表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女で娼婦な男爵夫人ヌイヴェルの忙しない日々  作者: 夢神 蒼茫
第14章 おとぎの国の魔女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

512/516

14-3 報告 (2)

「姉上が生きていたとはどいう事だ!?」



 眼を見開き、ユリウス様の両肩を掴んで飛び掛からんばかりの勢い。


 フェルディナンド陛下の狼狽ぶりがこれでもかと見て取れます。


 まあ、全員が驚いた出来事でありますし、特に姉君への思い入れのある陛下であれば、こうもなりましょうか。



「陛下、ひとまずは落ち着いていただきたいですわ」



「落ち着いていられるか!」



「落ち着いていただかない事には、順を追って説明ができません」



 そう言って、私はサッと陛下とユリウス様の間に割って入ります。


 普段は冷静沈着ではありますが、姉の事となるといつもこうですからね。



(まあ、私もその“姉”ではあるのですが、家族というよりかは古い顔馴染みとして付き合ってきた期間が長いですからね。それにビシッと“君臣の間柄”を通すようにと言い切っておきましたし、その点では私の陛下の関係は“姉弟”よりも“主従”と捉えられます。しかし、アウディオラの場合は……)



 ずっと慕って、そして、事故で急死した事になっておりますからね。


 しかも、その事故が“雲上人セレスティアーレ”の騒動に巻き込まれた末の死亡であったと知ったのですから、余計にその事実が重くのしかかっていました。


 それが実は生きていたというのです。


 陛下の気持ちとしては、何はさておき、不甲斐ない自分を謝し、姉へのこれ以上にない詫びを申し上げる事でしょう。


 そして今後、そうした事態にならないよう、ガッチガチに厳重警備を手配し、何が何でも守ろうとするのは明白。



(まあ、そんなものはアウディオラは求めていません。仮に陛下がアウディオラの前に進み出て、どんな言葉を投げかけようともその心には響かないでしょう。そもそも、響くための“心”を持ち合わせていないのですから)



 今のアウディオラは、はっきり言えば“心を持たない怪物”です。


 人は誰しも“心”を持ち、“魂”に熱を入れて生きていきます。


 しかし、アウディオラはその“心”が消えてしまっています。


 彼女の魔術【愛すべきものすべてに(ラモーレ・トゥト)】は、一定以上の共感を得た相手と同化することができるというもの。


 そして、同化した相手の姿、能力、そして、“記憶”さえも共有してしまえる。


 彼女との問答で飛び出した「豆茶カッファと砂糖とミルクを混ぜて、それを再び分離できるか?」というと問いかけそのもの。


 混ざり合い、そして、それらは元に戻る事はない。


 しかし、それは同時に“乳入り豆茶(カフェオレ)”という新しい世界の創造にも繋がる。


 “現世界の破壊”と“新世界の創造”という相反する事象が、たった一つの杯の中で行われる。


 それを比喩しての言葉であったのだと、私は考えております。



(愛に飢えているからこそ、愛を欲し、結果、人類すべてを自分の色に染め上げて、それが愛だと強弁する。どこまでも狂人の発想ですわね!)



 ただ、放っておけないのもまた事実。


 厄介なのは、その“狂人の戯言”を“現実の事象”に昇華してしまえるだけの、知略を備えてしまっていると言う事です。


 おまけに、彼女に勝るとも劣らぬもう一人の魔女レオーネもそれに加担してしまっています。


 好きにすればと突き放すには、あまりに相手の存在が大き過ぎます。


 何より、私はジュリエッタを連れて行かれたと言う事実がありますからね。


 ここで“傍観”という選択肢は無い。


 妹を見捨てたとあれば、それこそ“姉”失格ですわ。



「陛下、私がご説明しますが、これを聞いてからは一切逃げられなくなりますが、御覚悟はよろしいでしょうか?」



「私は逃げも隠れもせんぞ! 早く状況説明を!」



「ですが、その前に一つ、私のわがままを聞いてください」



「何をだ?」



「この話を聞けば、陛下は確実に中央大聖堂グラン・カテドラルに軍を率いて突貫されるでしょう。その際には、絶対にジュリエッタの身柄を迅速に確保し、私の下へ連れてきてください」



「……先程の言葉、ジュリエッタを見捨てると言った事を怒っているのか?」



「それについては怒っておりません。むしろ、一国を差配する君主としては、私情に流されない振る舞いとしては及第でございます」



「では、なぜにジュリエッタの事を優先すると?」



「第一に後回しにすると、間に(・・)合わなくなる(・・・・・・)という事です。騒動に巻き込まれて、確実に命を落とします」



「まあ、冷静に考えると、あの娘を生かしておく理由はどの勢力にもないしな。それこそ、“人質”にするか、“見せしめ”にするかで、またややこしい事になる」



「なので、優先的に手元に戻しておきたいのです。なにより、第二として、今後の、“未来”の事を考えますと、絶対に彼女の事を死なせてはなりません」



 そして、私はユリウス様に目を向ける。


 ここが重要。


 ユリウス様はジュリエッタを愛している。


 政略結婚でアリーシャ様と結ばれる事になっておりましたが、それについては心は上の空で、義務的、事務的に付き合っていただけ。


 皮肉な事に、相手もそうであったのですから、なんと空っぽの夫婦関係になるのかと思っていたら、今回の事件で全てがご破算ですからね。


 なので、ユリウス様の心は再びジュリエッタへの想いで埋め尽くされる。


 反動があった分、前以上に。



(だからこそ、それが何かしらの事情で無惨に損なわれるような事があれば、ユリウス様が壊れてしまう。そして、心の壊れた人間を操る事くらい、“魔女”であるならば造作もない話です)



 私にしろ、アウディオラにしろ、レオーネにしろ、魔女全員が“心を読み取る魔術”を行使できるのですから。


 心の隙間に入り込むくらい、簡単に出来てしまう。



(そうなればアウディオラには“共感”があり、息子を取り込む事が出来てしまう。それは絶対に阻止! “未来”のためにもね!)



 アウディオラがユリウス様に誘いをかけた事実がある。


 それは親子の情か?


 それとも別の意図があっての話か?


 理由はまだ見えてきませんが、ろくでもないのは間違いないでしょう。


 だからこそ、ジュリエッタの救出は必須事項!


 ユリウス様が自棄を起こさないためにも!


 そこのところは陛下もご理解してください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