるが、大切にしたくて断腸の思いで我慢しているのに、ヘタレと言われたのが存外刺さった




ーーーーーーーーーーーーーーー




クラスが変わっても、くるみが会いに来てくれるので一緒に過ごす時間は減らなかった


図書委員の当番で一緒に帰れない日は、くるみは図書室まで来て30分ほど勉強してから帰ってくれている


たいして会話は出来ないが、少しでも一緒に居ようとしてくれているのが分かって嬉しい

それに、集中しているくるみの様子を見るのも結構楽しい



だが、図書室に誰も居ない時に堂々とスキンシップをとってくるのだけは困りものだ


誰か来るんじゃないかと思うと落ち着かない



今日もくるみは図書室に来て、好き放題してから台風のように去っていった



くるみが帰宅するとやる事が無くて暇になる

大江は無言でも苦ではないが、一緒に当番をしている新見はそうでは無いらしい


くるみが帰った途端、色々と話しかけられる


オススメの本や、美味しいカフェ

くるみとは全く違う話題だ


(雑談より、勉強したい...)




珍しくくるみが図書室に来なかった日は、ずっと新見に話しかけられた


「あのっ!この前オススメした本どうだった...?」

一応興味があるジャンルであれば、勧められたら読むようにしている

ついでに部活の書評も書いているので、書いた事をそのまま伝えた



「あと、大江くんは興味ないかもしれないけど、これもオススメです...!」

新見が差し出した本は、以前くるみにも勧められた恋愛ものだった


「ありがとう。読んでみます。」

普段なら読まない、と断っているところだが、つい最近ヘタレと言われたばかりだ

くるみのオススメ恋愛小説を読んだら何か打開策が浮かぶかもしれない



その後も雑談を振られ続けて、早くくるみが来ないかと待ち続けたが、残念ながらその日は予定があったのか来なかった




ーーーーーーーーーーーーーーー




「和くんは最近どんな本読んでるの?」

昼休みの時間に唐突に質問された


「......特に変わらず歴史小説ばかりかな。」

新見にオススメされた恋愛小説は読んでみたが、結局何も得られなかった

加えて、ヘタレと言われない方法を見つける為に読んだというのも恥ずかしいので隠すことにした



くるみは何とも言えない表情でこちらを見ている


(何か隠してるってバレたかな...?)


だがその後は何も追求されなかったので、微妙な空気が流れたことをすっかり忘れて日々を過ごした




ーーーーーーーーーーーーーーー




今年の夏休みも毎週遊ぶ予定を入れた

もちろん交際1年記念日にも会う予定がある



夏休みの初日は、楽しみ過ぎて逸る気持ちを抑えるために図書館に行き一日中勉強をした



「ただいまーー!」

いつも通り玄関先で大声を出す


いつもならおばあちゃんが顔を出すはずだが、返事がない


(また耳が遠くなったかな。)



「ばーちゃん?帰ったよ?」

居間を覗くと、おばあちゃんが倒れていた


血の気が引くのを感じながら、慌てて救急車を呼ぶ








医者が言うには、発見が遅れた事と、高齢で元から体が弱っていた事が重なったのだそうだ



自分が図書館に行ったから

もっと早くに帰っていれば


過去は変えられないのは分かっているが、どうしても自分を責める考えが止まらない



親戚が手伝いに来てくれたが、ほとんど1人で遺品整理や葬式の準備をすることになり、くるみに会う元気も無い


申し訳ないが予定を白紙にしてもらうよう電話をかけた



「......うん、分かった」

思っていたよりもあっさりと了承されて安堵する



夏休み中は諸々の手続きで時間が消えていった



家族を亡くした事と、手続きの忙しさで疲労していき、日に日に食事を取らなくなっていった






夏休みの最終日


食べ物が喉を通らない状態なので、折角くるみが弁当を作ってくれても食べられない


先に断っておこうと電話をする



電話口でくるみの声を聞いたら涙が溢れそうで、慌てて切った



久しぶりに会いたい気持ちと、会ったらみっともなく泣いてしまいそうだから会いたくない気持ちで揺れる




ーーーーーーーーーーーーーーー




気分が晴れないまま登校日を迎えた



くるみには申し訳ないが、精神的に落ち着くまで会わないように避け続けた




大江がどんな状態だろうと関係なく時間は流れていく


委員会も変わらず当番が回ってくるので、億劫だが図書室に向かう



何とか辿り着くと、すでに新見がカウンターに座っていた


大江も座ってぼーっとする


「...くん。......大江くん?」



ずっと新見に話しかけられていたようで、心配そうに顔を覗き込まれれた


(近いな...)


くるみ以外にはパーソナルスペースが広いので、あまりいい気はしない



「ごめん。ちょっと近いから離れてください。」


心に余裕も無いので、少し冷たい声になってしまい反省する


ドアの方からガタンと音がしたので目を向けると、人影が去っていくのが見えた



一瞬のことなので誰かは分からないはずだが、大江には何故かくるみだと分かった


慌てて追いかけようとすると新見に引き留められる



「あのっ!聞いてほしいことがあって...」

「何?」

急いでいるのでさっさと話してほしい、と態度に出したつもりだったが、新見は相変わらずゆっくりと喋った


「えっと...前からずっと大江くんのこと見てて...」

「......」


「だから...あの...大江くんのこと好きですっ!國塚さんと付き合ってるのは知ってるけど、もしチャンスがあるなら...」



「ずっと俺のこと見てたなら分かると思うけど、俺はくるみの事しか好きじゃないから。」

新見の言葉を遮り、急いで図書室を出た


1人残して委員の仕事をさせるのは忍びないが、フラれた相手と居るよりましだろう



体育祭ぶりの全力疾走でくるみの後を追いかけた


下駄箱の所まで行くと、ちょうどくるみが靴を履き替えようとしていた



「くるみ!!」

声をかけるとくるみは慌てて外に出ようとする



追いかけようとした瞬間


視界がぐにゃりと曲がって目の前が真っ暗になった












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