2話 あわない時間
クラスが離れてしまったが、お昼の時間やテスト期間の勉強会は続けているので、何だかんだあまり変わらない日常を過ごしている
加えて最近は、大江が委員会で一緒に帰れない時も会いに行っている
大江は1年の頃から図書委員で、部活は文芸部に所属している
部活の方は月1で書評を書けばいいだけらしく、部室で集まっての活動は任意参加なのだそうだ
そのため、図書委員の当番で暇な時間に本を読み、書評を書くという効率的な活動をして学習時間を確保しているとの事だ
ちなみに、くるみも帰ってから山ほどやる事があるので、委員会は楽な美化委員会に入っている
朝花壇に水やりをするか、ゴミの分別用ポスターを作る程度の活動量だ
部活は調理部に入っているが、気まぐれでたまにしか顔を出していない
一応何を作ったか写真を見せたら活動報告として扱って貰えるので、日頃料理をしているくるみにとっては楽な部活だ
「はぁ〜!今日も疲れた〜!」
そう言いながらカウンターの中に入っていく
空いている椅子を大江の隣にピッタリ付けて座りつつ、大江にもたれかかる
「くるみ。ここ図書室だから静かにね。あとカウンターの中には入らないように。」
クソ真面目なお説教を聞き流しつつ、ダラダラ過ごしていると、もう1人の図書委員がやってきた
「ごめんね、大江くん!HRが長引いて遅くなっちゃった!」
いかにも図書委員といった垢抜けない大人しそうな女の子だ
くるみの存在に気付くと、少し驚いてペコリと頭を下げる
「どーーも...」
くるみも軽く会釈をする
「ほら。新見さん来たし、椅子空けて。」
大江に促されてカウンターから出るが、心の警戒ノートに新見をメモしておく
(ふぅん...同じ委員会の新見さん...ね)
仕方がないので少しの間図書室で勉強をしつつ、2人の様子を眺めてから帰宅した
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次の委員会
先生からの頼まれごとをしていたら、図書室に行くのが遅れてしまった
急いで向かうと、既に大江と新見が並んで受付に座っていた
他に利用者は居なくて暇そうだ
「あのっ!この前オススメした本どうだった...?」
「面白かったです。特に最後の場面で...」
何やら本の話で盛り上がっているらしい
こっそり隠れて2人の様子を伺う
くるみは全く本を読まないので話題に付いて行けない
以前、大江の読んだ本と書評を読んでみようと思ったが、大江は勉強の一環で歴史小説ばかり読んでいるらしく、難しすぎて読む前から断念したことがあった
(せめて恋愛小説とかなら読めるのに...)
「あと、大江くんは興味ないかもしれないけど、これもオススメです...!」
「恋愛小説...?」
新見が差し出した本は、くるみも読んだことがある有名なラブコメだった
(大江くんはそんなの読まないよ!)
くるみは心の中で勝ち誇ったように笑うが、大江は本を受け取った
「ありがとう。読んでみます。」
(私がオススメした時は読まなかったくせに!!)
ショックで口が半開きになり、ガーンという効果音が似合う顔になってしまった
(趣味じゃない本を受け取るくらい仲良しなの?!)
その後も2人は雑談を続けており、完全に出るタイミングを失ったくるみは落ち込みながら帰路に就いた
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「和くんは最近どんな本読んでるの?」
昼休み、一緒に弁当を食べている時にそれとなく探りを入れてみた
「......特に変わらず歴史小説ばかりかな。」
少し返事を考えていたが、どうやら本当の事を言うつもりは無さそうだ
(怪しい...)
正直言って大江とくるみは趣味もノリも合わない
もしかしたら派手な女の子よりも、大人しい女の子の方が好きなのかもしれない
そして残念ながらくるみは性格が悪い
自覚はしているものの、すぐに治るものでもない
不安ばかりが募っていく
大江が委員会の日は憂鬱になった
夏休み、そして付き合って1年記念日が近い事を心の支えに何とか日々を過ごした
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テストや体育祭など、目の前のことに全力を出していたら、あっという間に夏休み目前になった
スマホを持っていない大江の為に、休みに入る前にしっかりと遊ぶ予定を立てておいた
準備は万端
いざ夏休みが始まった
「本当にごめん。夏休み遊べなくなった。」
珍しく大江の家の固定電話から着信があったと思えば、まさかの予定全キャンセルの電話だった
「......うん、分かった」
長電話も良くないので、問い詰めたい気持ちを抑えて物分かりの良いフリをした
急に暇になったので他の予定を何とか詰め込むことで、大江の事を考えないようにした
夏休みの最終日
再び大江から電話がかかってきた
「お昼のお弁当なんだけど、しばらく作ってくれなくて大丈夫です。色々すみません。」
それだけ言うと電話が切れた
(これってもしかして...別れるフラグ...?!)
付き合って1年記念を避けるように距離を取られてしまって絶望する
何が悪かったのか、どうしたら良かったのか
答えの出ない疑問をぐるぐると考え続けた
気分が晴れないまま登校日を迎えた
登校時にそれとなく2-Aを覗くが、大江はまだ来ていないようだ
姿を見ないまま、お昼の時間になってしまった
弁当は要らないと言われたが、一緒に食べないとは言われていないので教室に押しかける
だが、大江の姿はなかった
「あの...和くん知らない?」
「あれ?さっきまで居たんだけど、どっか行っちゃったみたい」
近くにいた人に聞いてみるが、収穫はない
学校には来ているらしいので、頑なにくるみに会いたくない事だけが分かった
(こうなったら、とことん追いかけ回してやる!!)
理由も言わずに避けられ、怒りが湧き上がる
大江の予定は大体把握しているので、さっそく大江が委員会の日に図書室へ突撃した
図書室の前に立つと怒りと緊張で心臓がバクバクと音を立てる
休みの間一度も会っていないので、1ヶ月半ぶりくらいだ
そーっと中を覗き込む
今日も利用者が誰もおらず、図書室は静かだ
カウンターを見る
新見が大江に顔を近付けて、キスをしていた
慌てて図書室から走って逃げ出す
(なんだよ...そういう事ならはっきり “他に好きな人が出来た” って言ってよ...!)
ポロポロと涙を流しながら駆け抜けた




