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09 覚悟と昏睡①


 後始末が面倒だった。


 まずトライハント伯に神弓の勇者の滞在がバレてしまったとのことなので、密偵ミヤンガを介して二人にその旨を知らせるよう指示したのだが、これはすぐに早まった判断だったと天を仰ぐことになった。


「そうか。始末したか」


 キィーフ貴族であるメルサム・テラスエンド子爵の二人の息子、兄ポッツと弟ケッツとの戦いの顛末(てんまつ)を報告したところ、伯爵は心底残念そうな顔をしたのだ。


「是非ともその場に立ち会いたかったものだが……フフ、どうにも今回のわしは間が悪いというか、ご褒美にはありつけぬようだな」


 いやいや、見られていたらちょっと気まずかった。伯爵的にはかなり堅い線で人質は切り捨てろ派だろうから、あの場での俺の煮え切らない態度は確実に心証を損ねていたに違いない。


「しかし、国外にまで名の知れた天才兄弟を失ったとあれば、さすがにキィーフも黙ってはおるまい。いよいよ外圧に備えるべきかもしれんな」


「申しわけありません」


「よい。イボリアスたちの件もある。テイダー陛下にはきっちりとおまえの正当性を訴えておこう」


 伯爵は頼もしい約束をしてくれた。こうして戦車隊は、休息日を挟みはするものの王都ランスへ向かうこととなったのだ。


 そう。あわててミヤンガを動かすことはなかった。先走ってしまったのだ。


 どうにも、疲れが溜まっているのかもしれない。


 伯爵の天幕を後にし、屋敷へ戻ったそんな俺を、家臣団が出迎えてくれた。


「おつかれさんでした!」


 ベギナラたちが左右に列をつくって、一斉に声を浴びせかけてくる。全員、頭を下げる角度がビタッと揃っていた。

 ……うん。これを(はた)から第三者に見られたら、そりゃ確かに変な噂も立てられるわな。


「ただいま帰った。全員無事か?」


 とはいえ俺も度し難いことに、それが何とも心地良かった。長いつき合いで毒されているのかもしれない。


 つくづく頼もしいヤツらだった。


 俺が不在の屋敷を襲われ、確かにティアージュを(さら)われてしまったけれど、こいつらがいたからこそ襲撃者たちも返り討ちにできた。


 見た目はアレだが、信じて任せられる者たちだった。


 もし今回のイボリアスのような裏切りがうちで起こるとしたら、実際それは俺の不徳に原因があるのだろうと諦めがついてしまうくらいに。


「すまなかったな。せっかくの祝いの席だったのに」


 当たり前のように列に並んでいるロサリグに苦笑しながらも、俺は感謝の気持ちを込めてその肩を軽く叩いた。


「いえ。むしろ剣で結びついた俺たちに相応しい余興だったかと」


 ロサリグの活躍は聞いていた。


 実力的には当然なのだが、他の連中が酒の影響で足取りがままならなかったり、そもそも油断していたりで本来の力量を発揮できない只中(ただなか)嫁さん(シキ)とのコンビで鮮やかに賊を蹴散らしたという。


 口は悪いが義理堅く、何より強い男だった。


「あれ、その嫁さんは」

「お姫さんのとこです」


 あー。


 これ、完全な事後報告になるだろ。


 まさかティアージュがそれで怒るとは思えないけど、シキも切り出しづらいんじゃないだろうか。


 ……まあ、何もかも急転直下だったからなー。


 二人の時間を邪魔するのは無粋だけど、幸いアポは取ってある。フォローしに行かないとだな。














読んでいただきありがとうございます。

本作と同じ世界での物語をノクターンノベルズにて連載しています。


「ぼっち勇者のドーナツクエスト」

https://novel18.syosetu.com/n1164jk/


ノクターンな作品です。叡智な描写でも許容できるぜーってなかたは、どうぞよろしくお願いします。


あ。ブックマークとか、↓のあたりの星評価なんかもしていただけると作者が嬉しくなります。


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