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ポジティブさを圧に感じる人もいる

『友達が増えるかも!』

そんな子供みたいな事を言いながら女性達の輪へと近づくロザムンドに、ギルフォードは少し距離をとりつつ付き添っていた。本来の目的を忘れて女の子と年相応にはなしているロザムンドは少々緊張して硬い表情をしていたが、それでも楽しそうに見えていた。


『グーピュル夫人もいい加減ロスの性格を踏まえて準備をすべきですよね。それにロスもロスで、この行動の目的からして、私がエスコートで一緒に来たらダメだとわかっていてもそれを断れない押しの弱さも心配になります』

そんなことを思いつつ、ギルフォードは焦ったロザムンドが妙な輩に騙されてシャポー家に入り込まれる事も疑惧し、極力ロザムンドとシャポー家に介入して行く事を思い定めていた。


とはいえ、ギルフォードにはもう一つ憂慮していることがあった。

この会に参加するに至った経緯でロザムンドとグーピュル夫人がしていた会話、『王族と縁続きになりたくない』といった言葉である。王族になる事を望まない人だっているのは勿論承知しているが、言葉にされると突き刺さるような気分だ。言われてみれば子供の頃から彼女は王宮に来ることは好まなかったし、自分や兄達と仲良くしていることを公にしたがらなかった。

家の事等を鑑みているのかもしれないが、『結婚したくない』ではなく『縁続きになりたくない』という言い回しであることも謎を深める要因であった。結婚したくない、そう明言されたのであれば自分も動きようがあるが、このままではよく分からないのである。




『などと変な事を考えているうちに、また身の程知らず(おかしなヤツ)がロスに話しかけようとしてますね。遠ざけないと』

「きゃあっ!!」

ギルフォードがロザムンドへ近づこうとしたところ、左側から女性の悲鳴が聞こえ、自分の服に何かがかかった。

「も、申し訳ございません!!」

ぶつかった相手が持っていたのであろう酒が左腕にかかったようだった。

恐縮したように、謝り続ける方を見れば栗色の髪をした女性がいた。彼女の持っていた酒がかかったらしい。

服を濡らされた怒りではなくただ面倒だ、というのがギルフォードの本心であった。服など乾かせば良いのだから、何でもないと言えば立ち去ってくれるだろうか。


「いえ、こちらこそ失礼致しました。こちらが急に動いたので・・・あなたにはかかっていないようですね。良かったです」

そう言って早々に話を終わらせ、ロザムンドの方へ向かおうとしたところ、女性に捕まってしまった。

「大変失礼致しました!あの、良ければこちらで拭いて下さい」

「いえ大丈夫ですよ。(ーーなので手を離してください)」

「そうは参りません。これでは私の気が済みませんもの。伯爵家の方にこんな粗相をしてしまってそのままお別れしたなどと家の者に知れたら、ドニ家の恥になりますわ!」

「はぁ。(恥と思うならさっさと離して下されば良いと思いますが)」

「ただのハンカチとお思いでしょうがこちらのハンカチは凄いんですよ」

ギルフォードの面倒だという予感は当たってしまった。

女性はそう言うとしばらくの間、離れてくれずに濡れた袖口を拭いたり、他にもギルフォードに新しいグラスを渡したりと甲斐甲斐しく世話をしたと思えば話をし続けた。





◆◆◆◆


「ちょっと、ギル急にどうしちゃったの」

「急でもないですよ。それにこの会には良い人はいないようだったので、これ以上いるのも時間の無駄ですよ」

「・・・そうなのかしら」

「先ほどの伯爵子息は2回婚約破棄をされている男です。それも彼原因の理由でですよ」

「その理由とは?」

「ギャンブル狂いですね」

「はぁー、よりにもよって。ありえない!」

「他に来ていた方も、それほど領地や商才に恵まれていない貴族家の次男や三男が多いですね。自ら文官や武官になっているようであればそもそもこんなところにはこないでしょうし」

こんな風に矢継ぎ早に人への批判を口にするギルは珍しい。

何かよほど嫌な事でもあったのだろうか。

「そんな事言って、ギルだって綺麗な人とお話してたじゃない」

「綺麗?ロスは会場に入って早々、別行動したじゃないですか」

「私の事ではなくて!ーーほら、あの栗色の髪の子!・・・名前はなんて言うの?」

私の質問にギルは首を傾げた。

まさか直前まで話をしていた人間を忘れるってことは、無いよね。ーーいやギルだからありえなくはないかな。

「ほ、ほら、私のところへ来る直前まで一緒に話をしていた。薄い桃色のドレスに栗色でボブの子よ」

「名前知りません。そもそも綺麗でした?」

「可愛い系?かな」

「目は大きいと思いましたがーー私は圧のある押しの強い女性は苦手です」

押しが強いって、エレナぐいぐい来ちゃう系なのか。

エレナルートってどんなのがあったっけ・・・。あーたしかに、手料理作って()()()()、勝利を祈って聖なる刺繍をマントにして()()()()、祝福のキスをして()()()()だったな。大司教お墨付きの祝福がなんちゃらって、アルバートルートでだったっけか。

私こと佳苗は元々の性格がネガティブってこともあって、エレナの自己肯定感が高い前向き感がどーしてもだめだった。確かに、ギルもあの手のポジティブさは苦手そうだ。マリーの高圧的さとはまた違うし。

「そっか」


そうあっさりと返しつつ、ギルとエレナが仲良くならなかったことにホッとした。

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