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魔女で娼婦な男爵夫人ヌイヴェルの忙しない日々  作者: 夢神 蒼茫
第13章 死体は語らず、ただ指し示す

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13-68 裏切りと報酬 (1)

「すぐに追いかけなくては!」



 私は若干取り乱しつつ、そう叫ぶ。


 このままでは妹分ジュリエッタが処断されてしまう可能性が高いのです。


 それはすぐに皆も納得のようで、揃って首を縦に振る。


 特に、ユリウス様は気が気でなく、落ち着かれないご様子。



(結局、この若者も不器用ですわね)



 こういうところはフェルディナンド陛下によく似ております。


 普段は冷静沈着かつ理知的でありますが、“執着”が心を縛り付ける。


 しかも、今回の騒動の元凶が自分の母親となればなおの事。


 そのアウディオラは笑い声をあげて挑発してきます。



「あらあら、もう行ってしまうのですか? もう少し月見の宴を続けていたいのですけどね。折角、久方ぶりに“家族ファミリア”との再会だと言うのに」



 挑発してくるアウディオラは実に気に障る物言いを言い放ってきます。


 “家族ファミリア”という言葉が実に鼻に突くも、事実である分、反論しづらい。


 私とアウディオラは三つ子で、同じ時に産まれてきた姉と妹。


 ユリウス様とアウディオラは、血を分けた親と子。


 アルベルト様とアウディオラは、互いに仮面を被る腹違いの姉と弟。


 これだけ聞けば、“家族”という言葉は正しい。



(もっとも“家族”という言葉にどれほどの価値があるのか、それは当事者次第ではありますが)



 実際、その価値を低く見ている者がいます。


 すぐ目の前にいるアリーシャ様がそれ。


 自分の婚儀をなかった事にして、愛しいお兄様と結ばれるために、父親すら排除してしまった歪んだ感情の持ち主。


 アウディオラにしても、自分を捕まえに(実際はベアトリンを捕まえるため)やってきた弟のアルベルト様を負傷させています。


 そして、息子を邪道に引き込もうと言う仕草も実に不快。



(目の前に倒すべき者がいる以上、まずはそれを優先するべきでしょうか。それともジュリエッタを追いかけるべき?)



 現状、戦力的にはこちらが優勢。


 アウディオラに取り込まれた者の能力を使えると言っても、所詮は一人。


 手数で押さえ付ける事も可能でしょう。


 しかし、だからこそ、わざわざこちらを集めた点が解せない点でもあります。


 事件の関係者や捜索に加わっている者、その多くがここに集ってしまっています。


 自分に注目を集め、ジュリエッタを誘拐させると言う“陽動”の可能性もある。


 ジュリエッタにこだわる理由も、ユリウス様を無理やり引き込むためのものだとすれば、やはり回りくどい(・・・・・)


 決断に迫られる中にあって、まず動いたのがマルコ様。


 懐から小さな筒状の物を取り出し、それをアウディオラに向ける。



(あれは“フチーレ”!? マルコ様もお持ちであったの!?)



 レオーネが使っていた武器ですが、それよりかは小さい。


 私が見た“フチーレ”が片手で構えて、もう片方の手で引鉄を操作する仕組みでしたが、今、目の前にあるのは小さい。


 わざわざ片方の手を添える必要もないくらいに、取り回しは良さそうですわね。



「あら嫌だわ。マルコ、あなたが“拳銃ピストイア”を持っているなんて、レオーネから聞いていないのですけど?」



「だろうな。私個人の手勢を用いて、ネーレロッソ大公国の銃兵ガンナーから強奪しておいたものだ。先日の宴の騒動の際に、あわよくば宮殿への襲撃を試み、フェルディナンド陛下の暗殺を企てていた一団に奇襲をかけてな」



「何食わぬ顔で宴に出席しておきながら、“裏”でそういう事をやっていたの。従順な姿勢で裏切る素振りも見せずにいたのに」



「私を信用し過ぎたな、大公女プリンチペーサの皮を被った姦婦……。いや、怪物の方が妥当かな?」



「酷い言い様ね~。こんな美女をそこまで面罵するなんて」



「こちらを舐め過ぎだ、痴れ者め。何食わぬ顔と言うのであれば、密かに公都キャピターレに事前の取り決め以上に兵員と銃器を持ち込んでいた貴様らであろうに」



「あくまであわよくばという話だったのだけど、どうにも虫が良すぎましたか」



「なので、お前やレオーネが作った武器で、開発者自らの命を絶っても良いのだぞ! 分かっているのか!?」



 普段は落ち着いた雰囲気のマルコ様とは思えぬ程の激情。


 それほどまでにお怒りというわけですか。


 何を約束し、何を得ようとしたのかは分かりかねますが、ここで“裏切る”という選択肢を取られたのは確実。


 そして、その“求めるもの”についてマルコ様の口から飛び出す。



「破滅を求める魔女よ、妹を、ベアトリンを返してもらおうか!」


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