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234 襲撃 中(アメリア視点)

「姫様」


 私に声を掛けるスフィーの顔は不安で押し潰れそうです。スフィーだけではなく、ラディアンド籠城戦を経験していないほぼ全ての村人がそんな様子です。覚悟が足りない臆病者と罵るのは簡単です。しかし毒沼に守られて冬眠を失敗した熊程度が最大の脅威であるこの村に命を賭けて殺しあえと言うのは無理なのでしょう。戦える者が戦っている所を見せて少し変わってくれると期待します。


「大丈夫です」


 未成年を鉄火場に連れて行くのは気が引けますが、この村で二番目に安全なのは私の傍です。認めるのは癪ですが、一番目はアッシュの傍です。


「何とかなるって。アメリア様はガチでコエーから」


 孤児から立ちんぼにまで落ちぶれたマリーメイアは無意識にその時の言葉遣いが偶に出ます。アッシュからはリルの従者として学園に送るので教育を頼まれましたが、数か月でボロが出ない程度に仕上げなくては。代金として共用の薬箱として使えるのですから頑張らないといけません。孤児院時代から一緒に育ち、アッシュにより【光王の加護】を与えられたシーナはもう頼れません。私が頼めば癒してくれますが、ラディーフェル侯爵家の長女がユーグリン王国の認定聖女を頼るのは政治的に不味いのです。それも認定聖女で止まった場合です。アッシュはシーナが世界で唯一蘇生魔法を使える事を軽く考えすぎています。シーナの身柄を巡って国の一つや二つは容易に滅びかねません。


「姫様、作戦の通達終わりました」


 お爺様が派遣したレイナーが準備が整ったと知らせてくれます。必要ない事ですが私が領主として戦える事を村民に見せないといけません。せいぜい特等席で私の【火魔法】を見てください。暗殺者に毒を盛られたのがつくづく悔やまれます。折角位階レベルが上がって手に入ったスキルポイントが【毒耐性】に使われたと聞いた時はアッシュに感謝すべきか全力で頬を打っ叩くべきか本気で迷いました。【毒耐性】が無かった他の人は見るも無残な肉塊に変わり果てたので感謝すべきなのですが、心情的には複雑です。


 村付きの騎士爵が10名弱の兵を率いて30人近くの山賊に突撃出来る位置についています。彼は北西の門の後ろに待機しています。彼の引き連れている農兵は弱卒揃いです。アッシュの奴隷農兵が農兵の領分を越えて重装歩兵になっているのとは大違いです。一月前は中身だけなら互角だったのです。ここまで引き離されたのは領主である私の責任です。装備だけなら金で都合できたのに! それでもアッシュは金とリソースのつぎ込み方が間違っていると声を高に宣言しましょう。


 レイナーと一緒に派遣されてきたもう一人の騎士爵は魔法使い部隊の指揮に回しました。宰相家のダレンとネイサンも一緒です。本来あの二人はアッシュと一緒に動かしたかったのですが、こちらの正面戦力が不足しているので残す様に言い含められました。こちらの正面戦力を全部集めてもアッシュ一人に敵わないのですから困ったものです。アッシュが私を守る事に慣れた私も人のことは言えません。


 私の号令で七人の魔法使いがそれぞれ最大火力の出る魔法を山賊にぶっ放す手筈です。彼らは全員魔法レベルが4~5あり、レベルだけで判断するのならお爺様直属の精鋭魔法隊に配属されても不思議ではない実力者揃いです。実際は読み書きが出来ない奴隷農民なのでどんなにスキルレベルが高くても第一関門の書類審査にすら進みません。ですが引き抜かれる危険が無いのなら村を守る強力な戦力です。彼らの育成に関してはこの一月何度アッシュと怒鳴り合いになったか覚えていません。将来のために【農業】スキルを伸ばしたいアッシュと即戦力となる魔法スキルを伸ばしたい私の主張は完全に平行線でした。そもそも、魔法で食べていけるのなら土いじりなんてするわけ無いでしょう! 開拓後にお爺様の権力を乱用して解放する方針に決まったので最終的に私の主張が通りました。通っていなければ山賊を魔法で巻き込む範囲が足りなかったかもしれません。


 【地魔法】で棚さくを覆う形で造った即席の城壁の上から迫りくる山賊を見下ろします。


「見知った者は居ますか?」


「居ません」


 傍に居る狩人に問います。村の外ともっとも交流がある狩人が知らないのなら流れの山賊で決まりです。万が一隣村の人間だと殺すと後々面倒になります。それでも今回は殺す事が決定事項です。代官であるグイードを殺された直後に弱気な対応を見せては家中で侮られます。


 山賊達は城壁を見て歩みを遅くします。やはり情報のアップデートがされていない捨て駒の可能性が高いです。となると本命は何処から来るでしょう? アッシュはダンジョン方面と思っているみたいですが、流石に非常識すぎます。この山賊に紛れて、または連動する形で村の北側を襲うのがセオリーです。


「てめぇら、俺の事を知らないのか! 30人斬りのゴダッツと言えば俺様の事よ!」


 山賊頭が何か喚いています。私が籠城戦で何万人焼いたのか知らないのかしら? でもスフィーの怯えっぷりから「30人」と言うのは一般的に恐怖を与えるのに良い数字なのかもしれません。


「姫様、あれが30人斬れるのなら私は世界一の剣士です」


 私が首を傾げるのを見てレイナーが説明します。私は無言で頷き、万人殺しの【インフェルノ】を発動します。


「降伏して食い物と女を……うぎゃあああ!!」


「「あちぃぃぃ!!」」


 私の業火は一瞬にして30人の山賊と彼らが隠れている林を一瞬で灰にします。この一月で開拓した面積の凡そ9倍が一瞬で炭化します。何故か皆が静まり返っています。


「み、水! 水で延焼を防げ!!」


 やっとレイナーが口を開き、それに合わせて他の皆が動き出します。


「言ったろ?」


「姫様は凄まじ過ぎます」


 得意げに言うマリーメイアと私を崇拝する様な瞳で見上げるスフィーを軽く往なし、本命に備えます。


「モンスターだ! モンスターが南東から来たぁぁぁ!!」


 え? 嘘でしょう?


 一瞬唖然としますが、指示を出さなくてはいけません。


「姫様、西から武装した一団が迫っています!」


 まさかこっちが本命!? アッシュに援軍を送りたいけど、ここから戦力を抽出する事が出来なくなりました。アッシュにはしばらく耐える様に伝令を送り、私は西から来る勢力に向かいます。

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