12.5話 欲と罪悪感
---大江 和の話---
國塚の部屋で、彼女を押し倒した
想像していたよりも、あっさりと覆い被さる事が出来て、同意も無いのに先に進みたくなった
その日から國塚の夢を毎日見ている
ガバッと起き上がる、時計の針はまだ3時を指していた
「はぁ......」
ここの所、毎日生理現象に悩まされている
夢の中では自分の欲を好き勝手にぶつけているので、せめて起きている時の処理は無心になろうと試みるが、シロクマ効果よろしく逆に國塚の顔が浮かぶ
(ごめんなさい...國塚さん...)
パタパタと雫が落ちて自己嫌悪に陥る
(俺、本当に最悪だ。)
自分の手が物凄く汚らわしいものに思えてくる
國塚の夢を見ないように睡眠時間を削って勉強した
勉強している時は無心でいられる
寝不足で頭が回らないまま過ごしていたら、いつの間にかテストが終わっていた
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「大江くん...」
声をかけられ振り向くと、國塚が立っていた
(あぁ、本物の國塚さんだ。)
何度も夢に出て、何度も使った國塚がそこに居る
(一緒に居たら汚しそう...さっさと帰ろう。)
だが大江の抵抗虚しく、顔を近付けられた挙句、手を引いて保健室まで連行された
薄暗い保健室に電気も点けず、ベッドに座らされる
この前のことを覚えていないのか、それとも意識されていないのか
「國塚さんは危機感とか無いんですか?」
意識されないままなのは、流石に我慢ならないので、もう本人に直接聞く事にした
「無いよっ!大江くんに勉強教えてもらって成績良くなってるし!睡眠時間削って無理して勉強してたら体調崩すよ!」
「......うん。分かった。」
伝わってすらいない
何もかも
もうどうでもいいや、と諦めて寝ることにした
自分が思っていたよりも疲れていたようで、すぐに眠気が襲ってきた
だが寝る直前、國塚が大江の手を握った
(國塚さん、その手は綺麗じゃないよ。君が思ってるより俺は純粋じゃない...)
手を振り解く元気も無いので、そのまま眠りにつく
汚れた手を國塚に握ってもらい、勝手な話だが許されたように感じ、気持ちが軽くなった
養護教諭の先生に起こされるまで、ずっと寝ていたらしい
久しぶりに夢を見ないで熟睡出来て、少し元気が出た
帰りはポツポツと途切れながらも会話が出来たので、また普段通りに戻れそうで良かった、などと考えた
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國塚とは1週間近く会話をしていない
テストも終わって勉強会をしなくなったので、一緒にお昼ご飯を食べる事も無い
勉強が捗るのは良いことだが、そろそろ話しかけようと思い話題を考える
「夏休みって予定空いてる?」
國塚の事を考えていたのがバレたのだと思うくらい、ぴったりのタイミングで話しかけられた
夏休みも会えると思っていなかったのでテンションが上がる
だが、提案されたのは海だった
(國塚さんの水着姿見てー...いや、良くない。そもそも俺が水着持ってないし)
流石にオシャレに無頓着な大江でも、スク水で國塚の横を歩くのは恥ずかしい
悩んでいると國塚が海での服装を教えてくれたので、一緒に海に行ける事になった
(嬉しいけど、この感じだと國塚さんも水着じゃないのか。)
またよからぬ事を考えそうになって頭を振る
海以外にも勉強会や花火大会も誘ってくれたので、夏休み中も毎週会える事になった
お金に関しては今後のために節約しているだけで、全く無い訳ではない
(こういう時くらい普通に使おう、なんなら日頃のお礼として國塚さんに何か買いたいな。)
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1週目
國塚と会うのも楽しみだが、初めての海にもワクワクしていたので、集合時間の30分前に駅に着いてしまった
財布と一緒にカバンに入れてきた単語帳を眺める
「大江くん!おはよ!」
集中してたらいつの間にか30分経っていたらしい
國塚の方を見ると、スラっと伸びた健康的な四肢に似合う可愛い格好をしていた。へそが出ているので目のやり場には困るが
「おはよう。...今日の格好も素敵です。」
部屋着以外の私服姿は初めて見るので、あまりの可愛さに言葉に詰まったが、何とか声を絞り出す
嬉しそうにありがとう、と言った笑顔が眩しい
電車で2時間と聞くと移動中勉強したくなるが、國塚がいる手前やめておいた
暇なので周りを見ていると、海に近付くにつれ他にも海に向かっているであろう乗客が増えていく
そして増える乗客に比例して、嫌な視線を感じるようになった
あの子可愛くね?とヒソヒソ話しているのも聞こえてくる
(もしかして俺ってナンパ避け出来る友人枠なのかな。)
ナンパなどされた事無いので分からないが、一緒に居るだけの大江がここまで視線を感じるのだから、本人にとっては相当煩わしそうだ
何とか牽制出来ないか考えていたら海に到着した
電車から出ると潮の香りがする
知識ではなく五感で感じる海は想像以上だった
感動していると國塚がご飯を用意してくれた
食事はどこかの店で食べると思っていたので驚いた
(わざわざ作ってくれたんだ...)
