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努力は恋を裏切らない  作者: 杷木 うきは
第一部 高校1年生編

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19/26

15.5話 夏の終わりと亀裂



---大江(おおえ) 和(やまと)の話---




夏休みの2週目は勉強会を頼まれていたが、國塚の家だと全く集中出来ないので図書館を指定した



だが、大江が既に課題を終わらせている事が分かるやいなやワークを閉じてデートに誘ってきた


(こんな態度取られると好かれてるって本気で勘違いしそうだな。)


ただ学校での様子を見ると、國塚は友達に対してすぐに大好きと言うし、遊びに出掛ける事をデートと言っている

自分以外には異性の友達が居なさそうなので、同姓の友達と同じ感覚で接しているだけなのだろう



考え事をしていたせいか、条件付きでデートを了承してしまった



今までに無いやる気を見せる國塚に呆れるが、デートの内容は公園でサッカーという健全なものだった


受験勉強を始めてからずっとボールに触っていなかったので、久しぶりのサッカーは心の底から楽しかった



気付けばお昼までぶっ続けで付き合わせてしまった



課題も今日やる予定分は終わっているし、もう用は無いだろうと思い解散を提案したが引き留められた


「あのっ...!もうちょっと一緒に居たい...」


破壊力抜群のセリフに加え、服の裾を掴んで上目遣いで見つめられては、勘違いしたくもなる



「そんなに俺とデートしたいんですか?」

國塚は焦った様子で裾を離した


「......じゃあ!来週も、宿題早く終わらせたら今日みたいに遊んでくれる...?」

(デート、とは言わないのか。やっぱり勘違いだったな。)



良いですよと返事をしてその場は解散した



ーーーーーーーーーーーーーーー



夏休み3週目



「えっ、おはよう。國塚さん早いね。」

図書館に着くと猛暑日だと言うのに、國塚が外に立って待っていた


「まぁね♡」

自慢げに夏休みの課題が全部終わった事を告げてきた

おおかた早く遊びに行きたくて外で待ってたのだろう


あまりモタモタしていたら熱中症で倒れかねない

國塚の家に行くと言われて少し躊躇ったが、もし気分が悪くなった時の事を考えたら家の方が良いと思い、素直に着いて行った



玄関に入ってお邪魔しますと声をかける

だが家の中が静か過ぎる


以前会った國塚の両親、主に母親は賑やかな人だったので、嫌な予感がして尋ねる



「ん?うん。パパもママも出かけてるよ?」


(はぁーーー。マジでこの子危機感無いな...)



同意も無いのに襲う気はないが、流石に好きな子と2人きりにされたら健全な男子高校生としては色々考えてしまう


いい加減自分がどれだけ我慢してるか伝えたい、と思っている最中に顔を近付け覗き込まれる



もう耐えられない



國塚の肩を掴んで押し返す



「國塚さんは、俺のこと安全な友達だとか思ってるんだろうけど。」


「俺は國塚さんのこと好きだから、2人きりにされると結構しんどい。」


自分の心の内を曝け出し、緊張で口から心臓が飛び出そうな感覚に陥る



國塚は放心して完全に固まってしまった


(友達だと思ってた奴に、2人きりの部屋でいきなり告白されたら気持ち悪いよな。)



帰ろうと思い踵を返すと後ろから抱きつかれた



「待って!!私も好き!」



「......友達として、じゃなくて?」

あまりに信じられない返答に思わず聞き返す



「うん。えっと、恋人になりたい...って思ってる」



振り向いて思い切り抱きしめた



國塚の言葉を噛み締める

体温や匂い、五感の刺激がこれは夢ではなく現実だと教えてくれる


それと同時に嬉しさや恥ずかしさ、若干の欲によって顔が熱くなる


(今絶対顔赤い...)



國塚が腕から抜け出し大江の顔を覗き込む


「や、見ないで...ください。」

必死に顔を逸らすが、國塚のスイッチが入ってしまったようで身体中を触られる



(......もう無理。)



同意があるなら、もう我慢の必要はない

そう本能に囁かれるままベッドに押し倒し身体を弄る


優しく撫でながらキスをすると、悩ましい声が漏れ聞こえる


さらに深くキスをすると國塚の身体がビクッと跳ねて、気持ちが良いのだと伝わってくる



愛撫していた手を下の方に移す途中で大事なことに気付いた



(何も準備してない...)



