取り調べ2
バンッ!
大きな音を立てて扉が開いたので、一帯にいた職員たちは一斉にそちらに視線を集めた。その先にいるのはトムとベン、身なりの良いどこか良い家の使用人であることは誰がみても分かった。
「シャポー・ロザムンド様がお越しだ」
「ここの最高責任者は?」
2人が間をおかずにそう言えば、辺りは騒然とした。
あまり好ましくはないけど、今はこれしかないのよ。ロザムンドは誰にでもなく言い訳をしながら心の中で思う。
ベンとトムの間にちょこんと座っている彼女は、傍目からは合成写真、または誘拐されたお嬢さんであった。蒼ざめた肌は、今の状況のせいかもって生まれたものなのか本人にもわからない。
けれども彼女の内心は前向きな気持ちしかなかった。
「シャポー侯爵令嬢」
おずおずとした声が聞こえたのでそちらを向けば、初老の男が入り口にいた。普段ならここで挨拶をするけども、今日はそうはいかない。
私がベンをチラリと見れば、視線が合った彼は頷いて、すぐにその方向へ向かっていった。
「お嬢様、何かいい案があるんすか?」
2人になるとすぐにトムはそう言った。
「ないわね」
正直にそう答えると、呆れたようにトムが笑う。まぁ、そうよね。笑うしかないわね。
私がトムでももうそうするしかないわ。
ただ、今回の事で私は怒りの頂点を迎えた。そして理性的な行動をするのも無駄と思った。こと、モーリー夫人に対しては。これで、皆が離れても私はこの怒りをぶつけることでしか解消できないとも分かった。ただ、安心しなさい、家人には家屋敷領地そのほか諸々売ろうとも迷惑はかけない。
「ごめんなさいね、トム。こんなことに巻き込んでしまって…。グーピュル商会が元通りになったら、それなりの役職で、雇ってもらえるようにします。……もしグーピュルがダメでもロートバーグの王室の仕事かフォンテールの王室の仕事なり、何をしてでも用意するから」
迷惑かけてごめんなさい。
その最後の一言が、どうしてか言えなかった。
私はそれを誤魔化すため、トムの方を向いて、口角を上げたーーつもりだった。
「別に気にしないで下さい。そんなの考えなくっていいっす。お嬢様はご自分のことだけ考えて下さい」
「へぇっ?!」
予想外の言葉に気の抜けた声が出た。
詰られるつもり満々で言ったのに、こちらを気遣う言葉を言われて驚いた。
「何言ってるのよ。私のせいであなた達みんなこんなことになってるんだし、下手したら仕事がなくなるのよ」
「それでも、シャポーの家にいられたのは俺たちにとっちゃ幸運なことだったんだ。ーなぁトム?」
戻ってきたベン声が聞こえた。
「だよねー。普通なら雇ってもらえねぇし、こんな楽しくねぇだろうしなー」
「多分、リリーもそうだ。だからお嬢様、俺たちに気兼ねしているんだったらそんな必要は無いんだ」
レアなベンの笑顔を見た。
珍しいもの見せてくれて、しかもこんなに嬉しくなること言ってくれて……多分前のOL時代にこんなこと言われたことはなかった。
もうここで幽閉されても良いや。
「ベン、トム、ごめんね。あと、もしこの後何かあってスチュワードやアンナ、リリーに合ったら私が謝っていたって伝えておいて。ーーそれと…」
「シャポー侯爵令嬢、こちらへ」
話の途中で名前を呼ばれたので、言われるまま立ち上がった。
これから何をしなきゃいけないのか。正直全く分からないし、ここからは今までの経験なんて役に立たないのはわかっている。
私は立ち上がって2、3歩すすむと足を止めた。
それから、この世界に来てからのことを思い出す。
あー、大好きだったあの子と、そう言えば変な感じになって別れたままだった。いい大人だと思ってたのに喧嘩してたんだ。ギル、あの子のおかげで今の世の中を、楽しく過ごせたのかな。
ギルバートにも
「ごめんねって、言っておいて」
そう言って呼ばれる方へ向かった。




