246 ドワーフの隊商
誤字報告ありがとうございます!
「お帰りなさい、アッシュ君」
毒沼のダンジョンを出て攻略拠点に帰って来た俺はベルファに抱き着かれた。
「ベルファじゃないか。一体どうして?」
「ドワーフの納品に流しの職人として立ち会う許可を貰ったのです」
俺の依頼だからベルファを送り込んだのか。ガングフォールが取りそうな手じゃない。恐らく他のグランドマスターの意向か。少し遠くにベルファの叔父であるボウリンの声が聞こえる。納品予定の魔導鎧を始めとした数々の装備を点検しているのだろう。この装備が届くのを待って最下層まで突っ込む予定だったのだが、何事も予定通りに進まないものだ。
「デグラスはまだ大変だろうし、余り無理はするな」
「ええ、でもアッシュ君に会うのは優先事項に決まっています」
「アッシュ、この人は誰?」
「主君?」
後ろから殺気が!?
「あ、ああ……紹介しよう。ハーフドワーフのベルファだ。俺が助けるために一時ラディアンドを離れると話しただろう?」
「ベルファと言います。アッシュ君の現地妻です、以後お見知りおきを」
そして容赦ない爆弾を叩きこむ。
「「妻ぁぁぁ!?」」
「アッシュ君はドワーフ族を救った英雄です。妻を宛がわなければドワーフ族の名折れとなります。他に候補が数人居たのですが、アッシュ君と特別な関係の私が他を説得しました」
前回包囲されているデグラスを解放した時の対応からしてそう思える節があったが、デグラスのドワーフ族では「決着がついた話」となっているみたいだ。名誉ドワーフとは言え、ドワーフと血縁が無ければ訝しがる者は多く居る。
「「……」」
「それに折角ですので奥様に挨拶をと……」
「それはまだ(・・)早い!」
赤面したアメリアが叫ぶ。
「語るに落ちるとはこの事。私はリル、主君の一番の愛人。ほどほどによろしく」
「はい、こちらこそ」
二人の間に火花が散っている気がする。おかしい。ダンジョンで命懸けで戦っていた時より命の危険を感じる。
「私を立てる気があるのなら殊更騒ぐことも無いでしょう。私はアメリア=ラディフェル。一時的にこの地を治める領主です。それはそうと、私の知らないアッシュの事を色々知っているのでしょう?」
「それはもう、たくさん知っています!」
「アメリア、私達も負けていない過去がある」
「お、俺はボウリンから装備の受け取って来る! 三人はゆっくり話すと良いんじゃないか!?」
返事を待たずに逃げる。女三人のトークに割り込むなんて命がいくつあっても足りない。三人は三人で勝手に盛り上がっているみたいだし、大丈夫だと信じたい。流石に刀傷沙汰に発展する雰囲気は無いから一安心だ。
「ボウリン、久しぶり!」
「応、アッシュじゃないか。ブツは持ってきたぜ」
今回の隊商はボウリンが責任だ。俺の義叔父だからこその大抜擢だ。ドワーフは種族的に近親者を優遇するので、先ほどのベルファの現地妻アピールもそれを周知させるための一環だ。
「これが依頼の魔導鎧か。格好良いな」
デグラス籠城戦で無事だった魔導鎧を一体急ピッチで修理して貰った。かなりの無理を言っている自覚はあるが、デグラス解放の功績からこの無理分を差し引く形で請け負って貰った。湖からコップ一杯取った感じだとガングフォールが愚痴っていたらしい。
「恰好は当然として、内部もしっかり造っているぜ。ぶっ壊すのが得意なアッシュのために余剰魔力を流す装置を取り付けてある」
強化魔改造費まで含めたらコップ三杯分くらいにならないかな?
「へぇ。ならその余剰魔力で攻撃とか出来るのか?」
「「余剰で攻撃!?」」
ボウリンと近くのドワーフが一斉に声を上げる。
「天才か!」
「だが攻撃なら垂れ流しでは……」
「時間差……貯める……行けるか?」
ドワーフ達が俺をそっちのけで話し出す。技術至上主義だけにこうなったら長い。
「やれやれだ。魔導鎧が専門じゃない俺が選ばれた理由が分かるぜ」
「ボウリンはどっちかと言うと通常装備だもな」
「応よ! それも修理が専門と言う外の方が重宝される鍛冶さ!」
「ダンジョン攻略で痛む装備が多い。ボウリンは人気者になりそうだ」
「滞在している間は稼がせて貰おう。俺は三日位で帰る予定だが、何人かは技術指導員として残るらしい」
「指導? 採掘か?」
初耳だ。
「応、出来の悪い銀の塊が転がっているだろ? それを見つけたドワーフが代官に直談判しちまって」
ボウリンは複雑な表情を浮かべる。本来は領主のアメリアを通すのが筋だが、アメリアがダンジョンに入っている間は若グイードが代理だ。領主と代官次第で拗れるが、ドワーフに取っては銀の方が人間関係より大事だ。
「はは! 上手く行くさ。それより銀が出たんだ。金まで出たらどうなる?」
指導員が残るのなら金の採掘も一発でバレる。仮定と言う体で確認しておく。
「そうなったらベルファまでツルハシを持ってダンジョンに吶喊だ」
ボウリンが笑いながら言う。ベルファまで出るのは予想外だが、この行動は凡そルルブにあった行動パターンだ。
「22に出た」
俺は出来る限り自然に見えるようにボウリンに耳打ちする。ボウリンの両目が見開いて固まる。
「明日まで内緒だ」
「う、うむ。指導員には?」
「任せる」
これで話は行く。後はアメリアが交渉でどれだけ有利な条件を勝ち取れるか次第。ダンジョン内で話し合った計画にドワーフが加わるのなら全部一から作り直しだ。
応援よろしくお願いします!




