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237 トロール戦

誤字報告ありがとうございます。

「アメリア様! 神官長の屋根裏にそれらしきものが!」


 篝火の影響か顔が必要以上に暗いレイナーが宣言する。アメリアの命で神殿を調査しだすと神官長が異を唱えた。発見されたトロールを呼び寄せているマジックアイテムが神官長の不正蓄財に紛れる形で隠されていたのだから、彼が調査に反対したのも頷ける。そのやり取りで数時間を無駄に浪費し、外はすっかり暗くなってしまった。アメリアの恐れていた通り、暗い中でも夜目が効くトロールは休みなくこちらに迫っている。そして俺は経験値が稼ぎやすい状況が続いている事に満足している。とは言え、徹夜する事になりそうだから昼過ぎに少し寝ておけば良かったと思わないでもない。


「破壊したら効果は無くなります?」


「たぶん。だが無くなった場合にトロールがどう動くかは分からない」


 ルルブのリプレイだと破壊してそのままエピローグって感じだ。追加でモンスターが攻めて来ようともプレイヤーの敵では無いし、NPCが対処するのなら描写する必要が無い。経験則が言うと、視認できる範囲に居るモンスターは継続して攻めて来る。


「となると今壊してトロールの動きが変わるのは面倒ですね」


「朝日と共に壊すのが良いかと」


 マジックアイテムの影響を受けているトロールの動きは対処できる。人間が十全に戦える朝に壊そうと進言するレイナー。


「効果が長引くと危険だ。前線が持たん!」


 即時破壊を進言するガイルズ。ガイルズの奴隷農兵はもう一日は問題無く持つ。しかしここの農兵は持つか持たない以前に戦力にならない。村外勢力の負担と功績が増えすぎる。侯爵家の騎士達を投入して縄張り争いに発展されては困る。


「いっそ俺の【アイテムボックス】に収納するとか?」


「トロールを使って悪行三昧をすると告発されたら有罪確定ね」


 俺の名案はアメリアに否定される。


「それに邪教関係のマジックアイテムの個人所有は危険だ」


「一体どういう経緯で敵はそれを手に入れたのか。終わってからも頭の痛い問題だ」


 レイナーとガイルズまで否定的だ。


「分かった、分かった。破壊で良いさ」


 ここは諦めるしかないか。マジックアイテムの中には破壊する事で何らかの呪いを振りまくものがあるとルルブに書いてある。だがこれを話すと「詳しすぎる」と疑われる。なので【アイテムボックス】に収容して調査の時間を稼ぎたかった。この分だと近くでそれを確認する事まで禁止されそうだ。何事も無いと良いな。


「マジックアイテムの破壊は朝一に決行します。トロールとの戦いはアッシュとガイルズに一任します。村内から必要な戦力を編入する許可を与えます」


「「はっ!」」


 アメリアは軍事作戦のフリーハンドをガイルズに与える代わりにマジックアイテムの処理はレイナーの言を優先する。ガイルズ相手に弱腰すぎると非難されそうだが、指揮の一本化そのものは上策だ。領地持ち貴族でその決断を出来る者は余りに少ないし、王国全体の防衛を一握りの英雄に依存している結果に繋がっている。


「ハンナのパワーレベリングが最重要だ。他はガイルズに従おう」


「助かる!」


 俺がガイルズに任せると言えば、俺に表向き従う冒険者たちも右に倣う。


「あら、私も当然戦力として扱うのでしょう? 何せトロールに効くのは私の【火魔法】ですから」


「ぜ、善処しよう」


 何故かアメリアまで参戦すると言い出す。ガイルズはアメリアの気迫に気圧され承諾させられる。侯爵家の者が止めようとするが、マジックアイテム破壊の段取りを任せると言われたら反対は出来ない。領主自ら戦うと言う美談っぽくなっているが、俺は知っている。アメリアはトロールを大量に焼いて位階レベルを上げるつもりだ。限界位階レベル21まで到達出来るとは思わないが、19まで近づけるだけ近づけた方がダンジョン攻略で楽が出来る。


 そうして俺達はトロールとの夜戦を本格的に開始する。ガイルズは村から夜目が効く四人の狩人だけ編入し、彼らにはトロールに火矢を放つ仕事を与える。燃えているトロールが目印となって、篝火の範囲に到達する前から重装歩兵の用意が整う。【水魔法】以外の属性魔法からの援護射撃を持って直接戦闘が開始される。長期戦になるので常に半数は休めるように手配する。それで押し込まれそうになれば俺かアメリアが力技で押し返す。ガイルズの基本に忠実な指揮がここまで有効だとは驚きだ。彼の評価を上方修正するしかない。


 ハンナのパワーレベリングは慣れない武器の使用で多少まごついたが「やはり足を焼くか」と呟いたら見違えるように動きが良くなった。不思議だ。アメリアも「当然です」と突っ込むし、男には理解できないものなのか。朝の三時頃にハンナが位階レベル10に到達したので、ここからは前線組も更に楽が出来るはずだ。


「アッシュ、手数を増やして」


「村人で戦えそうな奴は残っていたか?」


 ガイルズは侯爵家の戦力を使いたくない。となると村人だが、使える村人はほぼ動員している。未成年のスフィーを出すと色々後で言われそうだ。


「奴隷冒険者を【再生】で復帰させられない?」


 確かに! 俺がハンナとマリーメイアのパワーレベリングを無理強いしたのは奴隷冒険者の欠損を治し現役復帰させるためだ。位階レベルが高い数人の四肢を再生するだけで前線の安定が増す。


「エミール! 村人を使い、俺が指定する冒険者をここに連れて来い!」


「はい!」


 エミールが屯している村人に声を掛け、俺が指定した人間を回収に向かう。これくらいは役に立ってもらわないと困る。


「ここで治療するの?」


「前線から二人を引き抜くのは危険だ」


 ハンナとマリーメイアが留守の時に誰かが致命傷を負っては大変だ。それに魔力回復ポーションは俺の【アイテムボックス】に入っている。ここで治療させるのが最善だ。二人が【再生】で忙しい間はダンに頑張って貰うしかない。やはりあの男もパワーレベリングさせておけば良かったか?


 200体を越えるトロールの死体が俺の【アイテムボックス】に収容された頃に太陽がやっとその姿を現す。そしてレイナーの指示で最後に残っている侯爵家の騎士爵がマジックアイテムを破壊しに神殿へ入る。


「これで一息つけるかしら?」


 疲れが見えるアメリアが俺に項垂れ掛かって言う。


「状況は確実に好転する」


 そう伝えるのとほぼ同時に神殿にある神官長の部屋が大爆発を起こす。俺たちの布陣している場所の反対側だったので爆風の直撃は無いが、吹き飛ばされた様々な物が俺達を襲う。咄嗟にアメリアを庇い、トロールが遠距離攻撃主体に切り替えた場合の保険で詠唱しておいた【風の壁】を発動させる。これで前線の混乱を最小限に抑え込まねばトロールによる大きい被害が出てしまう。


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