2人の知恵の方が1人より良い
エレナ嬢が置いて行った小包をジェーン先生がどこかに持って行った。どこに持って行ったのかは知らない。質問しようとしたところ、ジェーン先生はこう言った。
「お嬢様、好奇心は知識を深めるには重要だ。でもね、身分や立場に寄って知るべき情報を知ってはいけない情報があることを、そろそろ学ばなきゃならない。全知は『神』だけに許された特権だ」
だからこの件も私は知らない。そしてギルにも言ってない。
私が心配すべきなのは、婚活ーーこと、社交デビューに関してなのだろう。伯母さまは相変わらず様々なお茶会やパーティーの招待状を持って来くるので、5回に1回くらいの頻度で出席している。
そしてそれにはギルも必ず参加している。
「気になったんだけどね」
バイオリンを置きながらロバートが口を開いた。
「はい」
「ギルが居るとさ、相手できないんじゃない?」
「ですかね?でもパーティーでは別行動してますよ。ご兄弟がいらっしゃる方もそうでしょうし」
「うーん?ローザは相変わらず抜けてるなぁ」
ロバートがそう言って苦笑いしているのが分からない。抜けてる?なにが??
他の人も家族や親戚にエスコートしてもらって、ダンス等で他の人に誘われているから別に普通じゃない?
「なにかマナー違反してるかしら」
「社交としてはマナー違反じゃないだろうけど、ギルがローザに寄ってくる奴らを軒並み潰してるよね」
「ああ、それは別にいいです。そっちの方が好都合なんで」
形だけの活動だから、変に親密な相手が出来ても困るし。
それに『ジュエル・パレス』の攻略キャラであるアルバートやロバート、名前のあるギル達(ちなみにシャポー家の面々も固有キャラのようだ)に比べてしまうと他の人は印象に残る顔をしていないのはなんで。
ゲームのモブ顔というか、色が違うだけのような人とかさぁ!令嬢もだよ!
運営の手抜きすぎ!!
なにより怖いのが、誰かと恋愛を始めたらゲームが動き出してしまいそうってこと。この間、以前とは別のパーティでエレナ嬢がいたけど、彼女のエスコートをしていた人、あれは、固有キャラよね。攻略キャラではなかったはずだけど、モブの顔でもない造形。
その人と何となく目が合った瞬間、なんか変な感じがしたのだ。今まで、ロザムンドになってから初めて感じる『始まった』という感触。上手く伝えられないからロバートに相談したいけどなんて言えば良いんだろう。
多分、あの人はなにか関係がある。
エレナの関係者なら、ゲーム内でも良く出てくるキャラだよね・・・。あーー!私エレナルートほとんど作業としてしかやってないんだよ。アイテム取得用としてしかやってないからストーリーとか覚えてなーい。
「ロバートって、国内の貴族と交流多いよね」
「急に何?ーーまぁ多いけど」
「アルバートやギルより多いよね」
「んーー、そうかもね。アルバートは王になるからあまり貴族と深い付き合いしない方が良いから一定の距離があるしね。仲が良いのも居るけど。ギルはーーうん、ギルだし」
「というよりも、趣味で色々調べてるでしょ」
にっと意地悪げに笑うと、ロバートは一瞬、鳩が豆鉄砲を食らわされたような表情を見せてから、企んだように目を細めた。
「馬鹿正直な令嬢のふりして、時々そんな顔をして見せるから、僕は君から目が離せないんだ」
「馬鹿正直なフリは特にした覚えはないけど」
「何で知ってるの?」
「んーー、秘密」
今度は満面の笑みを見せると、とうとうロバートは吹き出してしまった。おお、吹き出して笑うロバート!レアスチルじゃん!!
「ふっふふ。んっ、ローザ、何で知ってるかは今度聞く事にするとして、それで?僕に何を聞きたいの?」
「エレナ・ドニ嬢と一緒に居た人が知りたいの」
「ドニ?ドニ男爵家の?あの家は一人娘しか居ないはずだよ。王都に来る事も滅多にないーーああでも、最近一人娘が王都ではしゃいでるらしいね」
となると、あれは私と同じように友人と言う体のエスコート担当か。それにしては、上下関係が出来てるような感じだったな。お目付役ってとこかな。
「一人娘を王都へ寄越した理由って分かるかしら」
「あの令嬢の話なら、興味ある人間が多いからすぐ分かると思うよ。ーーでも、ローザ」
「なぁに?」
「これは高くつくよ?」
形勢逆転、この笑顔のロバートはヤバい。
「・・・私が払える範囲でお願いします」
「ふふっ。僕はローザからお金なんてもらいたくないね」




