同じ釜の飯を喰った仲
ロバートに話をしてから三日後、ギルが封筒を片手にやって来た。
「ロバートから預かってきました」
「ありがとう」
中は・・・多分見てるよね。というかロバートが言ってるかーーでも私からもこれが何か説明した方が良いか。
「エレナ・ドニ嬢の件でロバートに調べてもらったんです」
「ええ聞きました。ケート伯爵家に滞在している令嬢らしいですね」
「ーーらしいって、ギルも会った事あるでしょうに」
白々しい。
「会った事?ないでしょう?」
眉間に皺を寄せて考えてる表情からすると本気で言ってるっぽい。その回転の速い頭に残ってないのか!
「ほら、一番最初に一緒に行ってもらったパーティに居た子よ」
「覚えてません・・・。それでなんでそのドニ男爵令嬢を調べてるんですか」
ギルは頭良いはずなのに、興味のないことは本当に一切残さない。頭が良いからこそ取捨選択が明確なのかな。でもお酒ぶっかけられた相手なら少しは覚えてそうなもんだけど、ギルらしいっちゃらしい。でもスーツの件を話す手間が省けるか。
「エレナ嬢もですけど、彼女の滞在しているケート家のアルクィン・ケートについて調べてもらったの・・・って、何ですかその顔」
急に機嫌悪くなったような?え?なんで。
「アルクィン・ケートというのは男性ですよね?いつの間に出会ったんですか?」
出会う?ーーって、そうか!
「ちっ違う違う!会った事もないし、その人にお付き合いいただくでもないわ!好意とかではなくてーー」
「好きではないんですね。本当ですね」
顔が、顔が近い!ギルの険しい顔が私の顔から1センチくらいのところまで迫って来てる!
圧が凄いから、圧がぁぁ!いやこんなに人と、それも異性と顔が違いの人生で初めてじゃないかしら!?私の心臓、少し落ち着け!
「本当!本当に本当だからっ!!ちょっとーー離れて・・・」
って、どさくさにまぎれて腕も握られてる。
「まぁ、あなたとこのケート伯爵家の次男に接点がない事は確認済みですが」
「・・・じゃあなんでこんな風に尋問するの。心臓に悪いわ」
「ロスの口から直接聞きたかったので。それで何故アルクィン・ケートについて調べているんですか?」
くそっ。なんかしれっとしてるけどだいぶ怖かったんだから。
調べてる理由か。・・・ジュエル・パレスでの需要キャラっぽいから、って言えれば早いんだけどね。いい加減言っちゃうべきなのかなぁ?そうしたら全部辻褄が合うんだろうけど頭可笑しいと思われる可能性の方が高いだろう。
「マリー様から、彼女が『聖女』と呼ばれていることを聞きまして、聖女とは何か知りたかったのと、その聖女と一緒にいたアルクィン・ケートの顔に見覚えがあったのが引っかかっていたんです。シャポー家は主教とは全くと言い切れるほど接点がないんですが、アルクィンの顔は見た記憶があったので、父の顧客か確認もしたかったんです。ただ顧客台帳にはケート家自体が載っていませんでした」
「それで貴族子弟と接点の多いロバートに調べてもらったと」
「ええ。年齢的に考えても取引相手になるはずはないので、私が何処かに連れて行ってもらった時に会った可能性くらいでしょうけど。ただこれまで生きていて『聖女』なんて聞いた事もなかったので余計に気になってしまいまして」
「聖女なんて、ロードバーグ史上では出た事がないです。フォンテールには戦乙女の伝説がありますけど、ロードバーグでは病を癒す魔術師がいたという記録くらいですね」
だ・よ・ね〜。『ジュエル・パレス』って魔法の概念もないしなぁ。確かエレナルートでも称号としての『聖女』だったもんなぁ。あー、でもエレナで操作すると、主教関係での攻略方法があるから外交がし易かったり、祈りで統治がし易かったりってのはあった。政治力に近いと思ってたけど。
っと、ここで悶々と考えててもしかたない。せっかくロバートが調べてくれたんだからそれを読もう。けっこう分厚いレポートだわ。
「「・・・」」
「ロス、このエレナ嬢は本当にこんな女性なんでしょうか」
私の手元を一緒に覗き込んでいたギルが声を出す。
私も絶句だ。でもこれを読む限りエレナ嬢もアルクィン・ケートも巻き込まれた被害者な気がする。でもそれよりも気になるのが
「ねぇ、ギル、それよりこっちが気になるんだけど」
「どこですか」
私はロバートのレポートのある一点を指差し、ギルの視線を誘導する。そしてその文章を見たギルと顔を見合わせた。
「マシューとレディ・ジェーンが旧知の仲というのは何となく知っていましたが」
「アルクィン・ケートも同僚だったのね」
とすると、ジェーン先生が小包を持って行った先はアルクィンの元だったのだろう。
知り合いならば状況を説明して渡す事も容易い。
「マシューに聞いてみますかね」
「そうしましょう」
顔を見合わせたギルと頷き合った。




