最終話 伝えたい事
次の日は休もうかと思ったが、大江が一緒に行こうと言うので、気乗りしないが登校する事にした
ピンポーン
約束通りの時間にチャイム鳴る
大江から迎えに行くと指定された時間は、遅刻ギリギリの時間だったので急いで家を出る
「おはよう。くるみさん。」
大江の方は落ち着いた様子で挨拶をしている
昨日は2人して沢山泣いたので、くるみ同様大江の目も少し腫れていた
「じゃあ行こっか。」
手を差し出されたので素直に繋いで歩き出した
学校に繋がる大通りが近付くと、他の生徒の姿も見える
(そろそろ手を離した方がいいかな?)
そう思い手を緩めるくるみと反対に、大江は強く握った
ビックリしているくるみを気にも止めずに、教室に向かう
途中の下駄箱で1度手を離したが、再度繋がれたので大江の意思は固そうだ
教室に入ると、昨日と同じくシン...と静まり返った
そして手を繋いでいる様子を見てヒソヒソと話し声が聞こえてくる
大江は更に強く手を握ると、深く深呼吸をして
「俺たち付き合ってるから!」
堂々とクラス中に向かって宣言した
今はHRの直前なので全員が揃っている
(この為に出発時間を遅くしたんだ...)
大江の発言に、ヒソヒソと陰気だった教室の空気が一変した
キャー♡と黄色い声に変わって、数人の女子が話しかけに来る
「いつから付き合ってるの?!」
「どっちが先に好きになったの?!」
変わり身の速さに驚くが、大江は矢継早の質問に律儀に答えている
「夏休み中に付き合いました。」
「俺が好きになって告白しました。」
楽しそうな話題だとばかりに他の人達も集まってくる
大江が何でも答えるので、皆好き勝手に質問している
謎の公開惚気に恥ずかしさで顔が上げられない
「國塚さんのどこが好きなの?やっぱ顔?」
「努力家な所です。」
「もうヤった??」
「.........わ、分からないです。」
男子生徒はより踏み込んだ質問をずけずけとしてくる
「えっ分からないって何?!」
「いや...基準が分からないから...」
色々としてはいるが、最後までしたわけでは無いので返答に困っているのだろうが、真面目過ぎて呆れる
「もうこの話終わりっ!!」
ついにくるみが耐えられなくなり解散させた
ちょうどチャイムもなったので大人しく皆席に戻ってくれた
休み時間の度に大江はくるみの席まで来た
特に用事がある訳ではなさそうなので、他愛の無い事を話す
その様子を見て周りがさらに盛り上がる
1日が終わる頃にはクタクタになっていた
「ごめん。くるみさん。」
下校時すら一緒に居る大江が謝ってくる
「え?何が?」
「勝手に付き合ってること言って。」
「...まぁ、色々驚きはしたけど、嫌じゃなかったよ」
大江がしたかった事も分かる
男遊びが激しくて、大江が弄ばれているイメージを植え付けられたので、真剣に交際している事が伝われば噂も落ち着くと思ったのだろう
実際嫌な噂は落ち着いたが、代わりに別の気苦労は増えた
(まぁ、変な噂よりマシかな...)
