全員集合
ムッとしたのを笑われて、頬を膨らませるとそれを指先で潰された。
なんだこの感じ。
今まで感じた事がない雰囲気・・・とりあえず、叫んどこうか。
息を吸おうとしたところでギルが話をふってくれた。
「それで、水曜日だから遊ぶんですか?」
「遊んでいる暇はないですよ。今更ですが、手伝ってください」
ギルを追い抜いて、今度は私が手を引いて行く形となった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「あら、皆さんをお連れしてしまったんですか」
家の前で私を待っていたメアリは深々とおじぎをした。
「マリーの支度を待っていたらこんな時間になったよ」
「心外ですわ、ロバート。アルバートだって中々起きてこなかったじゃないの」
「皆が早起きすぎるんだよ」
などと言いながら、今まで通りに我が家へと入って行く。
アルバートが朝遅いというのは意外だ。むしろロバートの方が低血圧っぽいのに。
一番後ろに続きつつ、設定を思い返してみた。
あー、でも確かにアルバートルートは朝に起きるイベントなかったな。
「それで、ロザムンド?マリー含め皆に言う事は?」
先ほどまで和やかな雰囲気だったマリーが急変し、厳しい表情を見せた。
これは怒っている。でもここに来てくれているし、ここで縁切りと言うわけではないのか、それとも疎遠となるのか・・・。
もしここで疎遠になるとすると、ゲームの中での関係性にも近くなるーー気がする。
ゲーム抜きにしてマリーがいなくなるとーーー
寂しい。
あれ?嘘?いや嘘じゃない。
マリーだけじゃなくて皆があってくれなくなると、絶対寂しい。
この屋敷の中で1人でぽつんと生きている自分を想像したら何も出来ないと思う。
家の没落もどうでも良いし、いっそ家を乗っ取られても気にならないかもしれない。ただこの古い家の中で1人でいる事を想像して、それから今までのワイワイ騒いでいた思い出、ギルが初めて家に来た事とか私の誕生日だとか、試食会だとかの光景が自然と思い返された。
すると、目の前がみるみる波打って行った。
ボッチOLだったはずなのに。
1人が当然だったはずなのに。
「ごめんなさいっ……だってウチの事だから、皆さんに迷惑かけたくなくて」
つぅっと、涙が頬を流れていった。
マリーは私の頭をなでながら、諭すように言った。
「迷惑なんて思わないわよ。むしろなんで言ってくれないのって、思ってたんだから」
よしよしとマリーが私の頭を撫でていると、背中をポンポンと叩く人がいた。
アルベールだ。
「頑張ったロザムンドにはご褒美をあげよう」
爽やかな笑顔で紙の束を私にくれた。
一番上の紙を見れば、人の名前が書いてある。これって・・・。
と次のページを見ようとすると、今度は誰かに前髪を上げられた。顔を上げようとすると、おでこにキスをされた。
「ちょっ!ロバート!?」
私が驚くより先にマリーが抗議の声を上げている中で、ギルにロバートは引っ張られながら言った。
「じゃ、僕からは意地っ張りなローザに良い報告をあげる。君のやった事も、グーピュル商会も法的に何の問題もない。かけても良いよ。むしろモーリー商会の方が法律違反をしているから、逆につぶせるくらいさ」
ははっ、とギルに追いやられながら楽しげに笑っていた。
ロバートを引き離したギルは、私のおでこを何度も自分の袖口で拭いていた。
おでこが擦れていたい。皮がむける気がする。
「ギル、痛い」
「むしろ消毒薬、リリーさんこの家にアルコールはありますか?」
いやいや、こんな擦れたおでこにアルコールつけたらめっちゃ滲みる。
「そうね、アルコールが無理ならこれで拭いて」
マリーはそう言って私にハンカチをくれた。
とりあえずそれで拭いておいた。
「マリーからは、ああスチュワードに渡した方が良いわね」
そう言うとスチュワードに分厚い本を渡した。受け取ったスチュワードは本を二度見した。
「これは……マイフェイルの一等地じゃないですか!?」
「ウチの国でロードバーグに店を出そうと思ってずっと昔に場所を買ったんですって。でも使ってないで税金をロードバーグに払うだけだってお姉様がぼやいていたから、ちょうどいいから使って頂戴」
「マリー、さすがにこれはもらえな・・・」
店舗はさすがにタダで貰うには気が引けるので、そう言いかけると、口を塞がれた。
「いいから、貰っておきなさい。……っていってもあなたの事だから気にするでしょうから、これはあなたに貸すってことで良いわ。スチュワード、後で毎月の費用を決めましょう」
「はい」
スチュワードは恐縮しながらおじぎをしていた。
一通り終わった後で、引きはがされたロバートが声を出した。
「あれ、ギルは?この流れでギルのも言っちゃいなよ」
アルバートも続く。
「そうだよ。僕らのも元々ギルが考えたような物なんだし」
「そうよ。マリーに指示を出すなんて、今回の件以外じゃ許さないわ。でも今回の事は全面的にあなたに賛成だから、さっさと始めなさいな」
口々にそう言われた、ギルが小さく舌打ちをするのが聞こえた。
少し会わないうちにギルがやさぐれた。




