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帰って来たぜ、我が家に

テーブルの上にずらりと並べられたお菓子を前に、リリーが誇らしげに仁王立ちしていた。

「お嬢様〜どうです?これならご希望通りじゃないでしょうか〜」

透明な皮に包まれた赤、緑、黄色の中身が涼しさを伝えてくるそれは、葛饅頭である。

餡子という概念がなかったこの世界で、私が庭で見つけた豆を煮てから、蜂蜜やジャムを入れてみるようにお願いした。黄色はニッキ、赤は芍薬、緑はヨモギであと紫色はハイビスカス。よくまぁハイビスカスまである物だ、と感心したが、とりあえず使ってみる事にした。

芍薬に関してはいかにも薬なので、メイスンさんにかなり知識をお借りした。

「凄い!大分お菓子っぽくなったじゃないの!」

「このぷるんぷるんした感じを出すのが難しいんですよぉ〜。ちょっと時間を延ばすと白くなっちゃいますし〜」

「無理をお願いしちゃってごめんね」

「いえいえ〜。さぁどうぞ召し上がって下さい〜!これは自信作ですぅ」

そう言ってリリーがナイフを入れる様子から、ゼリーよりも柔らかいねっとりとした感触が分かる。これは今までで一番イメージ通りだ。

「ではさっそく頂きます」

ぱちんと手を叩いて一口大に切って口に入れる。

おおー!一番始めに食べたときは固いし水分が少ないし、おまけにハーブの苦みしかなかった物が、しっかりとお菓子っぽくなっている。砂糖ではなく蜂蜜を入れた事で主張しない甘さなのも、他のお菓子とは違う、体に良さそうな物となっている。

「まさにこれ!リリー凄いわ」

私が言った台詞にリリーは嬉しそうにはにかんでいた。

「あ、あとこれも作ってみました〜」

照れた顔を背けてリリーが持って来たのはポットとティーカップ。カップの中を見ると花びらが入っていた。

「花びら?」

「メイスンさんに聞いたんです〜。花びらをこうやって乾燥させて、お湯を注いだのも良いって」

「へぇ〜」

リリーがお湯を注いでいるのを眺めていると、横からニュッとマリーが顔を出した。

「あら綺麗。リリー、私にもこちらを頂戴」

「マ・マ・マリー様!?」

「はぁい。勝手に上がらせてもらったわよ。ああ、一応アンナには挨拶したから」

実に自然に入って来ているマリーにリリーはお辞儀をすると椅子を用意した。

「いやいやいや!!王女様が台所になんて来てはいけませんよ!!」

当然訪問したマリーに驚愕しながらも、急いで連れ出そうとしたがマリーはおかまいなしに木で出来た素朴な椅子に腰掛けてしまう。

「んーでも王女だけではなくてよ」

「んんん?!」

マリーの言葉に更に横を見ると、ギルも来ていた。いやだから、ね、高貴な方々の来る場所じゃないって。

本当もう、怖いから!台所で怪我でもしたら危ないでしょう!!

「ギルも!!マリー様も!ここには入らないで下さいっていつもお願いしているじゃないですかーー!!」

私が叫ぶのにも慣れてしまった皆は聞く耳も持たない。

リリーは当然のように2人用にカップを並べて、葛饅頭を増やしていた。

いやいやいや、リリーよ、ダメだよ。

今回のは完全に試作品だから、何があるか分からないから食べないで欲しい。

「ですが、最近のロスはずっとここにいるか庭にいるので、こちらから行かないと会えないじゃないですか」

「ねぇ?王族を待たせる方が無礼よねぇ」

「ぶれい・・・。いいえ、お約束してないのにいらっしゃるのがいけないと思います」

弱々しくも、勇気を出して反論しなきゃ向こうのペースにハマってしまう。

とはいえ、台所に入るのもウチの庭にいるのも、気にしているのは私だけ。以前、王妃様やカトリーヌ様に『ウチで何か問題があったら困るから止めさせて下さい』と手紙を出したが、返事は『好きにさせてやってください』『男の子だから少しくらい大丈夫』としか返事はなかった。

メイスンさんからの漢方の効能などの説明を付け加えても『もし何かあったとしてもそれは自身の危険を考えられない本人が悪いのでシャポー家に非はない』と言われてしまいぐうの音もだせない。

「なら『お約束』しとけばよろしいの?『ロザムンド、フォンテール王家の名の下にそなたは毎日マリーについておれ』って言ってヨロしい??」

「でしたら私も。ロードバーグから臣民のシャポー家に命を下しましょうか?」

「ううう」

付き合いが長くなるにつれ、あしらえなくなった子ども達に二の句が継げなくなってしまう。



いや、本当。この数年間で君たちは大分大きくなった。

その間に私はギルやその兄弟のアルバートやロバートと幼なじみのようになったり、隣国フォンテール王女のマリーと出会って頻繁に遊ぶようになったり、果てはマリーはアルバートと婚約をしたりとあった。

ルート回避と思ってあまり接触をしたくないのに、どんどん親密になってしまっていて今ではこんな冗談を言える間柄だ。

良い事なのか悪い事なのかちっとも分からない。

私がそうやって考え込んでいると、メアリがやって来た。

「ああ、やっぱりこちらにいらっしゃった」

「どうしたの?」

「お嬢様、アルバート様とロバート様がいらっしゃいましたよ」

「勢揃いか!!」

メアリへ突っ込みを入れると、眉を顰められた。

い、いかんいかん。令嬢らしくしなきゃ。

「・・・今日はお約束をしていなかったハズなので、お断りーー」

と言いかけると、メアリの後ろからひょいとロバートが顔を出した。

「ひどくない?せっかくこの間言ってた東の楽器を持って来てあげたのに」

「僕は借りていた本を返しに来たのと『婚約者』がここに居るから一緒にいる為に」

「そうね、アルバートは私が帰るまで一緒にいなきゃよね」

いや2人とも帰ってくれ。

ここで会うな。王宮の庭とかで仲良くしてくれ。

「で?ローザは王族4人追い返すの?」

首を傾げながらロバートはにっこりと笑った。

「あーっもう!!でしたら皆様お庭で試食に付き合って下さい!ただどうなっても知りませんからね!!リリー、皆様の分の食器の準備とこの間作ったカステラも持って来て。ーーこの際家具の方も見ていただきましょう。メアリ、ベンにこの間作った家具をお庭に用意してって伝えて」

諦めた私はそう言って家人達に指示をして、皆様をお庭へと連れて行くのだった。

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