気持ちを切り替える為にわざとらしくパッと離れる



「なんで......?もっとしたい...」

とろんとした目をしながら、まだ気持ち良さの残る甘い声で囁かれて理性が溶けそうになる



(流石に付き合ってすぐ手を出すのは最悪。)

何度も唱えて気を落ち着ける



こんなに可愛い生き物を他の男がほっとく訳がない事は、ここ最近のデートで嫌と言うほど思い知らされてる

だが、念のためこの先“何を”するか知った上で誘っているのか確かめる


「えっと...服を脱ぐ...とか?」


間違ってはないが、本気でそれ以外分かっていなさそうな顔をしている


(いや。まさか、俺が初めてとかそんな事あるのか...?)


半信半疑ではあるものの、自分も相手も初めてなら急ぐ必要も無いか、と冷静になってきた



「うぅぅ...じゃあ今くらいのは、これからもしてくれるの?」

「.........それ、もっときつくない?」



今回踏み止まれたのは奇跡に近いので、次は絶対最後までする自信がある


國塚が想像以上に無知で純粋なので、付き合ってからも悩みが尽きない事を悟って項垂れた



ーーーーーーーーーーーーーーー



夏休み4週目



どこまで話すべきか悩んだが、國塚に両親が居ない事を伝えた


墓参りまで着いてきてくれたので、普段はお墓に話しかけたりしないが、両親に彼女を紹介してみた


國塚もお辞儀をするもんだから、あまりの可愛さに笑ってしまった



墓参りを終えて、自分の家に案内する



おばあちゃんに國塚を紹介すると、安心したように笑っていた

昔おばあちゃんから将来の話をされてから、全く遊ばず勉強ばかりするようになったので、自分のせいなんじゃないかと気を揉んでいたらしい



國塚を居間に通すと、普段過ごしている空間が別のものにように感じる


そもそも人を呼んだ事がないので違和感がすごい


じっと國塚の様子を見ていたら、おばあちゃんが居間に来てアルバムやら物置の作品達やらを紹介しだした


國塚もおばあちゃんに懐いたらしく、完全にアウェイだ


(自分の家なのに居心地が悪い...!!)



昼ごはんの後も居間にいたらおばあちゃんが乱入してきそうだったので、自分の部屋に案内した



ゲームも漫画も何も無いのでつまらなかったかな、と思っていると、國塚がベッドに腰を下ろして熱っぽい目で見つめてきた


(この前みたいなことしろって事か...)


「..........何もしないからね?」

この前と違い、耳が遠いとはいえおばあちゃんも居るので釘を刺しておく



不貞腐れた様子でベッド横になった國塚は、今度は大江の枕の匂いを嗅いで大喜びをしている


「勘弁して...」

恥ずかしさと、國塚の無防備さに白旗をあげる



どうしたものかと國塚の様子を眺めていたら、買っておいた物に足が当たったらしく、中の物が壊れていないか確認されそうになる


「うわ!やばっ!」

素早く回収して体の後ろに隠す



大江の怪し過ぎる行動に、ジト目でこっちを見ている



えっちなものを隠していると疑われて、追いかけ回されるが、あながち間違ってはないので弁明出来ない

女慣れしていると疑われるくらいなら、と白状する事にした



紙袋の中身を見た國塚はキョトンとしている


(嘘だろ...まさかこれも知らない...?)



「もしかして勉強だけじゃなくてこれも教えなきゃダメ...?」

コクコクと可愛い顔して頷かれたら教えるしかない



ベッドに腰掛け、持ち得る知識を総動員して伝えた



一通り教え終わると、國塚がキラキラした目で見てきた

「じゃあ練習着ける練習していいっ?」


あまりの積極性に焦る

部屋も明るいのにまじまじと見られたらたまったもんじゃない

それに、そんな事までされて練習だけで終わる訳も無い



だが、どうやら國塚が着ける物だと勘違いしていたらしい


(國塚さんが着ける物だったとしても、目の前で練習するのはどうなんだ...?)



