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努力は恋を裏切らない  作者: 杷木 うきは
第一部 高校1年生編

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13/26

11話 生まれた距離




前期期末考査が始まったが、直前のハプニングにより集中出来なかったので不安が募る


最初の教科のテストが配られて、開始の合図がされると、紙をめくる音がパラパラと聞こえてくる


くるみも恐る恐るテストを表にして全体の問題を把握する



だが、テストの問題は大江が山を張ってた箇所が多く、不安に思ってたのが馬鹿らしくなるほどスラスラと解く事ができた


大江曰く、自分が先生の立場だったらこの問題は外せない、というのがあるらしい


今回もまたチャイムの音が鳴って絶望しているクラスメイトと違い、くるみには祝福の鐘のように聞こえた



(すぐにお礼言いたいけど、テスト期間が終わるまで我慢しよ...)


大江の姿を見るだけでこの前の勉強会を思い出してしまうので、おそらく大江も話しかけられたら迷惑に思うだろう



ーーーーーーーーーーーーーーー



5日間のテスト期間、ついに最後の教科のチャイムが鳴った


テストは終わったが、あれから話していないので、どう話しかけようか迷う


「大江くん...」

声をかけると大江は疲れた表情でこちらを見た


「あぁ、國塚さん。お疲れ様。」

「えっと...。色々ありがとう!お陰で今回も良い点取れそう!」

とりあえず伝えたかった事は言えたが、疲れた様子なのが気になる



「大江くん、大丈夫?隈が凄いけど...」

顔を覗き込もうと近付くと、スッと避けられた


「大丈夫。勉強し過ぎて、あんまり寝てないだけなので。」

そう言いながらふらふらと帰り支度を始める

あまりに心配なので家まで送ろうと思ったが断られてしまった


「せめて少し保健室で寝てから帰ろ?」

有無を言わさず大江を引っ張って保健室に連れて行く

大江の家は行ったことないが、通学は歩いて20分くらいと聞いているので、こんな暑さの中歩いて帰らせる訳にはいかない



テスト最終日で利用者が居ないと思ったのか、保健室には誰も居なかった


保健室は薄暗いが、これから寝るので電気は点けずに大江をベットに座らせる


みんなすぐに帰って息抜きに遊びに出かける人が大半なので、校内は静かだ



「國塚さんは危機感とか無いんですか?」

大江が少し冷ややかな目で言ってきてムッとする


「無いよっ!大江くんに勉強教えてもらって成績良くなってるし!睡眠時間削って無理して勉強してたら体調崩すよ!」

心配している気持ちも相まって、怒ってしまった

大江には無理せず健康でいてほしい


「......うん。分かった。」

大江は諦めた顔をしながら、ベルトを外し、夏服のシャツのボタンを数個外す



急に脱ぎ出すのでくるみは焦って目を逸らした

だが、大江は外したベルトをカバンの上に置くとベットに横になって目を閉じた


(あっ...!服を脱ごうとした訳じゃなくて寝る準備をしただけだった...)

勘違いした自分が恥ずかしい


腕で目元を覆っているので、しっかり寝られているかよく分からなかったが、もう片方の手を握って ”よく寝られますように“ と祈ることしか出来なかった



ーーーーーーーーーーーーーーー



「2人ともー、そろそろ起きなさい。」

肩を揺さぶられ、びっくりしてガバッと起き上がる


どうやらくるみも寝てしまっていたらしい

大江を見ると、まだ眠いといった様子で目を擦っている

(わぁ...子供っぽくて可愛い...♡)



「1年A組の大江 和くん?かな。体調悪かった?」

養護教諭の鶴先生が利用者の紙に記入している


「はい、勝手に利用してすみません。テスト勉強で夜更かししてしまって。」

くるみが無理に連れて来たのに、大江が言い訳もせず謝ってしまい、口を挟めなくなる


鶴先生は特に気にした様子も無く、気をつけ帰ってね、と見送ってくれた



まだ明るいが、さっきよりも涼しくなった道を2人で並んで歩く


「國塚さん。心配かけてすみません。おかげで随分良くなりました。」

「あっ...ううん!無理矢理引っ張ってごめんね!」

せっかく話しかけてもらったが、会話がすぐに途切れる


もっと距離を縮めたいのに、近付くと離れて行きそうで何も出来ないまま時間だけが過ぎていった



ーーーーーーーーーーーーーーー



「柚香ぁ〜...相談にのってほしいの...」

「ん?珍しいねーくるみが悩み事なんて」

どうしたの、と聞きモードに入るので早速本題に移る


「実は...良いなって思ってる人と仲良くなったんだけど、ちょっと色々あって最近距離を感じるのっ...」

「うーん... “ちょっと色々” が分かんないと何とも言えないな...」


当たり前の返事が返ってきたが、押し倒されました!なんて恥ずかしくて言えない



くるみは今までモテてきたが、お付き合いはした事ない上に、そういう知識は保健体育で習った内容以上は知らない


興味はあるが知識がないので、他人からの欲を孕んだ目線にも気付かない事が多い


だが大江の行動は、そんなくるみでも分かる程の、初めて自分に欲を向けられた経験だった



「じゃあもう告白したら?」

「......!!」

告白される事が多過ぎて自分からするという考えが頭からすっぽり抜けていた


「確かに!でもフラれたら怖いよぉ...」

「こんな可愛いのに振る人居るか...?」

くるみもそう思うが、最近の大江は距離を感じる

あんな事までしておいて距離を取られる理由が分からないので、100%告白が成功するとは言えない


1%でも失敗する可能性があるなら言いたくない

それにもし両思いでも、勉強したいからとか言われてフラれる可能性も捨てきれないのが大江だ



「大江もくるみの事好きだと思うけどねー」

「そうかなぁ...って、え?!何で大江くんって分かったの?!」

濁して伝えていたのにバレていて驚く


「流石の私でも気付くよ...もうすぐ夏休みだし、海でも行って水着姿で悩殺してきたら?」

若干アドバイスが雑になってきた気もするが、柚香のおかげで、もうすぐ夏休みだと思い出した


「柚香、ありがと♡誘ってみる!」



用事があれば話しかけるのも気が楽なので、さっそく予定を聞いてみる事にした







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