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3ヶ月後
元の噂は完全に落ち着き、変に茶化される事も無くなった
自分のクラスだけでなく学校中に付き合っている事が知れ渡っているようで、公認カップルと呼ばれているらしい
周りが気を遣ってか、最近は行事の度にニコイチにされている
大江は気にした様子も無く、今まで通り接している
むしろ今まで通り過ぎて、テスト前の勉強会も継続していて、ついにくるみの順位が2桁になった
もう少しイチャイチャしても良いのでは、と思うが1年後と言われているので我慢する
「ねぇ、和くん」
「なに?」
「すき」
「俺も。すごく好き。」
いつかの電車の中を思い出して2人で笑った
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【最終話+0.5話 守りたいもの】
---大江 和の話---
くるみを傷つけたくなくて、自分勝手に怒り、悪意から遠ざけようとしていた
だが、小松と連れ立って教室を出て行き、戻ってきた時の表情で悟った
彼女は自分の意思で悪意に向き合うと決めたのだと
(小松さんはくるみの事、ちゃんと考えられていたな...それに比べて俺は自分の気持ちばかり優先させて...嫌になる。)
自分に出来ることは何か無いか考える
(とりあえず、まずは会話しなきゃだな。)
別に黒板に書かれていた事は信じていないが、今後の事や、くるみの気持ちを話し合いたい
針のむしろに居るような気分で1日が終わる
こんな雰囲気の教室では話も出来ないので、さっさと帰ってくるみの家に行こうと決める
足早に教室を出ると、家に荷物を置いてすぐにくるみの家へ出発した
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チャイムを鳴らすが誰も出ない
まだ帰ってないのかと思いしばらく待ってみたが、くるみはやって来なかった
代わりにくるみの父親が帰ってきたので声をかける
「以前お邪魔させて貰った大江です。お父さん、くるみさんってもう帰ってますか?」
「お父さん......この時間はもう風呂に入ってるくらいだと思うが...」
何だか複雑な表情をしながら、“友達” が来てると伝えると言って家に入って行った
すでに帰っていてチャイムの音に気付かなかった、もしくは今は誰にも会いたくなくて居留守を使った
どちらでもいいが、家にいてほしい
(まさかまだ帰ってない、なんてこと無いよな...?)
まだ日は長いが、もう19時なので薄暗い
少しすると、くるみの父親が困った顔で家から出てきた
どうやら大江の不安が的中したらしい
「いつもなら居るはずなんだが...」
どうして良いか分からない様子だ
「自分、探してきます。くるみさんがいつ帰ってきても良いようにお父さんは家に居てください。」
携帯電話を持っていないので、定期的にくるみが戻ってきてないか確認しにくることを伝え、行きそうな場所に心当たりが無いか聞き出す
「心当たりか...思いつかないな......くるみの母親の方にも連絡して、すぐ帰ってきて一緒に探すよう伝えるから」
ダメな親ですまないが、よろしく頼むと言われてしまった
何としてでも見つけなければ
近くのコンビニ、家の周りの細い道まで走って見て回る
(ここも居ない......ここにも居ない......)
はぁ...はぁ...と息を切らして走り続けた
一度くるみの家に行き、帰ってないか確認するが、まだ帰っていないと言われて絶望する
(...もしかして、あの公園なら居るかもしれない。)
一緒にデートをした思い出の公園に向かって走り出す
辺りはすっかり暗くなっていた
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公園に着いたが、もう暗いので人気は無い
(くそ。ここにも居なかったか...!)
もう思い当たるところは無い、大江の家に来てる可能性もあると思い、戻ろうとした時、公園の隅で何かが動いた気がした
恐る恐る近付いてみる
そこには下を向いて蹲るくるみの姿があった
心配な様子ではあるが、無事に見つける事が出来て安心する
「くるみ。」
驚かせないように努めて優しい声色を出しながら目線を合わせる
学校では気丈に振る舞っていたが、やはり傷付いていたようでボロボロと涙を流す
「本当にごめん。辛いときに何も声かけなくて...最低だった。」
今日1日ずっと居心地が悪かったのはくるみも同じはずだ