恋人に保険体育の授業をするという羞恥プレイをさせられ、勘違いとは言え衝撃発言をされて体力がごっそり削られた



「大江くん、色々準備してくれてありがとね♡」

抱きしめられて軽くキスをされるが、準備万端な所を見られた恥ずかしさのが勝る


「でも、どうしてそんな準備万端なのにしないの?」

完全に図星を突かれて固まる



國塚の身体目当てでは決して無いが、正直言って唆られている

背が高く、痩せ過ぎていない健康的な身体に、大きい胸、そして顔も可愛い


どこをとっても非の打ち所がない


かっこつかないが、もごもごと言い訳を並べて何とか身体目当てだと勘違いされないよう努める



「まぁ、そういう事なので。せめて1年付き合ってからにしたいです。」



何とか納得してくれたようで、お家デートは無事に終わった



ーーーーーーーーーーーーーーー



夏休み5週目



「お待たせっ!」

國塚の家のインターホンを鳴らして5分ほど経ってから浴衣姿の彼女が現れた


「すごい...可愛いです。」

なんとか平凡な感想を絞り出した

水着の時の二の舞は避けられて安心する


「ありがと♡」

言われ慣れているであろうセリフだが嬉しそうにしてくれる


慣れない服装をしている國塚を気遣って、祭り会場までゆっくりと向かった



小学生の頃に来て以来だったので、祭りの熱気に少し驚く


ぐるりと屋台を見て回っている最中に、酔っぱらいに絡まれた

「彼女さん可愛いーねー。彼氏さん羨ましいわー」

チラチラと國塚を見ながら大江に話しかけてくるのでタチが悪い


当の本人は話を聞いてすらおらず、キョロキョロと何かを探している様子だ



気疲れと人酔いで具合が悪くなったのでベンチに腰掛けた


(國塚さん退屈してないかな...?)



何とか花火が始まるまで会話を繋げようと心がける


「2人きりの時は名前で呼んで良いですか?」

改まって聞くと、恥ずかしさで顔が熱くなる


くるみが揶揄いモードになってしまったが、花火が始まってようやく解放された






ドーン...

最後に一際大きい花火が上がって祭りが終わった



帰りのタイミングは皆同じなので、確実に混雑する

ベンチに座って良くなってきたが、まだ気持ち悪さが抜けきらないので、寿司詰め状態の電車に乗ったら吐きそうだ


申し訳ないが電車を数本見送らせてもらい少し休む

くるみは文句も言わず側に居てくれる


(優しいな...)



人混みも徐々に解消されて、電車に乗れるくらいは回復したので立ち上がる

「......くるみさん。そろそろ行きましょう。」


差し出した手を迷わず取ってくれるくるみが愛おしい

抱き寄せて軽くキスをする


「今日も可愛いです。」


今日は休んでばかりで楽しませることが出来なかったが、せめて愛おしく思っている事を伝えたかった



電車を数本見送ったので、夜遅くなってしまった

くるみを家まで送り届けてそのまま解散した



ーーーーーーーーーーーーーーー



夏休み最終週



今日はデートの予定だが、夏祭りの時に風邪をひいたらしく、1週間経っても治らなかった

申し訳ない気持ちでお断りの電話をかけてからベッドに倒れ込む



どのくらい寝ていただろうか

起きるともう夕方だった


台所に向かい水を飲もうとすると、おばあちゃんに声をかけられた


「昼頃にくるみさんが来て、風邪に効きそうなご飯持ってきてくれたよ」


「は?!起きればよかった...」

冷蔵庫を開けると、いくつか見慣れないタッパーが入れられていた


「受け取りありがと、ばあちゃん。くるみさんなんか言ってた?」

「元気になってちゃんと来週学校に来てって。あんないい子他にいないねぇ」

おばあちゃんの言葉に深く同意した



まだ身体がだるかった筈だが、くるみのご飯を見たら食欲が湧いてきた

登校日までには絶対治そう、と気力も湧いてきた



ーーーーーーーーーーーーーーー



登校日


くるみのご飯のおかげかすこぶる体調が良くなった

久しぶりに会えるので、まずは弁当のお礼をしよう、などと何を話すか考えながら教室に入る



ざわざわとした教室が静まり返る

そしてヒソヒソ声に変わった



(なんか嫌な雰囲気だな。)

そう思い黒板を見て驚愕した



急いで周りを見渡すと、まだ登校しているのは全体の4分の1くらいで、くるみの姿は無い


慌てて書いてある事を消そうとすると、くるみの友達の小松が登校してきた



「おはよー。あれ?何の騒ぎ?」

小松も黒板に気付いて固まる


大江が黒板消しを手に取り、消し始めると小松が慌てて止めた


「大江!ちょっと待って!」

「あ?何?」

自分でも驚くほど冷たい声が出た



「消す前に写真撮っとかないと!くるみにも知る権利あるよ!」

「くるみさんには見せなくていい!少しも傷つけたくない!!」

怒りのあまり大きい声が出てしまい周りがざわつきだす



「やっぱ書いてあったこと本当なんだ...」

「まぁあの2人距離近かったもんね」

「狙われてかわいそー」



バンっと黒板を殴ってしまい、教室中静まり返る


小松は気にした様子もなく写真に撮っている

その様子を睨みつけたことに気付いたのか睨み返してくる


「私だってムカついてんだよ!証拠残しておかないと犯人吊るせないでしょ!」


小松は一通り写真を撮った後、大江に続いて黒板を消していく

目には怒りで涙が浮かんでいる


小松のその様子を見て、八つ当たりしてしまった事を後悔した




びっしりと黒板に敷き詰められた文字を半分ほど消した頃にくるみが登校してきた











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