表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
242/416

240 侯都の現状 上

 昨日と同じ会議室に集まる。上座にはハインリック。左側にはアメリアとレイナー。右側には俺とリル。侯爵家の内情をまだ知る必要が無い若グイードと全力で遠ざけたい宰相家の騎士爵たちは未参加となっている。この中では俺だけが完全な部外者だが、一騎当千の戦闘能力とリルの存在を鑑みて特別に参加を許されている。


「侯爵家の調査と姫様の報告で、一連の事件の黒幕は奥様で間違いない」


 ハインリックが重い表情で言う。確かにこれは宰相家の人間には聞かせられない。


「それでどうするのかしら?」


 アメリアは領主業が無ければ今にも飛び出して焼き殺しに行きそうな形相で問う。怒気が無い分、逆に怖い。アメリアの中であの女を処分する事は決定事項であり、それを効率的にやるために不要な感情は必要ない。こうなったら俺ですら軌道修正は不可能だ。侯都が巻き添えで全損しない様に気を配るくらいか?


「現在は離れで軟禁しています」


「離れを焼けば良いのね?」


「調査が終わるまで待って頂ければ!」


 ハインリックが自制を促すが、ハインリックはアメリアに負い目がある。そして今のアメリアには我を押し通すだけの凄みがある。


「あの女の事は好きにしろ。それより調査結果と遅れた理由だ」


 何故ここまで合流が遅れたのか。何故嫁入りした女があそこまで侯都の裏社会と強いコネを持てたのか。孤児院に逃されたアメリアの事を15年近く察知できなかった女の動きにしてはおかしい。


「なら遅れた理由から話そう。調査が捗ったのはこれのおかげだ。事の発端は5月10日だ。


 奥様が突然牛を一頭食べたのだ。異常ではあるが、軟禁と取り調べのストレスから来るものだと結論付けられた。次の日も牛一頭を平らげ、足りないと文句を言い出した。流石にこれはおかしいと思いヒーラーを手配したが、回復魔法を受け付けなかった。『魔力を食われた様な気がする』と言う証言があるのだが、意味不明な戯言として扱った。


 事態は5月13日の早朝に大きく動いた。奥様が奇声を発し、泡を吹いて倒れた。侯爵家は上も下も大騒ぎだ。そして5月16日まで侯都は戒厳体制で人の出入りを大幅に制限した」


「となると私が送った使者は侯都に入れなかったのね?」


「いや、侯爵家の騎士爵だったので手紙そのものは到着した14日に受け取っている。奥様の対応で侯爵家が機能不全に陥ったために合流が遅れた。その事については申し訳なく思うが、奥様が死ぬとラディアンド地方の政治バランスに多大な影響が出る」


「主君、私も巻き込まれた」


 リルは予定より少し遅く5月12日にワイバーン便で侯都に到着していた。5月13日にこちらに向かう予定が白紙にされた。


「大変だった。一時はリル殿が毒を盛ったと騒ぐ者が出て、その対応に更に人手を消費した」


「してくれたら良かったのに」


「無理。人知れず離れに潜入して対象を暗殺する事は不可能。侯爵家のアサシンメイドの目は誤魔化せない」


「リルで無理なら毒を盛られた線は無いか? ちなみにリルならどうやって殺す?」


「玄関から堂々と入る。正面戦闘なら勝てる」


 リルが意外な事を言う。詳しく聞いてみると「なるほど」と膝を叩く。アサシンメイドは【隠密】や【暗殺】のスキルレベルが高い。逆に【剣術】みたいなスキルを持っていないか、持っていてもスキルレベルが低い。レイナーの様な正面戦闘が得意な人間が滞在しているので本来はバランスが良い。両者の不得手な戦闘分野で有利を取れるリルが天敵なだけだ。


「とにかく! 奥様が目を覚ましたが5月16日だ。そして翌日の17日に急いで出発した」


 話題を変えるべくハインリックが殊更大声で言う。


「女の状況は? 元に戻ったのか?」


「知る限り過食はまだ続いている」


 となるとこれは不味い。


「アッシュ、何か知っているのね?」


「日にちの符合が気になるだけだ」


「「日にち?」」


「トロールをおびき寄せる魔道具が設置されたのが9日の夜だ。過食が始まったのが10日だ。その魔道具を破壊したのが13日だ。昏倒も13日だ」


 俺の話を聞いて全員が顔面蒼白になる。


「魔道具の起動と運用に必要な魔力はあの女が提供していたと言いたのかしら?」


「そうだ」


「魔道具は破壊した。一件落着で、後は閣下の裁可を待つだけじゃないか?」


 気味悪がったレイナーが早口で言う。


「なら何故過食が続く」


「「……」」


 全員が俺の続きを待つ。


「ここからは完全な推測だ。モンスターを呼び寄せる効果は継続している」


「最近トロールを見かけていないのにか! それどころかモンスターの数が減っている!!」


 レイナーの発言が俺の説を補強する。


「ここじゃない。侯都だ。あの女が『生きた魔道具』となっている」


「「何だって!!」」


「邪教徒が得意とする外法だ。だがあんな高度な魔道具を用立てられるか?」


 キスケのスカルワンドと原理は同じだ。ただ今回のはスカルワンドに比べると技術が月と鼈だ。


「それについては私の持ってきた調査結果にヒントがあるかもしれない」


 そしてハインリックが驚愕の真実を開示する。

応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