表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/416

235 襲撃 下

誤字報告ありがとうございます。

「緑の半巨人?」


「あんなモンスター見た事ねえ」


 騒ぐ奴隷農兵を無視して、俺は敵の正体を考える。沼地に生息する緑の半巨人と言うキーワードからしてトロールかその亜種だ。火か酸で焼かない限りほぼ無限の再生力を持つと言う非常に厄介なモンスターだ。しかしこっちには【火魔法】が得意なアメリアがいる。


「落ち着け! 敵はトロールだ。弱点は火、それ以外だと再生する!」


 俺が一喝して兵を落ち着かせる。未知が既知に代わり味方は多少落ち付く。


「アッシュ卿、注意する事は?」


「爪に毒、賢くない、力押しが主体」


「了解した! いつも通りやるぞ。盾、前へ!」


 ガイルズがトロールの特性を確認し、命令を出す。従士一人と農兵五人が小隊として動く。そこにガイルズが全体指揮と援護攻撃する事で農兵主体とは思えないほど鮮やかにトロールとやり合う。ただし再生を止める方法が無いので農兵の体力が切れたら一気に崩される。


「アッシュ卿、西から正体不明の輩が近づいています! こちらへの援軍は難しいです」


 北からの伝令が最悪の報告を持って来る。


「なんだと!」


 不味い。【火魔法】スキルの使い手に空きが無い。何か考えないとここが持たない! 確かリプレイの一つに低レベル冒険者が選択をファンブルしてトロールのねぐらに突っ込むのがあった気がする。あの時はギリシャ神話のヘラクレスを真似て松明でトロールを焼いていた。松明の熱量で足りるか? とにかく試すしかない。


「松明だ! 村人に松明を灯させろ!」


 そう叫びながら【アイテムボックス】からダンジョン攻略のために集めた松明を出す。


「ハンナを北に送り、マリーメイアをこっちに回せ!! 経験値が葱を背負って来たんだ!! どんどん来いやぁぁぁ!!」


 ハンナに「足に火をつけるから、それでトロールを蹴り殺せ」とは流石にまだ言えない。マリーメイアが【光魔法】レベル6になったらハンナの足を焼こう。こんな最高のパワーレベリングの機会を両腕が無いなんて理由で辞退するのは勿体ない!


 時間と共にトロールがどんどん集まる。四体までならガイルズ達で抑えられる。


「数が多い!」


 ガイルズが呻く。


「ならその新しいのは俺がやる!」


 俺は右手に槍、左手に松明を持って新しく近づいたトロールに肉薄する。トロールの大振りを躱し、カウンターで右腕を落とす。痛みを感じないのか、トロールはお構いなしに左足で俺を蹴る。槍の腹で受け止め、数歩後ろに飛ばされる。その隙に斬られた右腕をくっつけようと動くが、俺から目を離したのが運の尽きだ! 投げ槍で頭を吹き飛ばし、硬直したトロールの右肩を焼く。右肩をある程度焼くと、ブクブクと音を立ててトロールの頭が再生する。吹き飛ばした頭の方はジュージューと音を立て臭い肉塊に変わっている。


「腕を再生してみろよ!」


 俺の挑発に構わず殴り掛かろうとするが、もはや動きは見切った。槍を振り回し残った左腕と両足を斬り落として松明で焼く。腕がこんがり焼き上がる頃には膝近くまで再生したのでもう一回両足を斬る。


「松明だ! 松明を持て!!」


 俺の戦いを見ていたガイルズが叫ぶ。農兵たちも短く喝采を上げる。殺せない無敵のモンスターが殺せるモンスターになった瞬間だ。


「ご主人様!」


「マリーメイアか! 油に浸した布を穂先に巻き、火をつけてトロールの心臓を突け!」


 しばらくするとマリーメイアが合流する。俺は達磨にしたトロールを指さして命令を出す。最初はおっかなびっくりして槍を刺していたが、三体目には目が死んで機械的に心臓を突くようになる。


 マリーメイアが来てくれたから地面に転がせていたトロールを【アイテムボックス】に収容できる。特にトロールの睾丸は不妊治療のマジックアイテムの材料として高値で取引されている。リプレイでは再生するたびにトロールの睾丸を切り取る事で大商人になったNPCが登場したが、流石に彼女の所業を真似するのは男として気が引ける。


「マリーメイアちゃん、こいつも殺してくれ!」


「はーい!」


 ガイルズ隷下の奴隷農兵が達磨にしたトロールをマリーメイアに回す。彼らもパワーレベリングの恩恵を受けているから、マリーメイアが【光魔法】レベル6に到達する重要性を理解している。


 かなり効率的にトロールを処理しながらアメリアの状況を問う。


「西の敵は?」


「私が離れた時はまだ接敵していません!」


 こっちは情報待ちか。だが時間差攻撃を仕掛けるには些か機を逸している。腕時計がまだ無い世界だから分刻みに襲撃計画を立てられないが、ある程度同時期に攻めるくらいの調整は出来る。フリーの山賊だとすると戦略目的が読めないからちと面倒だ。


 殺し方を確立したが、終わりが見えない戦いに奴隷農兵の動きが悪くなる。トロールは以前に増して数を増やしている。数体ずつ毒沼を出て襲ってくるので一斉攻撃よりは対応しやすいが、終わりなき波状攻撃が続けば村を守り切れない。


「おかしい。試してみるか! ウィンドカッター!!」


 トロールはある程度等間隔で迫って来ている。ただ毒沼を脱したトロールとそのすぐ後ろのトロールが渋滞しがちだ。なので俺は【風魔法】で陸地と毒沼のトロールの足を魔法で斬り飛ばす。


「ご主人様?」


「どっちが早く復帰するか見ておけ!」


 マリーメイアの問いに短く答えながら違うトロールを槍と松明で行動不能にする。


「沼のがもう復帰しました!!」


「早いが、カラクリは分かったな。ガイルズ! 水際から離れろ!! 前進し過ぎだ!」


「はっ! 第1から順次後退!!」


 撤退戦では邪魔になるマリーメイアをダンの近くまで走らせる。守る対象が減れば俺が引き受けられるトロールの数も増える。


「殿は俺がやる! 安心して退け!」


 俺達はトロール相手に優勢に戦っていたが、その結果前進し過ぎてトロールの得意地形に近づき過ぎた。陸地に上がって肌が乾燥したトロールの方が明らかに与しやすい敵だ。なので戦線を思いっきり下げる。これならアメリアの決着が付くまで持つ。しかし、トロールを嗾けた黒幕は明らかに古い情報を下に動いている。毒沼を浄化する前なら湿地帯は村のすぐ傍まであった。だが積極的な解毒と埋め立てのおかげで複数の中隊が展開できる土の戦場が村と毒沼の間にある。以前の地形なら最適と言えるトロールも現状では数が多いだけの難敵に成り下がっている。


 トロールはバカじゃない。俺たちが水際から退くのを見て何体かが接近速度を上げる。俺が三体引き受ける間にもう二体が横を通り過ぎる。不味い! 後退中の奴隷農兵では対応がワンテンポ遅れる! 片方はガイルズがやるとして、もう片方は何人かやられる!?


「右はあたしが貰ったぁぁぁ!!」


 突如北から乱入して一撃でトロールを両断する左が義足の女。


「メア!?」


「アッシュ、支払いは期待しているから」


 そう笑うメアは右目を失っていた。

応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