付き合いたいを通り越して結婚したくなってきた
テスト期間中の弁当を貰っていた期間だけ、凄く体の調子が良かった
それを機に食事の節約は辞めて、きちんと食べるようになったので最近胃が大きくなってきている
「ご馳走様でした。」
お礼を言って弁当箱を片付ける
すると國塚が急に立ち上がり服を脱ぎ始めた
「國塚さん...?!」
「じゃーん!水着着てきたのっ!どう?似合ってる?」
あまりに肌が見えていて、下着かと思い咄嗟に顔を逸らしたが、水着だった
水着姿を見たいとは思っていたが、実際目の当たりにすると刺激的過ぎる
(どうしよう...感想言わないと...)
「あー、うん。初めて見ました。えっと...その...水着の人間を。」
「???」
國塚がキョトンとした顔でこちらを見ている
(やばい、まじでやらかした。俺ダサ過ぎだな...)
混乱していて自分でも訳の分からない事を口走った
端的に言うと、初めて見た國塚の水着姿はとても可愛いといった事を伝えたかったのだが失敗した
だが國塚は気にしないでくれたようだ
遊びに行こうと連れ出される
國塚は楽しそうに駆け出すが、大江の方は気が気じゃない
発育の良い胸が揺れる度、周りの視線が集まる
(やばい、この子1人にしたら危なすぎる!)
急いで國塚の後を追いかけた
「えへへ!なんかすっごく楽しい!」
周りの視線など気にした様子もなく、満面の笑みで言われる
「俺も楽しい。誘ってくれてありがとう。」
(出来れば海に行く時は毎回誘ってくれ。守れるほど強くないけど、虫除けくらいにはなる...はず。)
浜辺に着くと、初めての発見だらけで楽しくなってしまい、ずっと國塚に話しかけていた
しばらく探索に付き合わせたが、國塚が疲れていそうだったので日陰になっている場所に腰を下ろす
波が来るとふくらはぎまで水が来て気持ちいい
ボーっとしていると、想像以上に水が来て下着まで濡れてしまった
海に入らないと言われていたので、濡れないと思い込み着替えを持ってきていない
帰りの事もあるので本気で焦ったが、國塚は焦った大江を見てくすくす笑っている
このやろう、という気持ちを込めて肩をぶつけると距離が近くなる
目線が落ちないように意識して顔を見る
少し離れた所で話し声が聞こえた
「おい。やっぱあいつ彼氏だったよ」
「ガチ?あんなもやしが?良いよ彼持ちでも声かけてみようぜ」
(...絶対に取られたくない。)
「手、貸して。」
見せつけるように手を繋ぐ
(付き合ってもいないのに嫉妬ばっかでかっこ悪いな...)
自分のみみっちさに嫌気がさすが、付き合っていないからこそ余裕がないのも事実だ
しばらく手を繋いだまま海を眺めていたが、急に國塚が1人で飲み物を取りに行こうとして焦る
咄嗟に引き寄せてしまった
抱きしめるような体勢になり、心臓が跳ね上がる
國塚は慌てて離れようとするが、1人で行かせる訳にはいかないので、逃がさないように更に抱きしめた
國塚の胸が大江の体で押されて、より強調される
目に毒だ
「國塚さんにとっては関係ないことだけど...」
我慢できずに指でくるみの首筋を撫でる
そのまま指を滑らせ体をなぞる
鎖骨の少し下で指を止めた。
そのまま胸に指を滑らせ、水着を下ろしそうだったが、こんな所でこれ以上したらアウトだ
「國塚さんが他の人から狙われてるの、俺が耐えられない。」
そう言って、國塚を立ち上がらせる
血が集まってきたのを感じたので、これ以上密着していたら困った事になる
「だから、これ着て。飲み物も一緒に取りに行きたい。」
急いで着ていたTシャツを脱いで國塚に着せる
汗臭くないか心配だが、着たくないと言われても聞いてあげる気はない
「わがままでごめん。」
國塚の手を取りロッカーまで歩き出す
(あーどうしよ...もっと触りたかったとか、いつからこんな変態になったんだ...)
水分補給後もまだ時間があったので海を散策していたが、國塚も汗をかいていて、貸したTシャツがペタッと肌にくっついて水着が透けている
(なんか...よりエロくなった気がする...)
申し訳無いが帰ろうと言って着替えてもらうしかない
國塚の水着姿をもっと見たい気持ちよりも、他の人に見せたくない気持ちのが勝る
そんな下心はつゆ知らず、國塚は素直に帰り支度を始めてくれた
出来る限り服は乾かしたが、帰りの電車で座るのは憚られた
國塚は疲れていそうだったので座っててもらい、他の乗客から隠すように國塚の前に立つ
國塚は目の前の大江をじっと見つめている
(移動が2時間もあるから暇なのかな?)
電車内で喋るのは良くないなと思い
「なに?」 と声は出さずに口を動かした
國塚も口を動かす
(う、い、の言葉か... ”好き“ とかだったら良いな。)
馬鹿らしい考えに思わず笑ってしまう
好き、だなんて言われていないが返事をする
「俺も」
(すごく好き。)