「そんなのどうだっていい!大江くんに嫌われちゃうのが嫌だった!」
泣きじゃくりながらも、あまりに可愛いことを言うので思わず強く抱きしめる
「嫌いにならない。噂じゃなくてくるみ本人を見てるから。」
「うん...」
安心するまで側に居よう、そう思っていると、くるみの口から聞きたくなかった事実を聞かされた
「私...今まで落ち込む事があった時とか......自分の自信を取り戻す為に、男の子に思わせぶりな態度をとって告白させてたの...」
くるみの懺悔に嫌な予感がして汗が滴り落ちる
「それで......今回もまた落ち込む事があって...大江くんに声をかけたの」
「告白してもらったことは、周りに言ったりして無いし、バカにした事も無いけど...相手からしたら嘘だったって時点で同じ事だったと思う...」
(...知りたくなかったな。)
言われてみれば、おかしいと思う点はいくつもあった
急に話しかけてきたり、
繋がりを切らさないように次の約束を毎回取り付けてきたり、
何よりこんなに可愛い子が、自分みたいな冴えない人間相手にデートに誘う訳がない
当たり前の事なのに、もしかしたら、と勘違いした自分が惨めに思える
(でも俺は...もう後戻り出来ないくらい好きになっちゃったし、諦めたくない。)
(仕掛けてきたのは向こうだ。嘘とはいえ付き合ってんだから)
(絶対逃さない。)
騙されていた事への怒りもあり、嫌われようが構うものかと行動に移す
「遊びだったなら申し訳ないけど、俺は別れる気ないから。」
「えっ...!」
反論など出来ないように口を塞ぐ
絶対に逃さないために手首を掴む
考えたくもないが、これが最後になるかもしれない
自分の気が済むまでキスをし続けた
(もっと...もっと欲しい。)
くるみの手を引き、より目立たないところに連れて行く
「続きはこっちでしよっか。」
そう言いながらキスをして、服の中に手を入れる
まだ残暑が続く日に、暗いとはいえ長時間外に居たくるみの肌はしっとりと湿っている
(はぁ...気持ちいい。)
下着のホックを外す
それでも抵抗しないくるみに歯止めが効かなくなる
さらに奥へと手を伸ばす
くるみに思い切り突き飛ばされた
どうやら許されない一線を越えたようだ
(あーあ...流石にもう終わりか。)
「...嫌ならもうこういう遊び辞めないと。俺みたいなのに勘違いされるよ。」
自分はもう終わりだったとしても、この先くるみがこんな風に襲われないようにしてほしい
くるみの身の心配もあるが、何より自分が嫉妬で狂いそうだ
くるみが何か言おうとしていたが、もう何も聞きたく無くて被せるように謝る
すると泣き止んでいた筈のくるみの目から、また涙が溢れてくる
泣かれるとどうして良いか分からなくなる
「ごめん...國塚さん。傷つけたかった訳じゃないんだ...」
大江もたまらず涙が落ちた
本当はまだずっと一緒に居たいが、望まれていないなら離れることを伝えると、突然抱きしめられた
「私も遊びなんかじゃない!別れないもん...!」
思ってもみない返事にまた涙が溢れた
(あんなことしたのに許してくれるんだ...)
ひとしきり泣いて疲れたので2人で並んで地面に座り込む
「ねぇ。俺なんかに本気って、本気?」
「俺なんかって言わないで。だいすき...だもん」
始まりがどんな形であれ、今こんなに想ってくれているのなら幸せだ
これからも一緒に居たい
愛おしい気持ちがあふれて、今度は笑みが溢れた
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くるみに対する悪評を掻き消すように、彼氏宣言をしてから周りの目が悪意から好奇に変わった
大江としては悪い虫が付かなければそれでいいので、今の状況を甘んじて受け入れる
人の噂も七十五日と言うが、実際に3ヶ月後には噂は落ち着き、公認カップルとして扱われるようになっていた
そして2人の関係はというと、あれから全く手を出していない
不甲斐ない話ではあるが、突き飛ばされて拒絶されたのが堪えており、臆病になっている
(まぁ、今はもう正式にお付き合いしてるから、しばらくはこのままで。)
考え事をしていると、くるみから声をかけられた
「ねぇ、和」
「なに?」
「すき」
「俺も。すごく好き。」
今度は声に出して伝えらる関係なのが嬉しくて、2人で笑った
大江和 × 國塚くるみ
高校1年生編 完結
引き続き
・高校2,3年生編
・大学生編(R-18予定)
を連載していきます




