はったり?
私は名前を呼ばれると、部屋の中へ連れて行かれた。この部屋はなんの部屋かって?私が聞きたい。
おじ様とおば様に会いに来たはずなのになー?と嫌味っぽく言えばいいのかしら。
と、思っていると、モーリーが現れた。
「まさか本当に来るとは」
「まさか?唯一の血の繋がりがある人が身に覚えのないことをされていたら駆けつけるに決まっているでしょう」
驚いている青年にピシャリとそう言ってやれば、モーリーは間抜けとしか見えない様子で狼狽ていた。
「ず、ずいぶん見た目と性格が違うんだな」
「弱そうと思った?病弱そうと?か弱い少女なら何もできないと思っていたわけ。なかなかに救えないわね」
「大人に対しての言葉遣いを習わなかったのか」
「そちらこそ、曲がりなりにも侯爵令嬢への口の聞き方としてはいかがなものかしら」
売り言葉に買い言葉、一応社会人をやっていたんです。この程度の青年相手じゃ私を威圧できないよ。
怒りに任せて、このまま煽っていくスタイルで押していこうとも思ったけど…
「…失礼。こんなことを話しにきたのではございません。グーピュル夫妻はどちらですか」
「急になんなんだ…あの2人は隣の部屋だ」
「そうでしたの。では、連れて帰りますね」
目的だったおじ様おば様の居場所を聞くと、つかつかとそちらの方は向かっていく。モーリーは狐に摘まれたように時が止まっていたが、我に帰ると私の前に立ち塞がった。
「モーリーさん、こんなことは言いたくないですがここでグーピュル夫妻を閉じ込めておけばおくほど、今後あなたが困ることになるんではないでしょうか」
「困ること?子供のくせにこんなところに来てる君の方が困ることになる」
「だって、グーピュル商会が偽物を売ったなんてどこに証拠があるのでしょう。それに独占販売とはいえ、ブランドなんてそういうものですよね。むしろ、営業妨害をしたり風評被害で名誉毀損をしてきてるモーリーおば様の方がずっと問題だわ。グーピュルの証拠を見つけるのは大変ですけど、モーリーの証拠は探さなくてもそのへんにありますよ」
大変というか無駄骨だろう。だってないんだし。
ダメ押しのつもりで続けた。
「もし証拠があるのなら、それこそこんな場所に閉じ込めるのではなく裁判をさっさと起こした方が良いですよ。グーピュルのお得意様方が買い物できなくて困った挙句に問題が無いことに気がつくかもしれません。そうなったら、ここに無理やりグーピュル夫妻を連れてきたあなたはどうなるでしょうね?」
薄ら笑いでそう言えば、モーリーの顔色は私よりも悪くなっていた。ーーそれくらい考えておけよ、と言ってやりたくなった。
「今ならまだ勘違いということにして差し上げますわ」
最後の言葉に思うところがあったのか、モーリーは顔を背けて私に道を譲った。
「ありがとうございます」
私は出来る限りの令嬢エフェクトを使ってその場を後にした。
「おば様、おじ様!」
苛立っていた2人に駆け寄ると、2人は驚きながら立ち上がった。
「ロザムンド!?なんでこんなところに」
「いけませんよこんな場所にきては」
「詳しいことは後です。とりあえず帰りましょう」
嗜めるようなことを言う2人の手を引いて、ベンとトムの元へ戻って行くと、彼らは何故が人垣の中に居た。
「あっ!お嬢様おかえり〜」
「何事もなくて良かったよ」
囲まれていた2人は人垣をかき分けて私の方に戻ってきた。
「あなた達の方が何事もあったと思うけど…」
「あ、これ?暇だったからさ〜、ちょうど持ってたコレ上げた訳」
そう言ったトムが出したのはポテトチップである。いつの間に持ってきたの。
「俺だけじゃなくてベンもだし」
「いや、俺は、この椅子がガタガタしてるのが気になってな…」
とか話してる2人を見ていたおば様は脱力したように
「あなたから、本当何しにきたの」
まあまあ、いいじゃないの。
笑いそうになるのを堪えながら私達は一旦家に帰ることにした。
「さあ、シャポー家に帰りましょう!」
道すがらおじさまが私に質問してきた。
「にしてもロザムンド様、どうやってあのモーリーから私達の事を連れ出せたんですか」
「うーん…何というか。身分を使ってプレッシャーをかけてから不安を煽って黙らせました」
「黙らせーーって、説得した訳ではないんですか」
「説得はできないと思ったの。だから一旦体制を立て直すために、あそこから連れ出す必要があると思ったんです」
「つまり、なんにも解決していないってわけね」
おば様の言葉に頷いた。
「これからですよ。おじ様にもおば様にもやっていただきたいことが沢山あります。あと、お二人はしばらくシャポー家に隠れていて下さいね。今回のことは、多分人質にするために連れて行っただけなんですから」




