一堂に会する
「それで、そのエレナ・ドニがどうしたというの?」
マリーは気を取り直したようにいつもの不敵な笑みを浮かべていた。
「どうしたという訳でも・・・」
言葉に詰まっていると、メアリが私の横にやってきて小さく耳打ちをした。
「お客様がいらっしゃっております」
すると私が答えるよりも先にマリーが答えた。
「メアリ、私に気を遣って小声で話すのは良くないわね。私にも要件を聞こえるようにもう一度おっしゃい」
「失礼しました。お嬢様にお客様がいらっしゃっております。今はマリー様とお約束をしておりますので、お帰りいただくように伝えているのですが、ご納得いただけないのです」
「私にお客様?」
「妙ねぇ?アルバート達なら顔パスでしょうし、メイスンや他の商会関係の人なら約束もせずやって来たりはしないでしょうし」
マリーも心当たりはないというように不思議がっている。
自慢ではないが私の交友関係は狭い。それに唐突にやってくるメンバーは居るが、基本は予告をしてくれている。パーティであったグレイ嬢達がここまでやってくるとは思えないし、最後に声をかけられたなんとかとか言う伯爵令息については別の子を見つけたようであの後一切の連絡もなかった。
「今日はマリー以外と約束はないと思うけど」
「はい。約束をしていない上、お嬢様は多忙であるとアンナさんが伝えているのですが・・・なんでも神様がどうとかとおっしゃっておりまして・・・」
「神様?ーーなんておっしゃる方なの?」
「エレナ・ドニ男爵令嬢とのことです」
タイムリーな名前に私とマリーは顔を見合わせた。
これからの事を想像してげんなりした顔をする私とは対照的に、マリーは面白そうにワクワクした表情をしていた。
「最近、大人しくしていたから良い気分転換になりそうね」
「人ごとだと思って・・・。マリー様も巻き込みますからね」
「よくってよ。全力で潰して差し上げますわ」
物騒なマリーによる宣戦布告により、エレナ嬢をここに連れて来てもらう事にした。
◆◆◆◆◆◆◆
メアリに案内されてやって来たエレナ嬢は、マリーの姿を見ても特別驚く様子もなく私にこう言い始めた。
「こんなにお待たせさせられるとは、少々驚きました。侯爵家ともなりますと、男爵家とは簡単にはお会いになって下さらないって思ったんですけど」
笑顔で突き立てられた言葉に、一瞬息がつまった。
もしかしなくとも敵意を向けられている。
「いえ、そんなつもりでは「私、耳が可笑しくなったかしら?ロザムンド、急に雑音が聞こえますわ」
「雑音!?」
マリーの割って入った言葉にエレナが顔を顰めた。
これは思ったよりも早く戦が開戦してしまう。なんとか反らさないと・・・。
「大変失礼ですが、私達、あなたのお名前も存じ上げないのです。特に、マリー王女殿下にお話をされるには許可を頂かないとなりません」
「はぁ〜」
意を決した私の言葉にエレナは大きなため息をついた。
「身分身分、そんなものよりも人柄や人間性、何が出来るかと言った物の方が大事でしょうに。それに私はあなたに話しかけているだけよ?」
「そういったことではないのですが・・・。今日はもう結構です。本題に入ってください」
「わざと意地悪を言ったの?酷いーー早速本題なんだけど、先日のパーティであなたと一緒にいらっしゃった幼なじみの方にこれを渡して欲しいの」
そう言ってテーブルに包みを置いた。
「これはなんでしょう?」
「燕尾服。この間、私がお酒をかけてしまってダメにしてしまったからそのお詫びなの。ご連絡先を聞きたかったのだけど聞く前に帰ってしまってたし、あなたのご友人で海外の方という情報しか分からなかったから」
「はぁ・・・。でも向こうは気にしてないと思いますけど」
「そう?でも私の気が済まないので」
そう言うと、エレナはゲームのように邪気のない笑みを見せた。




